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コロナ時代のアメリカ 若者の出会い、恋愛、デート事情は?

働くママのシリコンバレー通信 更新日: 公開日:
イラスト:tanomakiko

元気がとりえの知り合いの30代前半男性、とうとうコロナにやられました。執筆時点でアメリカでは12人に一人程度が感染している状態で、私の親戚、知り合いの中でも無症状も含めて陽性判定が何人もでています。

私の子供が通う中学校はまだ再開されておらず(もうほぼ1年学校に行っていません)まったく友達に会わないのも精神的に参ってしまうので、人数限定の「ソーシャルバブル」友達が数名います。その定期的に会う数少ない友達の一人が、久しぶりに会った親戚から感染してしまい、私たちも期間をあけて2回PCRテストを受けて陰性確認したところです。感染者数は減少していますし、ワクチン接種も始まりましたので、もう少しの辛抱!と言い聞かせて過ごしています。

驚きの感染理由

もはや感染自体はさほど珍しくは感じないのですが、驚いたのがその彼の感染理由。「誰からうつったの?」「Hookup (フックアップ)の相手と…」。このコロナ禍の最中に!でもまあよく考えてみるとコロナだからといって若者が(若者以外も)デートの相手探しを停止したわけではないでしょうし、一人暮らしの場合、外出自粛、学校はオンライン、もしくは在宅勤務の状態が長く続いているので生活に変化をつけたかったり、孤独を感じ誰かと一緒にいたい感情が湧くこともあるでしょう。

スラングのフックアップ、意味もさまざま

さて、この「フックアップ」ですが、会う、遊ぶ、接続する、紹介する、など幅広い意味合いがあります。彼が言うところのフックアップは初対面、もしくは知り合って間がない相手と、親密に体を寄せ合ったり、キスしたり、ときに一夜限りの関係になった、というニュアンスのスラングで、ある晩キスした女性からばっちりと感染してしまったそうです。イチャイチャ行為も入るので必ずしも性行為に及ぶとは限りません。フックアップに至る主なきっかけは、スマートフォンの位置情報を使ったデートアプリの Tinder (ティンダー)などのユーザー同士、大学構内で出会った相手、友達の友達、パーティや飲み会の後などです。告白し、恋人となり、映画や食事などのデイトを重ねてお互いの信頼を深めていく、というステップをすっ飛ばした単発的な関係で、例え同じ相手と複数回そういう行為があったとしてもRelationship (恋愛関係)とは違います。知り合いの大学院生は、「フックアップがきっかけで後にカップル(恋人同士)なることも結構あるかなあ」と言っていて、恋愛の始まり方は時代や世代によってさまざまな、と実感します。

在宅健康検査キットを手がける、Everlywellがアメリカの都市部に住む20-30代のアメリカ人を対象とした調査によると、1回目の不要不急の外出を控えるロックダウンになり緊張が高まっていた去年の4月、自宅待機命令無視してフックアップしたその割合、四人に一人。Everlywellは自宅でできる新型コロナ検査キットを販売しているスタートアップです。結構な割合に驚きます。周囲に聞いても、「うん、そんなもんじゃない?」との反応。画像はEverlywellのスクリーンショット。

コロナ禍での新しい出会いはいかに

同じ物理のクラスを受けていた同級生だった、図書館で偶然隣に座った、犬を散歩していたら犬同士が遊びだして親しくなった、友達の誕生日パーティで出会った、といった自然に新しい人に出会う機会が激減したパンデミック以降、どうやって相手を見つけているのでしょうか。私の周囲の20代に聞いてみました。

• 相手をマッチングするデートアプリBumble (バンブル)などを利用
デートアプリはパンデミック前からも幅広く使用されていました。バンブルは女性からしかメッセージが送信できず女性主導型なのが特徴で、女性たちの地位向上を訴えるチャレンジが続く今の時代の流れに寄り添ったデートアプリで、米株式市場に最近上場しました。「ティンダーだとフックアップ目的の相手に会う確率が高まるから、バンブルを使っている」と、男女ともに言っていました。

• Animal Crossing(あつまれ どうぶつの森)で出会う
家にいることを強いられた直後は、無人島に移住して動物たちと暮す任天堂ゲームのAnimal Crossing(あつまれ どうぶつの森)が世界的にブームとなりました。もともとは友達だったけれども、夜な夜な動物たちと長時間遊んでいるうちに距離が近くなりカップルになったパターン。パンデミック前も、ゲームを通じて出会い、結婚に至ったカップルが私の周囲でも割と多くいますが、「あつまれ どうぶつの森」がきっかけで早くも結婚に至った人を知っている人もいました。

• Discord(ディスコード)のコミュニティで
ボイスチャットサービスのDiscord(ディスコード)のコミュニティで話をするうちにカップルになるケース。ディスコードは、もともとはゲーマー向けのゲーミンググループのボイスチャットサービスですが、現在では同じ目的を持ったコミュニティや友達同士でグループが形成されたり、オンラインイベントでは副音声風に裏で感想を話し合ったりと、幅広く利用されています。同じ授業の受講者の勉強会、出身高校の同窓グループ、アート、株の情報交換(ゲームストップ株騒動の際にもディスコードコミュニティが株価急騰に大きな影響を与えました)、また、日本語を勉強しよう、といった目的別のおしゃべりコミュニティもあります。

Slackが企業、組織に利用されることが多くテキストのチャットがメインなのに対し、ディスコードはボイスチャット機能が充実し、共通する興味、目的、バックグランドを持つ者同士が、さまざまな意見交換を行うオンライン集会に使用しています。画像はディスコードのメディアキットの中から、勉強会で使用されている例。

• オンラインイベントで 
Zoomなどで実施される自分の趣味のオンラインイベントで、参加者の中でいい感じで発言している女性がいて、その場では連絡先は交換しなかったけれども、SNSでアカウントを見つけて連絡した。

• 単なるルームメイトだった人が、ずっと家にいる間に単なるルームメートでなくなった。
前述のEverlywellの調査によると、その割合は、20-30代のアメリカの都市部に住む若者の15%に該当するそうです。映画#MyCorona(マイコロナ)では、同じアパートで隣同士が住む住民たちが親密になりカップルになる様子が描かれています。

映画#MyCorona は、撮影現場と監督とをビデオで繋ぎ、監督が一度も役者たちと会うことなく遠隔で指示し撮影されました。

私が住む15世帯のタウンハウスにはそれまで誰が住んでいるかほとんど知りませんでしたが、今では名前と顔が一致するようになりましたし、金曜日の午後には仕事を早々に切り上げて外のガレージで一緒にワインを飲むこともあります。日本も規制はありますが、そうは言ってもデパートが開いていたり、カラオケができたり、時間帯が限定的であってもレストランの屋内で食事ができたり、学校があったり、会社に通勤したり、社会がある程度機能しているのと比べて、シリコンバレーではエッセンシャルワーカー以外は今も自宅勤務の人がほとんどで、その状況はほぼ1年続いているわけです。ルームメートや近所との距離が近くなったのは、コロナ「あるある」ではないでしょうか。

コロナ禍でのデート対策

どれも出会いはオンライン上ですが、ビデオ通話やメッセージのやりとりを経ていい感じになり、変質者でもなさそうで、「実際に会いましょう」となったときには、以前は考える必要がなかった感染リスクについて考えなければなりません。デート感染予防対策や新しいスタイルをそれぞれが模索しながら、それぞれが安全と思う自分のレベルに合わせて工夫しています。感染対策を怠った場合、前述の男性のように運が悪ければ感染してしまうこともありますし、大学の授業がオンラインとなり、大学の寮やアパートから実家に戻った大学生は、高齢の両親との同居となり、感染には人一倍気をつけている、という声は多く聞かれました。ビーチを女の子と散歩して、別れ際、いつもの習慣でハグしてしまった男の子は、家に帰ってから心配になり、翌日PCR検査を受けていました。結果が出るまでの間、同居している両親とは家の中でマスクをして隔離生活をしたとのことです。

デートはビーチにいく(晴天の日はビーチも結構混んでます)、公園に行く(芝生の上でおしゃべりしたりピクニックしたりします)、ハイキングする、サイクリングする、などが多く、アウトドア派でない若者たちも外に出かけていくしかない感じです。自分が安全と考える感染予防レベルと相手が思うレベルにズレがあると、その時点でうまくいきません。レストランはアウトドアダイニング(店外飲食)が再開されましたが、先方はパーティーアニマルで大勢と接触しているかもしれません。相手の生活スタイルがよくわからないまま外のカフェでお茶するのも抵抗がある場合もあれば、お酒を伴う食事をするのも全く平気なヒトもいます。これから恋に落ちるかもしれない相手に神経質過ぎと思われたくない、根掘り葉掘り聞くことにも躊躇することもあるでしょう。

一方で、PCRテスト結果のスクリーンショットをお互い見せ合ってから会った、というケースもあります。相手と自分の身を守るためですが、この辺りの意識が同じかそうでないか、というのも最初にぶつかる価値観の基準確認なのかもしれません。相手の出方をうかがいつつ、空気を読みつつ、リスクを冒して会う価値がある相手かどうか…。コロナ前にはなかったハードルですね。

シリコンバレーではエッセンシャルワーカー以外は今も自宅勤務な人がほとんどで、この状況になってほぼ1年になります。カルトレインは朝夕のラッシュ時でも、いつ乗車してもいつもこんな感じです。パンデミックの前は椅子に座っている人はほぼ全員ラップトップを開いて、一心不乱にせっせとコーディングしながらSlackしている風景がみられていました。カルトレインの財務状況が気になります。廃線になりませんように!
サンフランシスコ・シリコンバレーでは、去年12月から続いてた2回目の外出禁止令が解除され、アウトドアダイニングが解禁。寒波や大雪に見舞われることがない当地では、お天気の週末になるとかなり盛り上がっています。感染がこれ以上広まらないかは心配ですが、この盛り上がり方は心理学的に「コロナはもうなかったことにしたい。」という気持ちが働いているそうです。個人的には大勢での飲食にはまだ抵抗があり参加していませんが、その気持ちはわかる気がします。