■東京オリンピックについて、外国人に話してみよう。「賛否両論」って英語でどう言う?
こんにちは。前回のレッスンから、朝日新聞デジタルの日本語、英語の記事などを参考に、皆さんの「自己発信ノート」に入れるべき例文を、参考として私から紹介しています。
今回のテーマは、やはり東京オリンピックですね。
IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長が、閉会式前に、東京オリンピックの成功についてコメントをしました。
私はこれを自己発信文に入れたいと思ったので、朝日新聞の英語版を参考に下記のように作ってみました。あなたは東京オリンピックについてどのような意見を外国人に伝えますか?
これらの記事をもとに、自己発信文を作ります。
このように、選んだ題材の文章を少し加工するだけで、自分の意見を表す立派な文章が完成します。
「日本語」を起点に、自分が外国人に言いたいことを探し、それに見合うテキストの英文をまず比較してみましょう。もちろん、言いたい日本語をすぐに英語で言うことができないこともあるでしょう。
私がこのコラムで提唱している、「英文テキストはアウトプットの材料箱」として使うと、英文はほとんどネイティブの使う英語になってるので、まずはテキストの英語をそのまま自己発信文に入れてみましょう。テキストの英文をフル活用して、そこに(上記⑤)、(上記⑧)、(上記⑪)を持ってきて、あたかも自分の意見のように活用するのです。
⑤の「賛否両論」については、「pros and cons」か「for and against」のどちらかを使えると格好いいですね。両方知っていれば、2回に分けて使って、外国人に表現の豊富さをアピールしてみましょう。
⑧の「賛成する」も、「agree」、「support」、「in favor of」などで使い分けていきましょう。今回のレッスンを踏まえた「オリジナル単語帳」のイメージは下記のとおりです。参考になれば幸いです。(「オリジナル単語帳」の作成の方法は前回のレッスン参照)
■アウトプットの「表現力」を高めるために、「パラフレージング」(言い換え)の練習をしよう!
これまでのレッスンで、日本語で言いたいことを考え、それを外国語に「訳す」のではなく、相手に伝わるように「置き換える」訓練をやってきました。
今回は、その「置き換え」にバリエーションを加えてみましょう。
この練習を、通訳の世界では「パラフレージング」と言います。ある程度の長さの外国語の文章を最後まで聞き、それを記憶にとどめ、口頭で出来るだけ原文とは異なる表現を使って再現することです。
本来は、外国語の文章を聞いた瞬間から訳し始めないといけない同時通訳者が、最初に聞いた単語、節から違う構成の文章を作ることで、最初に想定していた文章と違う内容の文章でも、結果的に文全体の意味を変えないように伝えるための練習です。ビジネスパーソンの「アウトプット」術の向上にも大変有効ですので、お勧めします。
そのためには、その前提となる「単語」、「表現」でいくつもの「言い換え」パターン、バリエーションを持っておくことがコツとなります。
そして、そのいくつものパターンを、外国人の前でアウトプットとして披露できれば、あなたの語学力はすごいと思わせることができます。
■「精一杯努力する」は、日本語で最低24通りに言い換えられる。英語でもトライしてみよう!
わかりやすく言うと、たとえば、日本語で「精一杯」には、「精一杯」を含めて、「全力で」、「一生懸命」、「力の限り」の4種類の類義語(言い換え)があります。「努力する」には、「努力する」を含め、「頑張る」、「力を注ぐ」、「尽力する」、「精進する」、「奮闘する」の6種類の類義語(言い換え)があるとすると、理論的には4×6=24通りの言い回し(言い換え)ができることになります。
そして、「精一杯努力する」のバリエーションを立て続けに外国語で24通り発声する練習をするのです。
ここで大事になるのは、アウトプットする際に、同じ相手に、とにかく同じ単語、表現は使わないと意識することです。
それは、たとえば少し日本語ができる外国人が、あなたに、「頑張る」という表現ばかりしか使わない場面を想定すればよいと思います。やはり、表現のバリエーションを持っていることは、相手に与える印象も相当変わると思いますよ。「頑張って!」みましょう。
たとえば英語では、どうでしょうか。「精一杯」は、「as hard as possible」、「to the best of your ability」、「as much as you can」、「to the fullest」、「to the utmost」などがあります(他にもあります)。
そして、「努力する」は、「make an effort」、「do your best」、「try」、「make exertions」などがあります。そうすると、それらを組み合わせ、たとえば「try as much as you can」とか、「make your effort to the fullest」などの表現ができます。このように、あなたができる範囲でいくつものバリエーションを持っておくことが大事です。
さて、最後に、今回の宿題は以下のとおりです。「パラフレージング」の練習としても効果的です。次回レッスンまでに書き出して、あなたの「オリジナル単語帳」に入れてみてください。それぞれ最低3つの英単語が考えられますよ。回答例は次回お伝えします。
⑪明らかな
⑫故意の
⑬愚かな
⑭おもしろい
⑮並外れた
⑯中心の
⑰迅速な
⑱有益な
⑲複雑な、困難な
⑳適切な
前回の宿題の回答例を参考までにお伝えします。
前回のレッスンでお伝えした「日本語からは発声できなかったが、見れば知っていた」のカテゴリーの単語、表現があれば、是非、「オリジナル単語帳」に、簡単な例文とセットで入れてみると効果が上がると思います。
また、私が示した回答は網羅的ではないので、それ以外に別の回答を見つけられた方は、その単語、表現ももちろん入れてみてください。この宿題が、あなたの新たなアウトプットの可能性を導くきっかけになれば幸いです。
なお、この日本語から英語の「置き換え」は、正確な訳出ではない、単語によって用法が異なるとして異論がある方もいらっしゃるかもしれませんが、私のポイントは、とにかく言いたいことを柔軟な発想で、バリエーションを持って伝えていくことにあるので、その点はご理解いただければ幸いです。
すばらしい wonderful, brilliant, outstanding, excellent, remarkable
重要な important, serious, significant, grave, profound
かしこい wise, clever, smart, intelligent, cool
上手な good, great, skillful, talented, competent
正確な right, exact, correct, precise, accurate
完全な complete, perfect, thorough, comprehensive
かなりの quite, pretty, fairly, considerable
有名な、著名な famous, well-known, renouned, distinguished
率直な frank, open, candid, straightforward
決定的な decisive, absolute, conclusive, defenitive
これまでのレッスンでは「アウトプット・ファースト」の私の持論にもとづき、「アウトプット」のノウハウについて触れてきました。
次回からは、「アウトプット」のベースとなる「インプット」のノウハウについてもお伝えしたいと思います。まずは、「リスニングのコツ」についてお伝えしますのでお楽しみに。
(この記事は朝日新聞社の経済メディア『bizble』から転載しました)