新学年が始まる直前、ギリギリの決断
アメリカでは8月中旬から9月初旬にかけて新しい学年が始まります。私が住んでいる市では、11月半ばまでのディスタンス・ラーニング (オンラインでの授業) が新学期開始直前になって決定しました。
市と言っても公立の小学校が6校、中学校と高校が1校づつある日本で言うと区のような規模で、それぞれの市に教育委員会があり方針が決定されます。授業はすべて夏休み後も引き続き対面ではなくオンラインで遠隔実施されることになったのです。
日本、ドイツ、台湾など、学校が通常通り再開されている国もあるし、アメリカでも場所によっては、リモートと登校しての授業を組み合わせた「ハイブリット」で進めるところもある中で、うまくいっているエリアもあるように見えるのに、どうしてこうなってしまったのだろうと、あまりに先に感じられる11月という決定に心が沈みました。シリコンバレーのある学区では早々に来年1月までオンラインと決定したところもあります。
日本ではコロナで休校した遅れを取り戻すために夏休みが短縮され、早々に新学期が始まったところも多いと思います。最短では9日間後の学区もあったとか。サンフランシスコ・シリコンバレーではほとんどの学校が3月半ばから学校閉鎖、ディスタンス・ラーニングと移行し、6月半ばにはそのまま長い夏休みに突入しました。私たちの学区でいえば、11月半ばまで最低でも8ヶ月は学校に登校しないことになります。
実際にサマーキャンプ(日帰りのデイキャンプが低学年のうちはほとんどです)で、参加した子供たちやスタッフの間でクラスターが発生した例があることや、子供たちの安全のため、また、先生方の根強い反対があったのは十分に理解できるのですが、子どもは会える友達の人数も限定的だし、自由に大勢の友達と遊ぶこともできない状態。ずっと家にいることもあってガラスの十代という多感な時期に入りたての娘と私との親子喧嘩も絶えません。子供の精神的なストレスもそろそろ限界な気がしています。
ハイブリットかディスタンスラーニング・オンリーか? それぞれの家庭の決断
私の学区では一部対面授業にするハイブリット登校を想定し、少人数の生徒を対象に2週間の夏期講習を通じてのシミュレーションが夏休みに実施されました。そのような背景もあって、ギリギリまで「新年度からはハイブリット」の希望が捨てきれませんでした。
生徒をグループ分けし、登下校する入り口や時間帯を完全に分け、校庭で遊ばせる時間帯をグループごとに調整し、他のグループに交わらないようにするスケジュールが組まれました。午前組、午後組の小さいグループに区分する予定で、万が一クラスターが発生したとしても拡大を最小限に抑える工夫を盛り込んだ練習でした。
状況が大きく変わったのが、私の住んでいるカウンティ(郡と訳されることが多いです)がコロナウイルスの感染者が顕著に増えている「モニタリングリスト」の対象になったことでした。それまでさまざまなシナリオを想定した話し合いが持たれていましたが、モニタリングリストになった瞬間に完全ディスタンス・ラーニングという選択肢しか残らなくなってしましました。
それまで毎日のように教育委員会からメールが届き、保護者と先生、関係者を交えたZoomミーティングが頻繁に開催され、アンケートを通じて保護者の意見が求められました。あまりに日々刻々と状況が変わっていったことや、州、群、地元の教育委員会からの情報量が膨大だったこともあり(メールにあるハイパーリンクを開けると70ページ以上のPDFファイルだったことも)、何が起こっているのか途中から追いつけませんでした。
隣の学区では、教育委員会、先生そして保護者とのZoomミーティングは、毎回夜8時に始まって、ディスカッションが深夜に及ぶことも頻繁にあったそうです。子供の教育と健康のことなので、100人いれば100通りの考え方あり、すべての保護者の希望通りにするのは不可能ですが、状況をシェアし、広く意見を募るディスカッションが重ねられていました。
すべての家族が新型コロナ感染状況改善後のハイブリットでの学校再開を望んでいるわけではありません。子供に持病がありリスクを避けたい、登校させるのは慎重を期したい家族もいます。今回は全員がディスタンス・ラーニングでのスタートとなりましたが、現状では、状況改善後にはハイブリットに戻るという選択と、そうなったとしても1年間は学校に戻ることなくディスタンス・ラーニン・オンリーという二つのオプションがあり、保護者と生徒が選べるようになっています。それぞれの家庭が判断するのです。また、ディスタンスラーニング・オンリーの選択したとしても、学校が再開されて戻りたい希望者はいつでも戻ることができます。
寺子屋教室スタイルのLearning Pod
自宅でのオンラインラインラーニングというのは、年齢が低いほど親の負担が大きくなります。Zoomにログインするにしても、工作の課題ひとつにしても保護者のサポートが必要です。こちらでは幼稚園から義務教育ですが、知り合いの働くママは幼稚園が始まると「もう、無理。まったく仕事ができない。受け入れてくれる民間のデイケアに明日から入れる」と初日から言っていました。
デイケアでは課題の基本的なサポートをしてくれるところがあります。というのも授業で先生は常にライブで指導するのではなく、課題リストが渡されて各自で(勝手に)する、という場合も多く、低学年ほど大人のサポートが必要になります。
そんな中、Learning Pod というサービスも登場しました。Learning Podとは、誰かがホストファミリーとして自宅を提供、3人から8名くらいの近所の子供達を集めて、先生が一人つく寺子屋教室のような上のイラストのようなイメージです。子供は固定メンバーなので感染のリスクが軽減され、民間のデイケアよりも手厚いサポートが期待できますが、値段が高いので利用できる家庭は限定的かもしれません。下の表のサンプル料金でいうと、最大8人の子供を集めて一番料金の安い大学生の教師を雇った場合でも一人につき月々1,402ドル (約15万円:9:00AM-2:00PM)です。
この状態が長期化するにつれ、経済格差が教育格差に繋がるだけでなく、仕事との両立、仕事をしていなかったとしても生活と学校の課題のための家庭の負担をストレスに感じている保護者や、ストレスを感じている子供は多くいるように思います。私の課題は、なるべく家族に対して細かいことでプリプリ怒らないことです。これがなかなか難しいんですけど….