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1つの日本語からいくつの英単語が言えますか? ターゲットを洗い出してアウトプット

世界でビジネスをするための外国語習得術 更新日: 公開日:

■日本語訳で予習してから英語を読むと、吸収力が上がる!

こんにちは。3回目のレッスンでは、英語学習者にとって、「正しい日本語訳」があふれていることを最大のアドバンテージにして、積極的に活用することをおすすめしました。

皆さん、これまでの3回のレッスンで、「自己発信ノート」を作成いただき、その内容も徐々に充実してきていることを期待していますが、同時に、これまで「インプット」中心で、「アウトプット」をあまり意識していなかったため、独力でアウトプットすることに、日本語ですら難しさを感じている方も多いのではないでしょうか。

前回のレッスンで、英語のテキストは、日本語を左、英語を右に置くようにとお願いしたと思いますが、これからは、この左にある日本語の文章そのものを、自己発信に入れられないか、そういう視点で探してもらえないでしょうか。

テキストは、漠然とインプットするものではなく、あなたがアウトプットするための「材料箱」なのです。

私の提唱する「日本語脳」を基軸とした外国語学習の場合、日本語を外国語にするのが簡単ではない、あるいはどうしても外国人が使わない英語になってしまうのではないかとの懸念もあるようですが、英語テキストの日本語訳を逆利用することで、元のネイティブ・イングリッシュに出会うことになるので、心配は無用です。

そして、もし、上記部分を自己発信したいと思えば、英文の冒頭に、まずは、「I think...」 「I believe...」のカタチで使用し、少しレベルアップできれば、「In my view...」「In my opinion...」なども使ってみると、それだけで、外国人と話す際の意見交換のスタートとしては十分合格点になると思います。

また、このように「日本語ファースト」で、「日本語脳」を回転させて、日本語の全訳を予習してから英語を読むと、受容力、吸収力が英語を英語のまま見るよりも格段にアップすることに気づかれるのではないでしょうか。

改めてポイントを整理すると、

①英語学習する題材は、自己発信に役立つものを選ぶこと

②選んだ題材はできるだけ有効活用して、日本語脳を回転させながら、英語を受容、吸収し、自己発信に結びつけること

――の2点です。是非やってみてください。

■もう「アウトプット」なき「インプット」はやめよう

さて、これまで、私は「アウトプット・ファースト」を提唱してきました。

すなわちこの考え方を徹底すれば、「アウトプット」する内容の日本語に見合う英語しか「インプット」しなくなるので、理論的には「インプットとアウトプットの量は乖離しない」ことになります。

私が、アラビア語で成功したのは、エジプトでの語学研修中に、「アウトプット・ファースト」の環境を余儀なくされたからだと述べましたが、逆にこの考え方を、ビジネスパーソンの英語の学びなおしに当てはめると、どうなるでしょうか。

皆さんの多くは、中学、高校、あるいは大学ですでにインプットがたくさん入ってしまっている状況です。そう、「インプット過多」の状況なのです。そして、おそらく皆さんは、英語をやり直そうとすると、またさらなるインプットをしようとするのではないでしょうか。

この「インプット・ファースト」の勉強法はもうやめましょう。インプットすればインプットするほど、インプットとアウトプットが乖離(かいり)して、英語ができなくなりますよ。

なぜか。人間の脳には収容できる単語の数に限界があるからです。私は、普段からよく使う単語は脳の上層部にあり新鮮な状態を保っていますが、普段使わない単語は脳の奥底にゴミとなって沈んでいるか、壁にアカとなってへばりついていると考えています。

(アウトプットを伴わない)インプットが多すぎると、使えるアウトプットが出来なくなるのです。これは、私が数々の通訳や外交交渉をやってきて実感していることです。

■中学、高校、大学…。インプットしすぎた英語をやり直すには?

それでは、インプットしすぎた英語の場合は、どうやり直せばいいのでしょうか。

市販の英語のテキストは、インプットを前提としており、しかもそれらはどれもアウトプットできる前提で書かれています。しかし実はアウトプットできていない状況で、インプットをさらに上乗せする形で勉強しても、インプットとアウトプットの差がますます開くだけなのです。

他方で、私の提唱する「アウトプット・ファースト」の学習に切り替えようとしても、中学、高校、あるいは大学と多くの単語をアウトプットなしにインプットしてしまった後では容易ではないのも事実です。

いったん覚えてしまった(インプットしてしまった)単語を無理やり忘れることもできません。そうであるなら、いったん「インプット」してしまったすべての単語の中から「アウトプット」することのできる単語だけを取り出すことができれば、新しい、そして、「インプットとアウトプットが乖離していない」正しいスタートラインに立てると思います。

あなたの脳の中にはすでに「インプット」されてしまった単語、熟語、表現があるはずです。その中で実際に脳の中で生きていて「アウトプット」できる単語を洗い出しましょう。

私が、「日本語脳」を駆使してアラビア語で成功した経験から言うと、日本語を聞いたり読んだりした後、すぐに正しい英語を発声できた単語は、必ず「アウトプット」(外国人に使わなくても、自分で発声)したことがある単語、逆に出てこなかった単語はそもそも知らないか、勉強(インプット)して知ってはいたが、実際に自分の口から出したことはない、つまりアウトプットしたことのない単語に分けられました。

そして、私は「知ってはいたが、発声できなかった単語」については潜在能力のある単語ととらえ、次からは「アウトプット」できるように意識的にその単語を使っていくようにしました。

■「小さい」を英語で言い換えてみると? いくつの単語が言えますか

まずはあなたがこれまで使用してきた、あるいは現在使用している市販の単語集、熟語集を用意していただけますか。

かならず英語が左、日本語が右にあると思いますが、あなたはこれまで、左にある英語の単語を見て、右の日本語の意味を確認する、あるいは覚えることが多かったと思います。これからは、「日本語脳」を強化するため、右の日本語から左の英語をどれだけ言えるかという作業を行ってください。

日本語を見て、英語を言うことがいかに難しいかがわかると思います。それは、これまで英語でインプットばかりしてきて、「日本語脳」を回転させたアウトプットをしてこなかったからです。

たとえば、「小さい」を英語で言い換えてみましょう。

皆さん、small, littleはすぐに口から出てくるのではないでしょうか。ほかには、何が出てきましたか。minorとか tinyは出てきましたか。minor changeとか、tiny shoesとか言いますよね。

もし、あなたがminor、tinyを知らなくて口から出てこなかったのなら問題ありません。それはインプットとアウトプットが乖離していない証左だからです。

ただ、もし英語を聞けば知っているよということなら、minor、tinyは、あなたがこれまでにアウトプットしたことがない単語である可能性が高いと思います。

そうであれば、それらの単語はアウトプットの潜在性があるので、もったいないと思います。このような考え方で、あなたの現在使用している市販の単語集で、

①日本語から英語に発声できた単語

②日本語からは発声できなかったが、英語を見れば知っていた、つまり脳の中では覚えていた単語

③英語を見ても分からなかった単語

――に分類してみてください。

そして、ここで大切なのは、②の日本語からは発声できなかったが、英語を見れば知っていた単語です。これらの単語こそが、あなたにとって、これから「インプット」と「アウトプット」の距離を埋めるためのターゲットにすべき単語なのです。

これらの単語は、現時点では「アウトプット」できなくても、見れば覚えていたということは、それを口頭で使える、つまり「アウトプット」してビジネスで使える可能性が、まったく知らない単語よりはるかに高いと思います。

そしてターゲットが決まったらそれらの単語を、実際に口に出して使っていきましょう。このような作業をしていけば、あなたの英語の「インプット」と「アウトプット」の乖離は徐々に縮まっていくと思います。

これはなかなか骨のおれるプロセスでありますが、我慢してやっていただきたいと思います。そうでないと、結局、さらなる「アウトプットなきインプット」を増やすだけになり、これまでと変わらないままとなります。

次回は、これらの単語を整理するための「オリジナル単語帳」作成の必要性とその作り方のコツをお伝えします。

私のコラムを楽しみにしていただきありがとうございます。よごさんは、すでに短い文章では意思疎通ができているとのこと、すごいじゃありませんか。ただ、長い文章が作れないとのことが悩みのようです。

しかし、そもそも、私は外国語に長い文章は必要ないと考えています。英語も他の外国語も短い文章の方が伝わりますよ。私は外務省で英語の国際会議や、相手国との交渉を行っていましたが、アメリカ人やイギリス人はネイティブだから、ペラペラ長い文章を話しますが、中には、結局何が言いたかったのかよくわからない方もいました。ネイティブだと逆に言いたいことをきっちり整理せず話すので、結局、何が言いたかったのか相手に伝わらないのです。

これは日本人が日本人相手にプレゼンするときも同様です。なので文章は、「伝えたいことを短く」、あえて加えればこれに「情熱をもって」話すことです。とは言っても、やはり長い文章を話したいという思いはあるでしょう。

でも、長い文章は、結局短い文章のつながりなので、今まで、短い文章が一つしか言えなかったら、短い文章を二つ続けて言えれば、中程度の長さの文章、3つなら十分長い文章ではないでしょうか。このあたりをよどみなく言えるノウハウは、私の今後のレッスンでも触れたいと思います。

次に、「前置詞の使い分け」に対する回答です。このコラムでも言ってきていますが、私たちはどうしてもインプット中心でした。「前置詞の使い分け」という問題も、インプットありきの勉強をしてきたからです。

たとえば、「look for」と「look into」の使い分けと考えると、「探す」は「for」で、「調べる」は「into」という覚え方になりますが、こういう覚え方が必要なのは試験対策だけです。実際に外国人と話すとき、「アウトプット」に大事なのは、「探す」ってなんていうの? 「調べる」ってなんていうの?――ということですよね。

そうであれば、「探す」は「search」か「look for」、「調べる」は、「examine」か 「research」か 「look into」となります。

こういう風に考えると、「look for」と「look into」を比較する、すなわち、前置詞の「for」 と「into」の「使い分け」という視点、概念はそもそも必要なくなると思いますよ。

(この記事は朝日新聞社の経済メディア『bizble』から転載しました)