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見られると幸運? 台湾・亀山島のホエール・ウォッチング

虹色台湾 更新日: 公開日:
クジラを観察する「ホエール・ウォッチング」の遊覧船。前方に見えるのが亀山島=西本秀撮影

朝日新聞台北支局から歩いて5分ほど。遼寧街夜市に「亀山島」と記されたネオン看板が輝く居酒屋がある。台湾東岸の亀山島周辺で捕れた新鮮な魚介が味わえる、なじみの店だ。だが、台湾に赴任して1年半、実際に島を訪ねたことがなかった。豊かな漁場であり、野生のクジラを観察できる海域としても知られる。出かけてみよう。クジラに出あえるだろうか。

台北市内の遼寧街夜市にある海鮮居酒屋「亀山島」=西本秀撮影

亀山島周辺でクジラを観察する「賞鯨(ホエール・ウォッチング)」遊覧船は、台湾東部の宜蘭県から出港している。宜蘭まで、台北から高速バスで1時間あまり。台湾鉄道の台北駅の北側にバスターミナルがあり、宜蘭便は頻繁に出ている。

台北駅の北にある台北バスターミナル=西本秀撮影

私が乗ったバスの客席は横3列で、座席の幅はゆったり。週末朝の便のため満席だったが、快適に過ごせた。うとうと居眠りしているうちに宜蘭に到着。海に近いためだろうか。降車すると、もわっとする湿度が身体を包んだ。

台北と宜蘭を結ぶ高速バス=西本秀撮影

遊覧船の波止場は、郊外の烏石漁港にある。幾つかの運航業者があり、インターネットを通じて予約する仕組みだ。季節によって異なるが、週末はおおむね、午前、昼、午後の3便が設定されている。3時間近いツアーで、料金は1人分が1千台湾㌦(約3600円)だった。

受け付けカウンターの後方の壁には、巨大なクジラやイルカの絵が描かれていた。期待がふくらむ。「今日はクジラが見られますか?」と聞いてみると、業者は笑って、「行ってみないと分からない。幸運だったら見られるよ」

漁港にある遊覧船の受け付け。後ろの壁に大きなクジラの絵が描かれている=西本秀撮影

遊覧船は偶然にも「亀山朝日号」という名前だった。50人ほどの乗客は、台北などから訪れた家族連れが多い。オレンジ色の救命衣を身に着けて乗り込む。

遊覧船「亀山朝日号」=西本秀撮影

亀山島は、宜蘭の沖合約10キロにある小さな離島だ。かつては住民が暮らしていたが、1970年代に軍事利用のために住民は移住させられ、現在も台湾当局の管理下にある。

事前に上陸申請をすれば観光もでき、火山島のため、温泉も湧いているという。今回は申請する時間の余裕がなく、島の周辺海域を遊覧するツアーを選んだ。乗り込んで30分もすると、島影が迫ってくる。

亀山島の周囲を巡る遊覧船=西本秀撮影

遊覧船の屋上には、クジラを探す監視員がじっと待機していた。日射病にならないよう、帽子にタオル、サングラス姿。マイクを握って、「10時の方向に向かって」などと、操舵(そうだ)席に指示を出している。

遊覧船の屋上でクジラを探す監視人=西本秀撮影

ただ、なかなか見つからない。1時間あまりが過ぎ、かなり沖まで進んだ。台湾本島も、亀山島も、遠くにかすむ。

「右手を見て」。監視員の声が弾んだ。乗船客が一斉に、船べりに集まる。どこだろう。じっと見ていると、はるか遠くに、黒い影のようなものが水面から現れている。クジラの背中だろうか。船が近づくと、水中に消えてしまった。

わずかに見えた背びれ。イルカだろうか=西本秀撮影

同じようなことを幾度か繰り返したが、クジラやイルカが、顔や全身を現すことはなかった。最もハッキリ見えた姿が、掲載写真だ。イルカの背びれだろうか。

残念。自然相手だから仕方がない。ただ、水平線を見渡す洋上で新鮮な空気を吸い、たっぷり日差しを浴び、たっぷり汗をかいただけで、満足する一日だった。

宜蘭県には「礁渓温泉」というリゾート温泉もある。週末に泊まりがけで出かける台湾の人々も多い。街角には足湯もある。

礁渓温泉の足湯。小魚が足の角質を食べてくれる=西本秀撮影

今回の台湾メシ

海鮮を食べるつもりだったが、時間の都合で夜になって訪れたのは羊鍋の専門店「古記羊肉爐」(宜蘭・旧城北路260号)。骨付き羊肉のかたまりや野菜、豆腐を、テーブルのコンロでぐつぐつと煮込む。2~3人前の小鍋が400台湾㌦(約1500円)。あっさりしたスープが追加注文の麺とマッチして美味だった。

鍋の中に羊肉のかたまりや野菜、豆腐などがたっぷり=西本秀撮影
羊鍋の専門店「古記羊肉爐」=西本秀撮影