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ミサイル防衛の議論、なぜ迷走 政治が負うべき責任とは 小野寺元防衛相に聞いた

揺れる世界 日本の針路
米ハワイ州カウアイ島にあるイージス・アショアを視察した小野寺五典防衛相(当時)=2018年1月11日、相原亮撮影

――陸上イージスをやめて、イージス艦の隻数を増やすべきだという声が徐々に強まっています。

そもそも、陸上イージスを導入したのは、貴重なイージス艦をミサイル防衛にばかりに使うのではなく、南西海域などを含めて日本の国土防衛に十分活躍してもらうためだった。

ミサイル防衛は「24時間365日」という切れ目のない対応が必要だが、イージス艦ではどうしても穴が空く。3交代で監視する場合、陸上勤務の方が、通常のレーダーサイトと同じように対応できるので、隊員に負担がかからない。艦船を新たに建造するよりもコストも安く済む。

――イージス艦の隻数増に伴う費用や要員の確保について、政治が責任を負えるのでしょうか。

将来に向け、自衛隊員らが困らないような対応を考えるべきだ。ブースターの問題をしっかり説明しきれなかったので、陸上配備をやめたということなら、ゼロから考え直すことも一つのやり方だろう。

――政治家も官僚も、陸上イージスが日本の防衛に必要だという説明を、住民に十分できなかったということでしょうか。

関係者は十分な積み上げの努力をしてきたが、(河野太郎)防衛相が配備停止を宣言したので、みな意気消沈してしまったようだ。

戦争状態では、(陸上イージスの配備先の一つだった)山口県の駐屯地だけでなく、日本全体が危険にさらされる。ミサイルの問題だけではなく、サイバー攻撃やゲリラによる上陸など、様々な脅威が日本全体に降りかかってくる。山口だけがブースターの危険だけにさらされるという状況にはならない。どこにおいても危険な状況に置かれる。ブースターの危険性だけを議論する状況にはなっていないと思う。

職員は、地元にこうした説明をしていたと思うし、私がそこにいれば、正面から説明していた。陸上イージスの選定の際、ブースターの問題もあるし、日本上空での破壊なら、宇宙空間だったとしても落下物がないとは言えない。こうした事実を当然認識したうえで、日本防衛のために必要だということでスタートした議論だった。

なぜ、途中から「(ブースターは落下しないから)大丈夫だ」という議論になってしまったのか。私は(ブースターの落下などを理由とした陸上イージスの配備停止の際に)怒ったのだが、「なぜ、自分の手足を縛るような説明をしたのか」と思ったからだ。

現地で説明する職員がきちんと言えなかったのか、あるいは、だんだん職員任せになって、政治が説明の正面に立たなかったからなのかもしれない。

イージス・アショアの配備候補地だった陸上自衛隊の新屋演習場=2018年7月9日、秋田市新屋町、朝日新聞社ヘリから、福留庸友撮影

――「どの国も、切り離すブースターを考えて設計していない」とも発言されています。

どういうときに使うかと考えた場合、演習場周辺だけではなく、日本全体が危険にさらされている状況だからだ。

――専守防衛であれば、日本の領土領空で戦闘を行うことが前提になるはずです。

どの迎撃ミサイルでも日本の領空で撃墜すれば、日本の領土に落下物がある。それが嫌なら、相手の領域内で撃ち落とすしかない。「どこで撃ち落とせばいいですか」と尋ねると、「自分たちと一番影響のない場所でやってくれ」と言われる。そうであれば、一番確実なのは発射前か発射直後になり、相手領域内で食い止めるのが一番合理的な方法になってしまう。

――どうして、議論がかみ合わないのでしょうか。

講演などをしても、大抵の人がこうした話を理解するが、メディアはそう受け取らない。党のミサイル防衛に関する検討チームが「相手領域内での抑止」を訴えたら、メディアは「敵基地攻撃能力だ」と指摘した。だが、世論調査では6割が賛成だった。

――日本では国会などで軍事的な議論を避ける傾向が続いてきました。

私が防衛相を務めたときに最も大変だったのは、「国民を守りたいから」という理由で進めた政策に、国会で野党から反対されることだった。こういう国はなかなかない。

――陸上イージスに代る議論はどうしたらいいでしょうか。

一番良いのは陸上イージスだと思っている。その選択肢を取らないなら、ゼロに戻って考えるべきだ。

実際、西側諸国でミサイル防衛が可能な装備はイージスシステムか、THAAD(高高度ミサイル防衛システム)、PAC3(地対空誘導弾パトリオット3)しかない。そのなかで、陸上イージスが一番効率的だと判断したから導入を決めた。

陸上イージスをやめるなら、あとは防衛省の判断だが、最初のイメージからは変わらざるを得ない。