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アメリカの食文化が世界にダメージをもたらしたと考える理由

マイケル・ブースの世界を食べる
北村玲奈撮影

日本を始め、東アジア諸国には豊かな食の伝統がある。

それを脅かすのが、米国食文化の好ましくない影響だ。

私の新著『三頭の虎はひとつの山に棲めない 日中韓、英国人が旅して考えた』(KADOKAWA)では、日本、韓国、中国の歴史と関係性について調べながら旅をした。この170年間、もちろん米国が重要な役割を果たしてきた。その大統領選を控えた今、米国による東アジアへの影響について再考してみた。

新著は食に関する本ではないがこのコラムはそうなので、米国の食文化の影響について私が見てきたことに基づいて言えば、それは全体的に好ましくないものだった。例えば日本に何をもたらしたか?

ハンバーガー、フライドチキン、砂糖たっぷりの飲み物、そして、高度に加工された工業的な「コンビニエンス」食品。

その結果は? 肥満と2型糖尿病の増加、さらには日本の伝統的な食材、料理、食べ方の衰退だ。私に言わせれば、これは消化不良という巨大な問題なのだ。

ある人たち(特にハンバーガーやフライドチキンチェーンのCEO諸氏)からは、安価で手に入りやすい食べ物を、たとえ一流でなくても一定の品質で大衆市場にもたらしたという言い分も聞く。低所得の人たちや働きづめの人たちが、わずかなおかねで手早くおなかを満たせると。

いいことじゃないかって? でも私としては、日本食はすでにそうしたニーズを満たしていたと言いたい。麺類は数分でゆであがるし、すしや焼き鳥も素敵なファストフードだ。天ぷらだってすぐできる。他にもまだまだあるが、日本食には安くて早くて栄養のある料理がたくさんある。中華や韓国料理にも同じことが言えるだろう。

米国のファストフードの問題点は速さや低いコストではない。最小限の人員で最大の利益を得るためにできる限り安価な材料(小麦、水、砂糖や、パンの場合は文字通り空気までも)を売るという単一の目的を掲げていることにある。そこに向けて米国食産業は容赦なく突き進み、それ以外のほとんどを顧みない。それこそが米国が世界に説いてきた食の教訓だ。

■反米ではないが、食は…

東アジア諸国には、信じられないほど豊かで敬うべき食の伝統がある。多くは中国発祥で、朝鮮半島から日本へと渡る中で適合し、変化した。米国の食の習慣はこうした伝統を脅かし、損ねてきた。ただ、私は感じている。トランプ政権下で東アジアでの米国の政治的な影響力が衰える中、食でも抵抗が始まるかもしれない、と。

15年間にわたり日本を旅してきて、日本人が食の伝統に誇りを持っていることはよく知っている。近年では世界もそこから学ぶようになっている。新著のための取材で東アジアを巡ったが、1953年以降、米国の食文化の影響を日本以上に大きく受けてきた韓国でも、伝統料理のよさを改めて認識していると感じた。

一方で、数十年に及ぶ共産主義下で米国に抵抗してきた中国は今や「ゴールデンアーチ」(ハンバーガーチェーン最大手のシンボル)を始め、太平洋を越えてきたジャンクフードの数々を受け入れている。幸い中国料理は広範囲で地域ごとに深く根付いており、長い目で見れば抵抗の機会も来るだろう。最近では中国自身が世界中の食卓に向け、独自の効果的なプロパガンダをしかけている。

米国を全否定するつもりはないし、私は反米ではない。米国にも地域ならではの素晴らしい名産や食がある。バーベキュー文化は素晴らしいし、私は訪米時にロブスターロールを一度も欠かしたことはない。ニューオーリンズの食は特に魅力的だ(詳しくは近々このコラムで!)。

そうだとしても、米国から輸出された食文化は世界各地で固有の食にひどいダメージを引き起こしている。私たちの健康、そして環境にもだ。

もちろん、米国に神の祝福を。ただ、食は自国だけにとどめてください。(訳・菴原みなと)