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映画セットのような北朝鮮 それでも素顔が垣間見えた

世界報道写真展から――その瞬間、私は
photo: Roger Turesson/Dagens Nyheter

北朝鮮・平壌の金日成スタジアム。2017年4月、「平壌国際マラソン」が始まる数時間も前から、バスが次々に到着していた。団体ばかりで、子どもはいない。そこかしこに監視員が立つなか、来場者たちは見たこともないような整然さで、観客席を埋めていった。

ランナーたちが会場に入ると大歓声が上がったが、スタートラインにつくとすぐに静まりかえった。号砲が鳴る直前、雲に隠れていた太陽が現れ、競技場の上空から色とりどりの服を着た5万人の観客を照らした。スウェーデン人写真家のロジャー・トレッソン(62)は、会場に緊張感がみなぎったその瞬間を切り取った。

観客たちに話しかけることはできず、7日間の滞在中は常に当局の監視員2人が付き添い、予定外の行動は一切許されなかった。それでも、スケート公園を訪ねた時、遊びに来ていた若者や家族連れと自由に話すことができた。

彼らは質問に気さくに答えるだけでなく、興味津々に質問をぶつけてきた。「あなたの国で若者はどんな映画を見ているの?」「どんな服を着ているの?」

市井の人たちはみな親切で、とりわけ若者たちは外の世界に強い関心を持っていた。

トレッソンは、初めての北朝鮮での体験を「映画のセットの中を歩いているような変な気分でした」と振り返る。そして、「セット」から垣間見えた一般の人たちの素顔が忘れられないでいる。今度は、彼らともっと触れ合い、その日常生活を写真に収めたい。そう願い続けている。

ロジャー・トレッソン氏=本人提供

■北朝鮮とスポーツ

「平壌国際マラソン」は、故金日成国家主席の生誕を祝う記念行事の一環として毎年4月に行われている。2014年からアマチュアや外国人ランナーにも門戸を開き、17年は1000人以上が参加した。だがAFP通信によると、米国が北朝鮮への渡航を禁止するなど米朝関係が緊張した18年は、外国人の参加者が半減した。

北朝鮮への旅行を専門とするジェイエス・エンタープライズによると、市民の間では、スケートやバスケットボール、卓球などが盛んという。5年ほど前からはローラースケートが空前の人気になっており、冬には屋外の凍った池や川でアイススケートを楽しむ人もいるという。

世界報道写真展2018(世界報道写真財団、朝日新聞社主催)

京都の立命館大学国際平和ミュージアムで10月6日から28日、滋賀の立命館大学びわこ・くさつキャンパスで10月30日から11月11日まで開催。