■最も権威ある賞 BTSは「目標」と公言
グラミー賞は、米音楽界で最も権威ある賞だ。全86部門あり、最優秀レコード賞、アルバム賞、楽曲賞、新人賞が主要4部門だ。
BTSは2018年にアメリカのテレビ番組で「グラミー賞が目標」と公言。19年にはプレゼンターとして招かれ、20年1月にはリル・ナズ・Xの「Old Town Road 」をほかのアーティストらと共にパフォーマンスした。韓国人アーティストがグラミー賞のステージに立ったのはこれが初めてだった。
コロナ禍で予定していた世界ツアーなどがキャンセルされた昨年、初めて全編英語詞の「Dynamite」を発表しヒット。米ビルボードのシングルチャートHOT100で初の1位を獲得し、グラミー賞の最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス部門に初めてノミネートされた。
受賞は逃したが、今年3月に開かれた授賞式では韓国からの中継で、単独パフォーマンスも披露した。
再挑戦の年となった今年は、「Dynamite」に続く英語曲の「Butter」と「Permission To Dance」の2曲を発表。コラボ曲なども含めて、発表した曲がいずれもHOT100で1位に。特に「Butter」は、通算10回の1位を記録した。
それだけに2年連続のノミネート、特に最優秀レコード賞と楽曲賞の主要部門で名前が挙がることが期待されていた。
■「白人優位」の選考批判、「インクルージョン」掲げて改革
グラミー賞は、チャートや投票など「人気」が重視されるほか音楽賞と違い、ミュージシャンやプロデューサー、エンジニアなど、全米レコード芸術科学アカデミー(NARAS)の1万人以上の会員が投票する。このため、チャート順位や人気より、芸術性やクオリティーを重視したものになると言われ、賞の権威に繫がっている。
一方、会員は白人男性が圧倒的で女性や有色人種が少ないことから、候補や受賞者にも白人男性のバイアスが色濃く、多様性に欠けた「白人男性優位」だという声は絶えなかった。
なかでも、候補者の選定は20人程度の匿名の業界人でつくる「秘密委員会」が行ってきていて、その不透明性が指摘されてきた。
前回のグラミーでは、昨年最も売れ、評価の高かったカナダの歌手、ザ・ウィークエンドのノミネートがなく、本人が今後はグラミー賞にエントリーしない「ボイコット」を宣言。同委員会の公平さに改めて疑問符がついた。
止まない批判を受けて、NARASは今年、「秘密委員会」の廃止を発表。「多様性とインクルージョン」を掲げて、選考プロセスを透明化すると宣言していた。
だがアジア人歌手のBTSの主要部門へのノミネートがなかったことで、ファンのARMYにとっては、グラミーは依然として「白人優位」の頭の固い賞だという声がネットにあふれた。すでにほかの音楽賞では常連となっていたBTSだが、グラミーのノミネートは英語曲を発表した昨年までなかったこと、また授賞しないのに視聴率のために放送では「トリ」にパフォーマンスさせるなど、「BTSの人気とファンダムを利用している」という不満も大きい。
今年「ビルボード・ミュージック・アワード」で4冠、「アメリカン・ミュージック・アワード」でも大賞の「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」を含む3冠を受賞したBTS。米3大音楽賞で受賞がないのはグラミー賞を残すのみだ。
グラミーが掲げる「多様性と包括」がどの程度のものなのか、という点でも初受賞なるかが注目される。