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米国から高額兵器を買いまくることを同盟強化と勘違いする愚

ミリタリーリポート@アメリカ
1機当たり約100億円の日本向けV-22オスプレイ(写真:ベル・ボーイング)

国を挙げて高額兵器輸出を推進するアメリカ 

日本側としては、アメリカの基幹産業である軍需メーカーから新鋭戦闘機をはじめとする超高額兵器や、やはり超高額商品である旅客機を購入し、アメリカに大金を支払うことで手っ取り早く日米貿易不均衡を解消しようという、これまでもしばしば日本政府が用いてきた策を、繰り返そうというわけである。

日米首脳会談で、トランプ米大統領(右)と握手する安倍晋三首相=6月7日、ワシントンのホワイトハウス、岩下毅撮影

せっかく安倍政権が政策レベルでは国産防衛装備品の輸出を解禁したにもかかわらず、その政策はなかなか実現しそうにない。なぜなら、日本製の防衛装備品や防衛関連技術の輸出をコントロールする権限を持つ防衛装備庁という仕組みは出来上がったものの、現実にそれらを海外へ紹介したり売り込んだりするための経験やノウハウが欠落しているため、防衛関連企業を主導してメイド・イン・ジャパンの兵器や技術を輸出する状況には至っていないのだ。

 

いかなる国でも、政府が軍需メーカーを強力に後押ししなければ、国際兵器マーケットでまともなビジネスはできない。たとえば、世界最大の兵器輸出国であるアメリカでは、国産兵器や軍事技術の海外への売り込みは国家事業として制度化されており、それを主導する国防安全保障協力局(Defense Security Cooperation AgencyDSCA)が国防総省に設置されている。そのDSCA内には、最新兵器があまりにも高額なため躊躇せざるを得ない国々に融資する部門まであり、同盟国のみならず、広く海外諸国へもアメリカ製武器の売り込みを強力に推進しているのだ。

 

そのような制度面だけではなく、ホワイトハウスや連邦議員(地元に大規模な軍需産業を抱えている場合は特に)も国産兵器輸出には一役買っている。トランプ大統領も、安倍首相と会談するたびに、アメリカ製高額兵器の売り込みに余念がない。今回のG7サミットや米朝首脳会談直前の日米首脳会談に関する記者会見の場で、安倍首相が軍用機を追加購入すると述べたことをわざわざ公表したのも、要するに日本にアメリカ製高額兵器の輸入調達を念押ししたというわけである。

 

気前よく高額兵器を買いまくる日本

1機当たり約150億円の日本向けF-35A(写真:ロッキード・マーチン社)

奇妙なことに、国産兵器の輸出解禁に踏み切った安倍政権下で、アメリカはもとより国際武器市場への日本製兵器の輸出がさして成果を上げていない半面、アメリカからの高額兵器の輸入が増加の一途を辿っている。

 

たとえば、2011年度に防衛省がアメリカから対外軍事有償援助制度(FMS)を通して輸入調達した金額はおよそ600億円であったものが、15年度にはおよそ4,500億円、16年度にはおよそ5,000億円。12年度から16年度の5年間の総額は約13,900億円に上っている。

 

すでに輸入調達が始まり引き続き購入することになっているV22オスプレイ中型輸送機をはじめ、F35A戦闘機、SM3ブロックIIA弾道ミサイル迎撃用ミサイル、さらに1セットで1000億円以上もするイージス・アショア地上配備型弾道ミサイル防衛システムなど、今後もアメリカ製超高額兵器の輸入調達は目白押しだ。

 

それに加えて、トランプ大統領が「引き続き日本はアメリカ製戦闘機を追加購入する」と公言してしまったからには、現在日本国防当局が策定中の中期防衛力整備計画には、トランプ大統領ならびに安倍首相の意向を忖度して、アメリカが日本に売却したがっているF35戦闘機(F35AあるいはF35B)の追加調達を盛り込まざるを得ないことになろう。

 戦略なき兵器の収集

 安倍政権は、中国海洋戦力の飛躍的強化や、北朝鮮弾道ミサイル脅威のさらなる伸展といった日本の周辺軍事情勢の深刻化に対応するため、日本の国防力を充実強化させると強調している。しかしながら、そのような政策目標を推進するための具体的防衛戦略を打ち出しているとは言えず、「日米同盟の強化」を繰り返すのみだ。その「日米同盟の強化」にしても、軍事戦略的観点からみると、何ら具体策を提示しているわけではない。

 

すなわち具体的かつ実現可能な軍事戦略や作戦概念が欠落しているがため、日本国防当局はアメリカから超高額兵器を購入することで、安倍政権が繰り返す「日米同盟の強化」を推し進めていると見せかけているのである。要するに、アメリカ側の歓心を買うことで日米同盟が強化されるもの、と思い違いをしている、あるいは自己欺瞞をしているのではないかと考えざるをえない。

 

たしかに、自衛隊がアメリカ軍と共通の兵器を使用することで、日米両軍の相互運用性が高まり、日米合同演習や、万が一にも自衛隊が実戦に投入された場合には日米共同作戦での両軍の連携がスムーズになる可能性が高まることは確かである。しかし、それは戦略レベルや作戦概念レベルでの日米同盟の強化というわけではない。日本側が戦略的思考を欠いていたならば、単に自衛隊の米軍への従属が強化されることを意味するだけである。

 

このように、アメリカ側の日米同盟への関心をつなぎ留めておくために、そしてその副次的効果としてアメリカの対日貿易赤字も解消させることができる、といった目論見でアメリカから超高額兵器を輸入調達するという姿勢は、「防衛戦略の必要性からではなく、はじめに調達すべき防衛装備品ありき」という軍事的には極めて歪な構造になっている。そして「戦略なき兵器の収集」といった構造は、アメリカからの高額兵器輸入に限らず、国内防衛産業からの調達にも繰り返されており、即刻抜本的に改革が必要な日本防衛の脆弱点と言えよう。この点に関しては稿を改めたい。