どんなイヌでも、すべて昇天する。しかし、150種以上、約60万匹の英国犬を調べた新たな研究によると、ブルドッグはボーダー・テリアより何年も早くあの世に行く可能性がある。
この研究結果は2024年2月1日、学術誌「Scientific Reports(サイエンティフィック・リポーツ)」に掲載された。研究者らは、大型犬や顔が平たい犬種は、小型犬や細長い鼻を持つ犬種よりも平均寿命が短いことを突きとめた。メスの犬は、オス犬より少しばかり長生きすることもわかった。
このような大まかな傾向には例外があり、この研究結果は、繁殖の方法や遺伝子プールが異なる可能性のある英国以外の犬には当てはまらないかもしれないと、研究者らは指摘している。
なぜ、ある犬種の寿命が他の犬種より短いのかを解明するには、さらなる研究が必要だ。一部の犬種は遺伝的に深刻な健康問題を起こしやすいが、犬種に関連した行動やライフスタイル、食事、環境、その他の要因の違いも犬の寿命を縮める可能性があると専門家たちは言っている。
「私たちはいまや早期死亡のリスクがある集団を特定したので、なぜそうなのかを調べることに着手できる」とカーステン・マクミランは言う。今回の研究論文の筆者で、この研究を主導した英国の犬の愛護慈善団体「Dogs Trust」のデータ管理者マクミランは、「この研究は私たちが犬の生活を改善するきっかけになる」と話していた。
今回の研究は、犬種登録簿やペット保険の会社、獣医師の会社その他の情報源から集めた計58万4734匹の英国の犬のデータベースを基にしたものである。この種の記録にはさまざまな予断や偏見が入り込みやすく、必ずしも英国の一般的な犬の集団を代表しているわけではないと、科学者たちは認めている。
しかし、米バージニア工科大学の獣医疫学者で、今回の研究にはかかわっていない博士のオードリー・ループルは、研究者らがとても多様な元データを活用したことが同研究の強みの一つだと言っている。「素晴らしいアプローチだと思う」と彼女は言う。
研究対象にした犬のほとんどは純血種で、155犬種のうちのどれかだ。他は、交雑種の範疇(はんちゅう)にひとまとめにした。研究者らは、各犬種の全体的な体格を小型、中型、大型に分類し、頭部の形状を平ら、中間型、面長に分けた。
研究者らは、全犬種の寿命の中央値は12.5年であることを突きとめたが、マクミランによると、平均寿命は犬種によって「非常に驚く」ほど異なっていた。小柄な牧畜犬の一種のランカシャー・ヒーラーは、犬のメトシェラ(訳注=旧約聖書に登場する伝説的な長寿者)で、平均寿命が15.4年。しかし、大型牧羊犬のコーカシアンシェパードは、平均寿命がわずか5.4年だった。
小型犬種は、全体として平均寿命が12.7年だったのに対し、大型犬種は11.9年だった。このことは、犬や他の哺乳動物に関する先行研究と一致していた。一般的に、ある動物の種において、小型の個体の方が大型より長生きする傾向があることがわかっている。
短頭種とも称される平たい顔の犬種の寿命は平均11.2年で、中間型および面長の犬種の平均寿命は前者が12.8年、後者が12.1年だった。フレンチ・ブルドッグのような平たい顔の犬種は非常に人気があるのだが、専門家は、その極端に短い鼻が呼吸器系の疾患や熱中症、その他の健康問題を引き起こすかもしれないと警告している。
寿命の短さに関連する特性のいくつかは、相互に影響し合っているらしいことも研究者らは発見した。ミニチュア・ダックスフントやウィペットなど小型で鼻の長い犬種は、同種全体の平均寿命が13.3年で、ボクサーやブル・マスティフのような大型で鼻が短い犬種の平均寿命(10.7年)より2年半ほど長生きだった。
進化の歴史も影響している。近縁種ほど寿命が近似しているのだ。
研究者らはまた、グループとしての純血種の平均寿命が12.7年だったのに対し、交雑種は12.0年だったことも突きとめた。純血種の生存率が高いことは、一部の先行研究と矛盾しているが、これについてはすべての交雑種を体格や交雑の組み合わせとは関係なく単一の範疇(はんちゅう)にまとめたことが原因になっている可能性がある、と研究者らはみている。
それでも、先述した獣医疫学者のループルは、交雑種はどんな場合も純血種に比べて健康だという「常識」に疑問を投げかける研究結果を喜んでいると話していた。彼女は「これはもっと複雑な問題だと思う」と言い、「概してとても健康的な純血種がいるのだ」と付け加えた。(抄訳)
(Emily Anthes)©2024 The New York Times
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