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アメリカのシニア世代 バツイチ、没イチの恋愛事情

働くママのシリコンバレー通信 更新日: 公開日:
イラスト:tanomakiko

“ I have great news! Call me.” (お知らせしたい良いニュースがあるの。電話して)とアメリカ人の夫の母親(73歳)からの連絡。ボーイフレンドができたんだな、とピンときました。

彼女は夫が大学生のときに彼の父親と離婚後、何人かパートナーが入れ替わりましたが、この連絡の直前に一緒に暮らしていた相手とはお別れし、心機一転、55歳以上が入ることができる自立型老人ホームの「アクティブシニア・コミュニティ」に入居していました。

「アクティブシニア・コミュニティ」とは、元気な引退世代のシニアがまとまって住んでいる居住エリアです。日本にあるような老人ホームのイメージとはかなり違い、老人ホームというよりは、引退後の生活をエンジョイするための、シニアのための「小さな町」のようなイメージです。

アクティブシニア・コミュニティ。数百世帯から一万世帯を超える大規模なものまで存在します。リタイアメント・コミュニティ、アクティブアダルト・リタイアメント・コミュニティとも呼ばれています。

日本でも自立型有料老人ホームのサービスがみられるようになりましたが、食事や買い物も自分たちでできる人たちはしますし、写真でご覧いただけるようにアメリカのアクティブシニア・コミュニティは規模が大きく、一軒家やタウンハウスの住宅形態もあり、病院は当然のこと、スーパーマーケット、中には郵便局まであるコミュニティもあります。介護が必要になれば、そのエリアの中にある介護施設に移動したり、住宅を変えずヘルパーを雇用します。

出入り口にセキュリティが配置され、人や車の出入りをコントロールし、安全性を高める住宅街のことを「ゲーテッドコミュニティ」といいますが、アクティブシニア・コミュニティもゲーテッドコミュニティで、住居者は管理費(義理母の場合は、年に1200ドル)支払います。施設が主催する音楽、映画鑑賞会、テニス、ゴルフなどのスポーツといったアクティビティが充実していて、クリスマスなど主要なホリデーの際には大勢でお祝いするパーティが開催されます。アクティブシニア・コミュニティといっても退職せずフルタイムやパートタイムで働いている人もいます。

義母はそこで社交生活が一気に花咲いたようで、10年前からここに住むべきだった、とコメントするくらい毎日楽しそうに過ごしています。

サンフランシスコの街でもカフェで楽しそうにおしゃべりするシニアカップルをよく見かけます。デイト中なのかもともと若いときから結婚していたのかなあ、と観察しながら見てますが、よく分からない。

動けなくなったり、認知症が進むぎりぎりまでそれまでの暮らしを変えず同じ家で過ごし、いよいよとなったら要介護施設に移る日本のパターンと違い、子供達と過ごした大きな家をさっさと売却し、気候が温和なエリア、例えばフロリダや南カリフォルニアなどのアクティブシニア・コミュニティの中のコンパクトな家に買い換え、元気なうちに新しいコミュニティに馴染もうとするアメリカ人は多くいます。義父も生まれてからずっと住んでいたニューヨークの家から再婚相手とフロリダに移り住みました。日本では、車がないと移動できないような過疎化が進む地域に高齢者がポツン、ポツン、と単身で住んでいることも多いですが、ある程度シニア達がまとまって住むというのは、病院などの施設の充実以外にもいろいろと利点があり、高齢化が進む日本がアクティブシニア・コミュニティからヒントを得られることは多いように思います。

義理母と現在のパートナー。リタイアメントコミュニティーが主催する新年パーティの様子。この二人もOurTimeで知り合いました(グリーンバーグ美穂提供)

さて、シニア世代の恋愛事情。アメリカのブーマーズ( 1946-64生まれの55-73歳)、そしてさらに上のシニア世代の恋愛は、日本よりオープンでより積極的かもしれません。これにはさまざまな理由がありますが、アメリカはカップル社会なので、ハウスパーティのようなカジュアルな場合でも、フォーマルなパーティでも、パートナーがいないと、なんとなくお声がかからなかったり、なんとなく招待しにくかったり、なんとなく一人では参加しにくい、といった背景も一つにあります。

配偶者が亡くなってから、次に移るスピードの早さは驚くものがあります。私の周囲でも、義理の両親が住むフロリダでも半年から1年で次のパートナーを見つけるパターンが多いです。私も、「私が死んだらこの人も半年以内には次の相手がいるんだろうなあ」とツルツルになりかけた夫の頭をみながらしみじみ考えます。人生カウントダウンに入ると、余分な時間はないと考える人が多いのでしょうか。

では、どうやって離婚や配偶者が死亡した後に相手を見つけるかというと、若い世代とそう変わらず、オンラインが主流です。ブーマーズ、シニア世代に人気なのは50歳以上が参加できるOurTimeというマッチメイキングのプラットフォーム。日本同様アメリカにもさまざまな出会い系のサイトはありますが、OurTimeは上の世代限定なので、昔の若かった頃の写真をポスティングして実年齢をごまかしにくい、他の同じ世代同士なので興味が持てそうな候補者をスクリーニングしやすい、といった利点があります。

50歳以上が参加できるOurTime のデーティングサイト。

コンピュータの操作が苦手なシニア たちがアカウントを作り、プロフィールの文章を作成し、自分の写真を撮って登録する作業はやはり大変。そんなときは、コンピュータが得意なシニア友達や彼らの子供達(ときには彼らの孫たち)がプロフィールの文章を修正したり、実際にポスティングする作業をサポートしています。

そして、お付き合いが進み、「じゃあ、余生を一緒に暮らしましょう」となった場合、お互いの気持ちを確認し合う以外にもシニア達には現実的な確認事項がいろいろあります。

アメリカでは結婚する際に、細かい生活事項や、離婚することになった場合の資産分与を事前に決めるプレナップと呼ばれる婚前契約を結ぶカップルが多くいますが、シニア の場合の項目は、どちらかが病気になったときには介護の責任は一切負わない(ヘルパーや相手の家族が面倒をみる)、どちらかが死亡したときには、共同購入した家は生き残った方の資産に自動的に移る、など後々もめないように具体的に決めていきます。これは結婚制度を取らず、ただ一緒に暮らすというときも同様です。

子供世代からは、自分の片方の親が亡くなった後、もう片方の親が半年で違う相手を見つけることに抵抗感を感じ、ちょっと関係が悪くなることもありますが、まあ一人よりいいか、本人が幸せならいいか、と最終的には受け入れるパターンが多いように思います。必然的に相手の前の結婚でできた子供たちや孫とホリデーなどでは顔を合わせる場面も発生し、それなりにうまくやっていく必要があります。「拡張家族」がいる人口が非常に多いのです。

我が家は特に拡張家族。義理の父と今の奥さんの前の結婚でできた子供の子供、孫同士がプールで遊ぶ。ホリデーや父の日などではお互いの家族が集合します(グリーンバーグ美穂提供)

アメリカでももちろん離婚や配偶者に先立たれた後、一人で気楽に生活をエンジョイしているシニア もいますが、シニア だから相手を積極的に探す行為が恥ずかしいといった風潮は少ないです。シニアがときめくと認知症防止になる?! 高齢化社会を迎えている日本では、この先シニアの恋愛事情も変化が見られるようになるかもしれないですね。