わたしの娘がプレスクール(幼稚園に入る前に通わせる学校)に通学していた5歳になってすぐの頃。娘の友達の女の子を車の後部座席に乗せ、二人の可愛らしい会話を運転しながら聞いていました。
友達「ママの友達なんだけど、友達のおなかを借りて、赤ちゃん産まれたの。その赤ちゃん、ママが二人いるんだよね」
娘「二人パパがいる子知ってる。パパはおっぱいがでないからよくない。赤ちゃんはおっぱいが大好きだから」(数年前までおっぱいを飲んでいた娘ならではの、「カスタマー視線」のコメント!)
すごい会話だなあ、運転席で驚きながら聞いていました。だってまだ5歳ですよ。 他の友達から、親戚のゲイカップルの結婚式でバージンロードに花びらをまくフラワーガールをした、という話を聞いていたこともあって、「同性でも結婚できる、カップルというのは男女だけとは限らない」ということはその当時から把握していたみたいです。自分自身がどうだったかを振り返って考えて見ると、はっきりLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)の存在と意味を理解したのは、高校より上だったような気がします。いまどきの子供たちは。なんと早い時期からダイバーシティに馴染みはじめるのだろう、と認識した瞬間でした。
養子縁組数はアメリカでは日本より桁違いに多いですが、ゲイカップルの養子になる場合もあります。まったく血の繋がらない子供を国内や海外から迎えることもあれば、どちらかの精子や卵子を使った体外受精などで子どもを授かるケースも増えています。統計によると、同性カップルの59万4千世帯数のうち、11万5千世帯に子供がいるそうです。アメリカでは、どれだけLGBTに批判的だったとしても、子供を産まないので生産性がない、とはとても言い切れない数値です。
テレビドラマでも同性カップルが登場するケースは結構あるので、ゲイカップル+子供という家族構成の一般人に対する認知が向上している気がします。例えば、3家族のドタバタライフを描いたアメリカのコメディドラマ「モダン・ファミリー」では、そのうちの1つの家族がベトナムから養子を迎えた白人のゲイカップルの話です。また、近年アメリカで大きな話題となったNetflixのヘビーな青春ドラマ「13 Reasons Why (邦題:13の理由)」の中でも、白人のゲイカップルと養子縁組した中国系の高校生の女の子が主要キャストの一人として登場します。
すっかり認知度が上がりと偏見が少なくなったかのように見えるアメリカのLGBT事情ですが、これはあくまで私の住んでいるサンフランシスコ・シリコンバレーの話。アメリカは広く、アメリカ南部や、中西部など、敬虔なキリスト教や保守派が多く住むエリアでは、また話が変わってきます。
とは言うものの、全米で展開する大企業も含めて積極的に取り組む姿勢は数多く見られます。アメリカの大手スーパーマーケットのTarget では、ジェンダーに中立な姿勢を打ち出しています。おもちゃコーナーでは、男の子用、女の子用と分けていた表記を廃止し、性別で判断しない形に変わりました。また、企業のジェンダーフリーのトイレも随分増えてきたような印象があります。
サンフランシスコ・シリコンバレーでは、アメリカでもLGBT人口率が最大。バラエティ番組で活躍するタレントだけがLGBTというわけではなく、こんな女子力が高いゲイの友達が欲しいなあ、といったスタイリッシュなイケメンばかりがゲイというわけでもありません。あなたやわたしのように納税し、人生に悩みながら、そして、生ききづらいなあ、と感じることも多々ありながら、同じようにがんばって生きている人たちです。子供のクラスの担任の先生がゲイであったり、体育の先生がレズビアンであったり、スーパーマーケットで担当してくれたキャッシャーがトランスジェンダーであったり、同僚や取引先の相手がLGBTのどれかであったり(これはかなりの確率で遭遇します)、自分たちの生活の中に、コミュニティーに、フツーに存在します。彼らが少なくともサンフランシスコのようなエリアでカミングアウトするにせよ、していないにせよフツーに存在できるようになったのは、LGBTを取り上げる多数のメディアや行政、民間が彼らの平等人権を長年訴え続けてきた結果の賜物です。そのおかげで、サンフランシスコの子供たちのように、年齢が低いうちからいろいろなヒトがいてオッケーという環境に馴染んでいくのだと思います。
世界各地でゲイ・プライドのパレードが開催されていますが、6月にあるSan Francisco Prideも大規模でポジティブなエネルギーが充満しています。もし、この時期にサンフランシスコに来ることがあれば、ぜひ参加してみてください。