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CJグループを知れば韓流が見える 韓国ライターが語る「韓流の巨人」

World Now
映画「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ監督(右)と主演俳優のソン・ガンホさん

――CJグループとは、どういう会社なのですか?

1953年の創立当初は主に砂糖などの食材のみを製造していたのですが、今は食べる、着る、みる、楽しむといった私たちの日常の最も深い部分に関係する事業を世界中で展開しています。

――具体的にどういう事業をしているのですか?

まずは映画事業から説明します。「寄生虫」(『パラサイト』の原題)はアカデミー賞4冠を達成しましたが、ポン・ジュノ監督とは彼がまだ30代前半だった頃に協力関係を築いて、「殺人の追憶」(2003年)以降、制作を支援してきました。

――昨年のアカデミー賞授賞式で、作品賞の受賞スピーチをした女性はCJ関係者だそうですね。

同社副会長のイ・ミギョン氏です。日本では「この女性は誰だろう」という受け止め方がされたと思いますが、授賞式の会場にいた大物俳優や監督、映画関係者の多くは、彼女がスピーチすることを当たり前だという様子で聞いていました。それほど現地では認知されている人物です。ハーバード大で東アジアについて学んだ経歴もあり、約25年前に同社が映画事業を始める際の中心になった人物です。

「CJの考え」の著者、コ・ソンヨンさん=本人提供

――CJはなぜ製糖業から畑違いの映画業界に進出したのでしょうか。

CJは95年にスティーブン・スピルバーグ監督らが製作会社ドリームワークスを設立する際に3億ドルを投資しました。食品とまったく関係のない分野だったため、社内でも反対があったといいます。

CJグループ会長のイ・ジェヒョン氏と彼の姉であるイ・ミギョン氏は、サムスングループ創業者の故イ・ビョンチョル氏を祖父に持ちます。CJのトップらは、「文化がなければ国がない」という創業者の哲学を重視したと言われています。資源や内需に乏しい韓国にとって、食品だけ扱うのでは限界があると考えたのです。

3億ドルは当時のCJの年間売り上げの2割ほどで、決して安い買い物ではありませんでした。同社はドリームワークスが手がける映画のアジアでの配給権など(日本をのぞく)を手にするのですが、実はもう一つ大きな収穫を得ます。

――なんでしょう?

ドリームワークスから映画の配給、マーケティング、財務・管理などのノウハウに関して支援を受けられるようにしたのです。映画産業が当時、さほど発達していなかった韓国において世界最大のエンタメ大国から技術を学ぶことができたのは大きかった。イ・ジェヒョン氏とイ・ミギョン氏はドリームワークスとのやりとりを皮切りに、米映画界にどんどん食い込んでいきます。

ポン・ジュノ監督が指揮を執った映画「パラサイト 半地下の家族」からⒸ2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A

――その結果、25年近い歳月の後に「パラサイト」で結実したというわけですか?

韓国映画が築いた一つの節目としてはポン・ジュノ監督の前々作にあたる「スノーピアサー」(14年)も忘れてはいけません。クリス・エバンスといった大物俳優を起用し、撮影も海外で行われました。CJが中心となることで、当時の韓国映画史上最大の450億ウオンが投入された「グローバル映画」ができあがったのです。

――この映画にもパラサイト同様、ソン・ガンホさんが出演していました。

ポン・ジュノ監督とは「殺人の追憶」以来のコンビですね。巨額の制作費のほかにも注目すべき点がありました。それは、ソン・ガンホさんらによる韓国語のセリフです。

映画公開の前に、PSY(サイ)さんによる韓国語の歌「江南スタイル」が世界中で大ヒットしました。映画での韓国語のセリフはそれほど多くはありませんでしたが、「自然だ」「新鮮だ」という受け止められ方をしました。他の文化圏に入っていく際に言葉や慣習が受け入れられるかどうかは大事です。歌と映画、この2つのエンタメ分野に韓国語が進出した意味は大きかったと思います。

BTSのメンバー=Big Hit Entertainment提供

――CJは音楽事業にも力をいれていますね?

系列のCJ ENM主催のMAMA(Mnet Asian Music Awards)という音楽の祭典を09年以降、マカオや香港、日本など海外中心に開いています。特徴はK―POPだけでなく日本や米国、中華圏、その他アジアの国・地域のアーティストも参加し、オンラインとテレビ放送を通じて世界に発信される「アジアの音楽祭」だということです。そして、同社が行っているもう一つの祭典にKCONがあります。

――どのようなイベントですか?

Kは「韓国的な」、Cは「コンサート、コンテンツ、コンベンション」を意味します。12年に米国で初開催した時は「4Minute」ら人気アーティストが出演しました。さらに会場では、K―POPアーティストを指導した専門家からダンスを教えてもらえたり、韓国人シェフからビビンパの作り方を教えてもらったりできるほか、韓流スターの身につけていたファッションや化粧品も手に入ります。いわば韓流の「まるごと体験」ができるのです。当時私が取材したCJ関係者は「50代の白人がトッポッキを食べながら韓流男性アイドルの歌に合わせて躍っている様子に衝撃を受けた」と語っていました。

――BTSも出演したと聞きました。

そうです。14年のロサンゼルス会場でBTSが登場します。同じ出場者の中でも「少女時代」やドラマなどでも活躍する「IU」(アイユー)に比べて、デビュー間もない新人グループに過ぎませんでした。それでも聴衆はBTSのパフォーマンスに大熱狂でした。

――なぜ出場させたのでしょうか?

CJは中小事務所のアーティストや新人にも積極的にチャンスを与え、海外ファンへの認知を高めようとしました。KCONに関する同社の資料によると、2014年の参加者は4万人以上で、25歳以下の年代が8割以上。人種別にみるとアジア(44%)、ヒスパニック(23%)、白人(18%)、アフリカ系米国人(6%)と様々です。

メキシコや日本などで開催された17年は参加者が計23万人以上に膨れあがりますが、若者中心に様々な人種の人たちが足を運んでいる点は同様です。

――CJはまさに「韓流の巨人」ですね。

韓流発展の影の立役者であることは間違いありません。CJ会長のイ・ジェヒョン氏はエンタメに乗り出した当初、「世界中の人たちが年に数本は韓国映画を見て、月に何度かは韓国料理を食べ、週に何度かは韓国ドラマを、そして毎日K―POPを聞くようになれば」と語ったとされます。実際、「寄生虫」などの影響で、キムチなどの韓国食品が海外で人気だというニュースもあります。当初、「夢」だった言葉は年々、現実味を帯びてきていると言えます。