■日本語のニュースから「自己発信ノート」の内容を探して英語にしてみよう
こんにちは。今回のレッスンから、朝日新聞デジタルの日本語、英語の記事などを参考に、皆さんの「自己発信ノート」に入れるべき例文を、参考として私から紹介します。その上で、あなたの自己発信に使う、単語、表現のブラッシュアップの仕方を学んでいきましょう。
外国人と話すときは、世界で起こっているニュースをビジネスの合間のネタにすることが効果的です(これはbizbleでパックンと私でやっている「これだけは知っておこう世界のニュース」でも提唱していますので、その内容も参考にしてください)。
今回は、アメリカ・メジャーリーグで大活躍中の大谷翔平選手の話題を取り上げます。
アメリカ人相手のビジネスにはもってこいのネタだと思います。大谷選手は7月8日、ついにメジャーリーグの日本選手のホームラン記録保持者松井秀喜氏の31本の記録を破りました。その際の、松井氏のコメント(日本語です)が秀逸でしたね。私はこれを自己発信文に入れたいと思ったので、朝日新聞の英語版の英語も参考に下記のように作ってみました。
これらを基に、自己発信文を作ります。
このように、選んだ題材の文章を少し加工するだけで、自分の意見を表す立派な文章が完成します。「日本語」を起点に、自分が外国人に言いたいこと探し、それに見合うテキストの英文をまず比較してみましょう。もちろん、言いたい日本語をすぐに英語で言うことができないこともあるでしょう。
私がこのコラムで提唱しているように、「英文テキストはアウトプットの材料箱」として使うと、英文はほとんどネイティブの使う英語になっているので、まずはテキストの英語を自己発信文に入れてみましょう。
テキストの英文をフル活用して、そこにyou know(上記①)、I think(上記②)、I hope(上記⑧)などを頭に持ってきて、あたかも自分の意見のように活用するのです。
■英単語の「言い換え力」を身につけて、「表現力」をアップさせよう
次に、あなたの英語のレベルと、実際に英語テキストで使われている英語のレベルが乖離(かいり)している場合の対応についてお話します。
たとえば、自己発信文の日本語③の「常識を変えた」は、この英語テキストでは、「exceeds what is considered conventional」とかっこいい表現になっています。
conventionalは、「型にはまった」とか「平凡な」といった意味ですので、それを「越えた」としてexceedを使っています。どちらも、難易度の高い単語ですので、どちらも難しければ、「常識を変えた」とは、何を言いたいのかを考え、意図を伝えるために「想像を超えて表現できない」という意味の「beyond description」とか、「想像できない」という意味にして、「unimaginable」もあります。
「changed the common sense」と直訳してしまうと、相手に通じないことはないでしょうが、何を伝えたいのかを考えるのが大事だと思います。このように、「日本語脳」を働かせながら、いろいろなバリエーションを作ってみましょう。
次の、日本語④の「唯一無二の存在」は、テキスト記事では「there is no one else like him」となっています。この表現なら、そのまま使えそう(レベルに合っている)という方は、是非そのまま自己発信ノートに入れていただき、ちょっと難しいなと思う方は、たとえば別途辞書で調べて「the only one」、「one and only」「unique」とかにしてもいいと思います。
とにかく、大事なことは自分の言いたいことを相手に伝えることです。皆さんのレベルに応じて、とにかく伝えることを目標にしていきましょう。
⑤の「夢を背負う」の、「背負う」は、目的語が何かによりますが、夢「dream」なら「carry」。責任「responsibility」やリスク「risk」なら「take」。大谷選手がメジャーリーグ球界を背負うなら「lead the major-league baseball」とも言えます。
⑦「乗り切って」は、英語テキストでは、「continue his success」として「成功が続きますように」との思いを伝えています。
「乗り切る」の直訳、「survive」をつかって、I hope he will survive the home-run race.でも伝わると思いますが、前者の方が、調子のよさを継続してほしいという想いがでます。「乗り切る」を「乗り越える」と考えてovercome the difficultiesまで言えると、表現力の幅が広がると思います。
また、⑨の「楽しみにしている」も英語テキスト記事では、相当言いたいことを深掘りして、I can’t wait to see what he is able to do next.としていますが、もちろん、「I look forward to his success.」や「It is my pleasure to see his success.」でもいいです。
■「オリジナル単語帳」で、アウトプットの可能性を広げよう
このようにして、自己発信ノートに英文を落とし込み、そこから、自分がまだ発信できそうにない単語だけを抜き出して、あなただけの「オリジナル単語帳」を作ることをおすすめします。
それはあなたが、新たなアウトプットの可能性を広げる、あなたのレベルアップのために使わなければならない単語、表現で構成されたものです。
また、前回のレッスン4でお願いした、あなたが持っている市販の単語集で、日本語から英語に言い換える中で、日本語からは発声できなかったが、英語を見れば知っていた、つまり脳の中では覚えていた単語も入れてください。それらも、あなたのアウトプット力を向上させるために必要な単語だからです。
繰り返しますが、大事なことは、これらはあなたが発信したいと思う単語に限られていることです。
これが市販の単語集との大きな違いです。前のレッスンでも強調しましたが、私は人間の脳に収容できる単語の数には限界があると考えています。ビジネスの本番で必要な単語を瞬時に取り出すには、自分の脳を絶えず新鮮な状態にしておくために、ゴミや垢(あか)となった単語を、脳の同じ場所に置いておかない工夫が必要なのです。
この「オリジナル単語帳」は、あなたにとってこれから必要な単語だけが選び抜かれたものです。これらを優先的に覚え、アウトプットに使用していくことで、目に見える形であなたのビジネス本番での英語力があがるはずです。市販の単語集には、あなたが必要のない単語が多く含まれているのです。
今回のレッスンを踏まえた「オリジナル単語帳」のイメージは下記のとおりです。参考になれば幸いです。
また、「表現力」アップに重要な「言い換え力」を鍛えるため、以下の10の単語(日本語)を思いつく限りの英単語に変えて、次回レッスンまでに書き出して、あなたの「オリジナル単語帳」に入れてみてください。それぞれ最低3つの英単語が考えられますよ。回答例は次回お伝えします。
① すばらしい
② 重要な
③ かしこい
④ 上手な
⑤ 正確な
⑥ 完全な
⑦ かなりの
⑧ 有名な、著名な
⑨ 率直な
⑩ 決定的な
次回は、今回のレッスン内容をベースに、より実践編に移り、「表現力」をさらに高めるための「パラフレージング」の練習方法について、お伝えします。
(この記事は朝日新聞社の経済メディア『bizble』から転載しました)