【解説】パートナーシップ制度とは?同性婚との違い、違憲判断が相次ぐ裁判の状況は?

パートナーシップ制度とは、同性婚が法制化されていない日本で、双方又はいずれか一方が性的マイノリティーのカップルが、自治体にパートナーシップの宣誓をするもので、近年は性的少数者の方々がより暮らしやすい社会の実現をめざして多くの自治体で導入が進んでいます。
各自治体の条例に基づく制度で、例えば同性同士でもパートナーだと自治体が認めれば、証明書や登録証が交付され、法律婚カップルが受けている行政サービスと同様のサービスが利用可能になる場合もあります。
同性カップルに限らず、異性カップルも利用できたり、家族を対象としたりしたファミリーシップ制度もあります。
パートナーシップ宣誓を行うことで、公営住宅への入居や家族として病院での面会、手術の同意などが認められる場合があります。
最近では、異性カップルの事実婚と同様に、同性カップルも住民票に「夫(未届)」または「妻(未届)」と記載することを認める自治体も出てきています。
ただし、パートナーシップ制度は婚姻制度とは異なる制度。法律婚の夫婦と同等の権利を保障するものではなく、それぞれの制度や自治体によって受けられるサービスの内容は異なります。
パートナーシップ制度は、婚姻(法律婚、同性婚を含む)とは法的効果の面で大きく異なります。例えば、相続においてはパートナーシップ制度の利用者は法定相続人として認められません。
そのため、遺言書を作成していない場合、パートナーは相続ができません。また、税制面では、配偶者控除や贈与税の配偶者控除特例など、婚姻関係にある夫婦に認められる税制上の優遇措置はパートナーシップ制度利用者には適用されません。
国内のパートナーシップ制度は2015年に東京都渋谷区と世田谷区で初めて導入されました。都道府県としては茨城県が2019年に初めて制度をスタートしました。
その後、多くの自治体で導入が進み、認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」によると、2024年6月28日時点で、制度を導入しているのは459自治体で、人口カバー率は85.1%。制度に登録したカップルは7351組(2024年5月31日時点)となったといいます。
また、2025年1月1日時点で見ると、公益社団法人「Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人に」の調査で、制度を導入しているのは都道府県を含めて少なくとも484自治体あります。パートナーシップ制度の日本全体の人口カバー率も90%を超えたといいます。
一方で、理解がなかなか進まなかったり、導入には条例制定などの手続きが必要となったりするため、導入が進んでいない自治体もあります。
各自治体の条例に基づいて独自に導入されているパートナーシップ制度は、その効力が自治体内に限定される場合がほとんどです。
ある自治体でパートナーシップの証明を受けても、他の自治体へ転居した場合などにはその効力が認められなくなってしまうという課題が残っています。近年は、自治体間の連携が進み、相互承認をする動きも広がりつつあります。
自治体間での連携が課題となっている中、都道府県としては初めてパートナーシップ制度を導入した茨城県では、他の自治体との連携を進めています。
パートナーシップ宣誓制度導入から約5年後の2024年11月、茨城県は「いばらきパートナーシップ宣誓制度」の自治体間連携先を大幅に拡大しました。
宣誓制度の登録者が、連携している他の自治体に転居した際、簡易な手続き(宣誓の継続申告)で連携している自治体の制度に基づくサービスを受けられるものです。2025年2月1日時点で、全国19府県153市町の計172自治体が茨城県と相互に連携しています。
世界では同性婚の法制化が徐々に進んでいます。今年1月には、タイが東南アジアで初めて同性婚を認める法律が施行されました。
アジアでは2019年に台湾で、2023年にネパールで同性婚が認められています。
日本国内では、同性婚の法制化をめぐって各地で裁判が行われています。
2024年12月には、福岡高裁が「幸福追求権」を保障する憲法13条(*)など3条項に照らし、同性婚を認めない民法と戸籍法の規定は「違憲」と判断しました。2023年3月の札幌、同10月の東京に続く3件目の違憲判断となりました。
判決では国の賠償責任は認めなかったものの、同様の訴訟の中で幸福追求権を根拠とした違憲判断は初めてでした。
朝日新聞が2023年2月に行った世論調査でも72%の人が同性婚を法律で認めるべきだと回答しました。2015年2月の41%から徐々に増えており、国民の間で同性婚法制化への理解は高まっていると言えそうです。
当事者たちはどう感じているのでしょうか。
認定NPO虹色ダイバーシティ代表の村木真紀さん(50)は、自身も同性パートナーとパートナーシップ制度に登録していますが、「正直どちらかというと、今は嬉しさよりも、むしろ(法律婚と比較して)格差の方が気になってしまいます。パートナーシップ制度があることを、LGBT施策をやっている言い訳に使われていると感じることもあります 」と取材に語りました。
茨城県出身の村木さん。2019年に茨城県が都道府県として初めてパートナーシップ宣誓制度を導入したときは「やっぱり茨城出身者として涙が出るほど嬉しく、特別な気持ちでした」と振り返ります。
渋谷区と世田谷区からパートナーシップ制度がスタートして10年を迎えますが、「この10年で性的少数者のメンタルヘルスは改善されていないことが調査で判明している」といいます。
村木さんは同性婚の法制化だけでなく、「当事者が集うことができる居場所づくりや、性的少数者の抱える事情を理解して寄り添えるソーシャルワーカーの配置などに行政が積極的に取り組む必要がある」と訴えます。 村木さんは「これは人の命の問題。待ったなしの状況まできていることを認識してほしい」と話しました。