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英語で「因数分解」って何ていう? 豪州英語集中校で進学に備える

バイリンガルの作り方~移民社会・豪州より~
数学の授業で専門用語を、パソコンを使って勉強。マリアンヌ・サムエル教諭(右)に指名され、前に出て問題と解く生徒。このときは「Factorisation (因数分解とは)」という3択問題が出ている
数学の授業で専門用語を、パソコンを使って勉強。マリアンヌ・サムエル教諭(右)に指名され、前に出て問題と解く生徒。このときは「Factorisation (因数分解とは)」という3択問題が出ている

シドニー西部のエバンス・インテンシブ・イングリッシュ・センター(IEC)。オーストラリアで英語が母語でない中高生が一般の学校に入る前に通う「英語集中校」の一つだ。ある教室では、大きなボードに問題が表示されていた。

問題「Expandingの意味は?」。その下に三択の答えが表示されている。

「A : inserting brackets」「 B: finding HCF」「 C:removing grouping symbols」
指名された生徒が前に出て、選択肢を手で触れて選ぶ。電子ボードなので、触れればタブレットのように反応する。

小暮哲夫2-4
数学の授業で手を挙げる生徒たち。活発に声が上がる

答えは、C。2人目の生徒が正解すると、歓声が上がった。

最上級の「レベル3」のクラス向けに、マリアンヌ・サムエル教諭が行っている数学の授業だ。問題は「展開の意味は?」。答えのCは「グループになった記号を外す」という意味で、たとえば、2(x-8)=2x-16 のように、計算してかっこを外すこと。BのHCF は 「highest common factor(最大公約数)」なので違う。また、Aの「bracket(かっこ) に挿入する」でもない。

「Factorisation とは?」という問題もあった。

因数分解はどうするのという問いなので、三つの選択肢の中から、答えは、「algebraic division(代数的に分割する)」だ。

「多くの生徒たちが数学で悪戦苦闘する。それは、英語で何というか、知らないから。今は、代数をやっていますけど、展開と因数分解といった必ず出てくる単語を身につけないといけない。スマートボードを使ったのは、楽しく勉強する効果があるから」とサムエル教諭が説明した。

IECは英語力アップが目的。だから、エバンスIECでは、週25時間の授業のうち、14~18時間を英語が占めるが、それ以外の時間では、数学や理科、社会なども教える。それぞれの科目で出てくる専門用語や基本的な内容を知っているかどうかが、現地のハイスクールに移って授業を理解していく大きなポイントになるからだ。たとえば、数学の授業は、難しい解法を学ぶよりも、語彙力のアップに力を注ぐ。

レベル3のクラスで学ぶイラン出身のアルシャ・ポウレザさん(16)は「数学や理科、歴史とかいろんな科目が学べるのがいい。とくに理科は、語彙が難しいから」と話した。 

公立でも入学時にはパソコン必須

豪州のハイスクール(中高校)では、公立校でも、入学時にノートブックパソコンを準備するように求められるのが普通だ。インターネットで調べてパソコンでレポートを書く、プレゼン用のソフトで資料を作って発表するといったことは当たり前。教室でのIT化は日本と比べて予想以上に進んでいる。だから、IECでも、ITスキルの習熟にも同時に目を配る。

あるレベル2の教室では、生徒たちがノートブックパソコンに向かって、表示された英単語のタイピングの練習をしていた。英語の授業だが、つづりを覚えるだけでなく、キーボードのタイピングにも慣れる狙いがある。

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各自がパソコンを使って単語の練習。メアリー・カババグ教諭が見守る

授業の後半では、メアリー・カババグ先生が作った選択クイズにみんなで挑んだ。ホワイトボードとパソコン画面に同じ問題が表示された。

「imperative とは何?」。

選択肢は4つ。「A: question B:reminder C:order D:instruction」。

制限時間は20秒。この間に各自がパソコンで回答する。

正解はC(命令)。それぞれの選択肢を選んだ人数が表示される。20人中15人が正解だ。教室がどっとわく。

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パソコンを使った英単語の選択クイズで正解し、喜ぶ生徒たち

今度は、人の頭に頭の上にいろいろな絵が浮かんでいるグラフィックが表示される。その上に書かれた質問は「これは何の例ですか」。4択問題だ。

正解は「imagery 」。

すかさず、カバナグ教諭が口頭で「では、imagery とはどういう意味?」と聞くと、1人の生徒が「creative picture in your mind(頭の中に浮かんだ創造的な絵のことです)」と答えた。

カバナグ教諭は、1つのクラスで英語を週に3、4時間教えるうちで、1時間はこんなパソコンを使った授業をする。このクラスは「レベル2」。なかなか難しい語彙に感じたが、「今日(水曜日)の問題の単語は月曜日にテキストを読んだ内容です。それを家で復習してもらい、どれだけ覚えているかを見ました」

内戦を逃れてきた子も

毎年19万人前後の移民を受け入れる豪州社会。その中でも、エバンスIECのあるシドニー西部は、最も多様性のある人々がある暮らす地域の一つだ。約160人いる生徒は常時、25~50カ国ほどからやってくる。2割が留学生で中国やベトナムなどからが多い。6割は家族といっしょに来る普通の移民で、南太平洋の島国やインド、フィリピンなどから。残る2割、時期によっては4割ほどが難民だ。イラクやシリア、アフガニスタンなどの内戦を逃れてきた子どもたちや、イランや南米など政治的な迫害を逃れてくるケースもある。

「学校教育自体が崩壊していて、学校に行ったことがない地域から来た生徒たちもいる。そういう生徒たちには、学校にどう通うのか、学校では何をするのかといったところから教えなければなりません」とネリナ・プレトラブ校長は話す。

定規はどうやって使うのかも知らないような子どもたちもいる。そんな子どもたちにとっては、IECは、英語を学ぶだけでなく、時間割通りに1日が進んでいく学校生活自体に慣れる準備の場でもある。

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パソコンを使って単語の練習。画面には「repetition」(何度も繰り返し言うこと)とある

授業以外で、泊まりがけのキャンプで、豪州人が好む自然との付き合い方を体験することも。生徒たちが出身国・地域ならではのいろいろな出し物をしたり、各国料理の出店を出したりする学校行事も開催する。楽しみながら、多文化社会としての豪州の一端を理解してもらう。

ここで学ぶのは厳しい、という生徒はどんな場合ですか?

こう尋ねると、ミー・リン・リアウ副校長は「二つのタイプがあります」と言った。「難民の50%くらいは何らかのトラウマを持っています」。学校にはカウンセラーがいて、個別に心理的なケアをする。

もう一つは、勉強が大変な場合だ。そんな生徒には、教員と指導助手がサポート。「宿題センター」と名付けた部屋で、宿題を手伝う。全体の1割近くの生徒たちだという。

そんなIECでの勉強期間は、ニューサウスウェールズ州では、最長で5学期(1年と四半期)と決まっている。英語を基礎から学び、豪州での学校生活のいろはを身につけた生徒たちは、各地のハイスクールに移っていく。編入した現地校では、一般の生徒たちに交じって、どのように英語をさらに上達させていくのだろうか。次回から各地のハイスクールを訪ねていきます。

(次回は8月1日に掲載します)