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海外王室の結婚報道から考える 日本社会と皇室結婚報道

ニッポンあれやこれや ~“日独ハーフ”サンドラの視点~ 
結婚式を終え、馬車で街をパレードするハリー英王子とメーガンさん=ロイター

5月、英国王室ヘンリー王子とメーガン・マークルさんの結婚式がありました。色んな意味で革新的でしたね。「スタンド・バイ・ミー」のゴスペル合唱、個性的な語りで知られる米国聖公会の総裁主教マイケル・カリーさんの13分40秒に及ぶ長い説教など、異例づくしの一つひとつが世界中で話題になりました。でも、一番話題になったのは、「メーガンさん自身」だったことは、だれも否定しないでしょう。

メーガンさんご本人に離婚歴があったり、ハリー王子よりも3歳年上だったり、エンターテインメントビジネス出身であったり、母親がアフリカ系であったり、ご本人もご家族もイギリス国籍ではなく米国人であったり。英国王室では「前例のないもの」が並びました。

残念ながら、メーガンさんご本人ばかりでなく、彼女の家族にも過剰にスポットが当たりました。しかし注目すべきは、これらのことはタブロイド紙やネット記事を通して「話題」にはなったものの、結婚や結婚式そのものへの「影響」はなかったということ。そして、英国王室がそれを受け入れ、そのことが英国民、そして世界から好意的に受け止められたことです。

かつては存在した身分だとか家柄だとかといった考え方とはさっぱり縁を切ったことは、高く評価され、多くの人がヘンリー王子とメーガンさんの結婚を「現代にふさわしい結婚」だととらえている印象です。

これを見て、日本に思いをはせたのは私だけではないでしょう。日本では、秋篠宮家の眞子様と小室圭さんの喜びに包まれた婚約内定もつかの間、結婚の再来年への延期が今年2月に発表されました。メディアによる様々な「バッシング」も目に付きました。

婚約が内定し、会見する秋篠宮眞子さまと小室圭さん=2017年9月3日、ロイター

結婚延期に関しては、ドイツのシュピーゲル誌フランクフルター・アルゲマイネ紙でも報道されましたし、ドイツのPromiflash というタブロイド紙のサイトでは、読者に向けて「眞子様と圭さんは結婚できると思いますか?」という質問をサイトに掲載されるなど、欧州でも注目されました。

それはさておき、私は日本の週刊誌の小室さんに対する「叩き方」に、ずっと違和感がありました。ドイツでも公人の場合、恋愛に始まる私生活やら家族の事やらのプライベートな話題がタブロイド紙などで報道されることはあります。ただし日本と少し違うのは、ドイツの場合、これは「あくまでもタブロイド紙に掲載された話」であることです。「暴かれはしても、実生活には害はない」のです。

ジェンダーの問題として

特に気になったのは、「収入が低い」という批判。ドイツを含むヨーロッパの近年の感覚では、「夫は妻より収入が多いべきだ」という考え方自体が、ジェンダーの視点から問題視されています。今回の件に関しては、「皇室だから……」と言う方もいるかもしれませんが、欧州では、例えばスウエーデン王室のヴィクトリア王女の結婚相手は、彼女が通っていたスポーツジムの専属スポーツトレーナーであり、当時月給11万円だったと報じられました

でもこれらのことは現地のタブロイド誌では話題になったものの、実際に二人の結婚の障害につながるような「盛り上がり」は見られず、めでたく結婚にいたりました。

 母子家庭報道

 次に、小室さんに父親がいないことを繰り返し報道し、結果的に「母子家庭」をあたかも「だめなもの」かのように扱ってしまっている点も気になります。

ドイツを含むEU諸国では、シングルマザーやシングルファザーであることを理由に、メディアがその人について批判的な書き方をすることはあまりなく、むしろ応援するような書き方の方が多いです。

母子家庭だけでなく、ドイツでは、日本に比べて「多様な家族のかたち」が人々にとって当たり前のこととして受け止められています。結婚せずに子供を育てている事実婚のカップルは珍しくないですし、昨年10月にはゲイのカップルの同性婚も合法化されました。

付け加えると、ドイツの社会は「恋愛至上主義」。基本的に男女関係なく、パートナーとの離婚後や死別後の恋愛は、むしろ周りから応援され歓迎されます。例えばドイツの前首相のシュレーダー氏は先日5度目の結婚をしましたが、このことを現地で「シュレーダーは新しい恋を見つけた」と応援する記事も目立ちました。同氏の元妻でニーダーザクセン州議会議員であるドリス・ケプフ氏にも既に同州の内務・スポーツ大臣であるボリス・ピストリウスという新たなパートナーがおり、既に二人で公の場に出かけています。

そんなこんなで男女関係について欧州はわりとオープンなのですが、日本の報道を見ると、配偶者が死別後の男性の恋愛や結婚には寛容なものもある一方で、女性となると、途端に批判される傾向を感じます。

それにしても、日本の週刊誌に批判されないようなプロフィールの持ち主ってどんな人なんでしょうか…?「あれもだめ、これもだめ」とメディアが批判的に取り上げることは、「多様な価値観」の対極にあるような気がします。そして結局は、だれにとっても生きづらい社会を作ることにしかならないのではないでしょうか。