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寄付をしない、「人助け指数」も最下位 そんな日本に言いたい「寄付は自分も変える」

World Now 更新日: 公開日:
ボランティアで働く女性のイメージ写真
写真はイメージです=gettyimages

「寄付で社会なんて変えられるわけがない」

今から10年ほど前、自分が設立したNPOの起業のストーリーをテーマにした講演をした後、聞きに来てくれた人からそう言われました。

このとき僕は10代の若者たちの「孤立」を解決するため、LINEで相談を受け付ける認定NPO法人「D×P(ディーピー)」を設立したばかりでした。

運営費を寄付でまかなう形にしたのですが、当時は寄付で成り立っているNPOは国連系の組織や外資系など指で数えるほどしかありませんでした。

冒頭の発言主はきっとそのような状況を分かっていて心配してくれたのだと思います。

そして現在。僕の団体は2千200人以上のサポーターさんたちから月額の寄付を頂き、その規模は1億円を超えました。スタッフも20人以上になりました。相談サービスである「ユキサキチャット」も利用者が増え、7000人以上が登録しています。

こうした運営経験から、寄付とは市民による大きな「資本」であり、政府や企業ができない仕組みや事業をつくることができると実感するようになりました。

例えば、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ユキサキチャットを単なる相談事業ではなく、食糧支援や現金給付事業にまで素早く変えることができました。

相談を受ける中で、「所持金が数千円しかない」という10代の訴えがきっかけでした。その子は独り暮らしで学費を自分で払い、親に頼ることもできませんでした。

僕たちはすぐに食糧支援と月1万円の給付をスタートさせました。昨年からの累計で支援した食糧は2万5千食以上、給付した現金は11月末で1千200万円を超えました。

こうした活動は与野党の議員や自治体の首長、そして国からも注目されるようになりました。まさに、寄付が社会の仕組みや事業を作っていく資本となったのです。

ただ、「寄付をしたことがない」という方も、まだまだ多いと思っています。世代にもよりますが、僕がツイッターで「NPOに寄付したことがあるか?」とアンケートをとったところ、5割以上の人が「寄付したことがない」という回答でした。「僕のフォロワーさんでさえ、寄付したことがない人も半数以上なのか」と驚いたことがあります。

一方、チャリティー機関「チャリティーズ・エイド・ファンデーション(CAF=Charities Aid Foundation)」は「この1ヶ月の間に、見知らぬ人、あるいは、助けを必要としている見知らぬ人を助けたか」「この1ヶ月の間に寄付をしたか」「この1ヶ月の間にボランティアをしたか」という三つの項目で各国を採点していますが、この「世界人助け指数」の総合順位で日本は最下位でした。

日本人はなぜ寄付をしないのでしょうか。僕がツイッターでアンケートしたところ、「どこのNPOに寄付すればいいかわからない」が31.6%と最多でした。

次に多かったのが「何に使われているのか不安、NPOに信頼性がない」で、28.9%でした。つまり、寄付をしたくても、信頼性や選択肢のわかりづらさが障害になっていることがうかがえます。

ただ、日本ファンドレイジング協会の調査によると、東日本大震災以降、個人による寄付額は増加してきているそうです。そのことを考えると、今後は寄付がもっと注目されていくのではないか、とは思います。

いつも思うのは「寄付は自分の意思で何を実現したいのか、選べるものなのに」ということです。

例えば、政府に税金を払っても、その使途に自分の意思をしっかりと反映させることは難しいでしょう。

確かに僕たちは税金の使途を決める政治家を選挙で選ぶことはできますが、選んだ政治家や政党が公約を実現しないことがありますし、そもそも投票した政党の「力不足」や、政策に反映されるまでが遅いという問題もあります。

この点、寄付は迅速でより直接的です。NPOなどの支援団体を通じて寄付金が子どもの貧困や教育、環境問題などに直接使われます。

団体のビジョンや方向性、課題解決の手法にもよりますが、寄付という行為は、自分のお金を直接投じることで、社会を自らの手で作ることだと、僕は思っています。

また、寄付は他の人を助けるだけではない、とも思います。自分の内面を知り、幸福につながるものだと考えています。

投資家で著名な藤野英人さんと対談したことが何度かありますが、こんなことを話していました。

「寄付をすることは損をすることではなくて精神論とかでもなくて、何かしらの幸福感というか、返ってくるものがあります」

藤野さんはこのとき、かつて勤めていたゴールドマンサックス(GS)のことを話してくれました。

「GSは、企業も社員もボランティアも寄付もする。それで個人で寄付をするということは自分の内的なものに向き合っている人が多く、そういった個人が集まる組織って強い」という内容でした。

本当にその通りだと思います。寄付は外に向けたもののようだけど、内なるものなのだと思っています。

寄付は一見、自分の手元からお金を離れさせます。そして、お金は返ってくるものでもありません。

ただ、それは自分の心や思想などが頭の中で産まれます。寄付先を選ぶ時に「子どもの時に不登校経験があって、NPOの人にお世話になった」「気候変動のニュースはよく聞いて関心があったし、何か行動したかった」「ペット飼っているし、猫を保護しているNPOに寄付したい」など、過去の体験からの関心や共感などを考えます。

自分の内なる関心があるのか、それとも関心がないのか。共感があるのか何もないのか、ないならばなぜ寄付をするのか、それを考える選択で自己との対話が産まれます。

寄付は面白いものです。人生を豊かにできるものだと思っています。単発だと小額の数十円単位や月額500円、千円からできます。

お金の使い方で自分の世界が変わっていくように、寄付することで自分の内面と向き合ったり、社会課題を知ることで世界観が変わってきます。何か、少しでも行動に起こせたら面白いかもしれません。