チャットサイトは「D-Agree(ディー・アグリー)」。ITベンチャー企業「AGREEBIT」(名古屋市、桑原英人社長)と、同社CTOの伊藤孝行氏が研究室を持つ京都大と名古屋工業大、科学技術振興機構が共同して開発した。
大勢の参加者が議論し、多種多様な意見をAIのファシリテーターによって適切な合意形成につなげることを狙ったシステムだ。
開発には、伊藤氏の教え子で、名古屋工業大大学院博士課程で学ぶアフガニスタン出身のジャワド・ハクビンさんが関わっていたことから2020年2月、彼のつながりでアフガン人若者をユーザーとする実証実験を開始。現在は10代後半から20代の男女約1万人が参加するまでになった。
ユーザーたちは英語ができ、女性の参加も多い。桑原社長は「アフガニスタンでは女性の権利が抑制されてきた過去があり、このシステムを使えば女性でも平等に意見が表明できることを試したかった」と話す。
当初は首都カブールの行政課題などについて意見を出し合っていた。状況が変わったのは4月。アメリカのバイデン大統領がアフガニスタンの駐留軍を9月までに完全撤退させるとのニュースが流れ始めたからだ。
桑原社長とハクビンさんは、このシステムを使ってアフガン人の思いを世界に発信しようと決意。8月1日、テーマを新しく「アメリカ軍がアフガニスタンから撤退することについてどう思いますか?」としてアフガン人による議論を始めた。
議論はそれまで限られたユーザーしか見られなかったが、誰でも閲覧できるよう公開に踏み切った。
意見の多くは撤退に反対で、次のような意見が相次いだ。
「アフガニスタンの治安部隊は他国から支援を受けているタリバンに対抗するには十分ではない。アメリカ軍は撤退すべきではない」
「私たちは自力では立てない。国際社会の支援が必要だ」
タリバンが各州を次々と支配下に置く状況が明らかになると、タリバンに対する不安や恐れを明かす意見が増える。
そして8月15日。首都カブールにタリバンが入り、事実上政権が崩壊すると、アメリカや政権への批判は強まり、タリバンに対する反発の声も出始めた。
「アメリカ軍撤退は失敗で、タリバンにアフガニスタン全土を制圧する口実を与えた」
「アメリカ軍の撤退は無責任だ」
「ガニ大統領は私たちの将来をテロリストに売り渡した」
「アフガン人はタリバンを信じているかって?答えは絶対ノーだ」
「アフガン人は2001年、タリバンを完全に拒絶した。そしてそれは今も変わらない」
さらには、女性の権利を厳しく制限するなどした過去を持つタリバンへの不安や恐怖を訴える意見も目立つ。
「壁に女性のポスターを描いていたカブールの美容院が今日、タリバン体制を受け入れる準備をしている。悲しい光景。自己検閲」(店主とみられる男性が女性の絵を塗りつぶしている写真が添付されている)
「今のアフガニスタン、特に女にとって安全ではない」
「自己検閲が始まった。タリバンを批判すれば起訴され、アメリカを批判すれば入国拒否、送還される。批判できるのは元政府高官やガニ大統領だけ」
一方で、前向きな意見もみられる。
「アフガニスタンの女性たちは今やとても勇敢で教育という名の武器を持っている。タリバンはその目的を達成できないだろう」
「アメリカ軍が永遠に駐留することはできない。私たち自身が団結し、国の将来を決めないといけない」
桑原社長は次のように話す。
「タリバン支配の時代の影響もあって、アフガニスタンの人たちは色んな事に不信感が強まってしまった。例えば議論でも、いくら偉い人がファシリテートしても信じない。私たちのツールを使ってもらったところ、『むしろ日本のAIの方が信用できる』と言われ、アフガニスタンでさらに色んな用途を模索していた。そんな矢先、タリバンが全土を掌握するという事態になってしまって…。D-agreeは合意形成のためのもので、民主主義を支える技術。なのでタリバンがコントロールする状況で導入が進むのかどうか不透明です。だからこそ、逆に今の議論を世界に見せて、若いアフガン人がどんな気持ちでいるのかを知ってもらえたらと思っています」
意見は今も続々と書き込まれている。
主な意見は次の通り(英語は原文のまま。一部抜粋もあり)。
「1970年代が繰り返される」(8/4)
The 1970s will repeat again!
Unfortunately, Afghanistan will go to a black hole and the 1970 decade will repeat again and the number of Afghan migrants will increase around the world mostly in neighboring countries. I think the real culprit of this situation is Afghans, because they do not have any compatibility among each other in any situation and condition even today. In short I want to declare that 1970s will repeat and there will be more war and misery.
thanks
「国際社会の支援が必要だ」(8/7)
We need yo stand on pur foot however we need support from international society.
「女性は勇敢。教育という武器ある」(8/12)
(中略)...In short withdrawals of US troops has to be delyed as this was not a proper time for them to leave on the other hand taliban will not accomplish their goals as womens and people are now braved,well educated and well equipped with the weapons of education
So they well never let taliban and enemies to destory their lives and hops
We can seen the brutality of taliban and a pictures bellow
Best regard
Wahidullah
「国民は2001年、タリバンを拒絶し、今もそうだ」(8/17)
we Afghan people totally rejected Taliban in 2001 and now do it as same as 2001.
ガニ大統領はテロリストに未来を売った(8/17)
This is very says. Dead to Ghani and its is corrupted team. he sold our future to a terrist group
「壁に女性のポスターを消している。自己検閲が始まった」(8/19)
Under siege scene of Kabul
My Afghan friend posted this on Facebook that under siege scene of Kabul. Man painting white poster of woman on a beauty Saloon wall today preparing to embrace the Taliban regime. In fact a sad moment.
It means self-censorship is started in Afghanistan.