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【松下慶太】リモートもオフィスもいいとこ取り 未来の働き方、実現のヒント

LifeStyle
新宿御苑の敷地内に設置されたテントでワーケーションを体験する人たち=2020年7月22日、東京都新宿区、水戸部六美撮影

■「働き方のスタイリスト」になる

――テレワークで出社の機会が減り、コミュニケーションの課題にストレスを感じる人が増えてきたように思います。どう見ていますか。

データ上は、確かにコミュニケーションの不安は見えます。対面の場では雰囲気をうまくつかみ取って意見を通していた人の意見が、オンラインだと伝わらない場合もある。逆に、普段は口べたでも、オンラインで上手に意見を伝えている人、生き生きしている人もいますよね。一言で言えば、慣れるしかない。でも、オンラインでの営業やプロジェクトの進行が広がるなかで、企業にはどんな人がオンラインに向き、どんな人が向かないのか、それぞれにどういう研修が必要なのか、考える必要があると思います。また、オンラインでしかコミュニケーションが取れないというわけではない。オンラインとオフラインの組み合せが重要になると思います。

=パーソル総合研究所「第三回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」(テレワーク実施者・メンバー層、n=500、2020年5月29日~6月2日調査)をもとに作成

――働き方のスタイルが多様化し、それぞれに課題も感じるようになってきたというのが現在地だと思います。コロナ後、どんなスタイルが広がっていると見ていますか。

大きく3つに分けられると思っています。ひとつがエッセンシャルワーカーを含め、オフィスや現場に行かなければならない人たち。二つ目が出社とテレワークの「ハイブリッド」、三つ目が「完全オンライン」です。

ハイブリッドや完全オンラインの人たちは、仕事のモードと時間、場所をどう切り替えるかを考えていますよね。僕は朝型なので、早朝に集中して仕事をしています。

また、テレワークと言うとホワイトカラーを対象にすることが多いですが、現場に行かなければできないとされる仕事でも、どんな技術や意識変化があればテレワークが可能になるのかは、同時に考えていかなければいけないと思っています。

――私個人はハイブリッド型です。アイデアを練りたいときはカフェ、作業に集中したいときは自宅、直接大事な話をしたいときは会社。試行錯誤して、そんな使い分けにようやく慣れてきたところです。

会話をする場所、集中する場所。いままではそうしたすべての機能を会社が準備してくれていました。これまでは、オフィスに行くことが仕事をすること、という側面がありました。しかし、コロナによって仕事と働き方は本来、分離しているということが分かりました。これからは自分で働く時間や場所を考え、自分なりのスタイルを作らなければならなくなりました。自分が働き方の「スタイリスト」になる時代になってきたと思っています。

オンラインでインタビューに応じる松下慶太さん

■ワーケーションや移住、広がる選択肢

――スタイルのひとつとして、「ワーケーション」や移住も注目されています。地方の活性化にもつながる動きで、積極的に動く自治体もあります。

日本のワーケーションは、地域、企業、個人の3つのプレーヤーがいて、地域や企業が主導しています。政府が予算をつけてから一層、地域が盛り上がっています。個人が主導して広がってきた海外の流れとは異なります。日本で個人を起点にした動きが出てくるのは、これからではないでしょうか。

懸念があるとすると、地域ごとの個性をどう出すか。地域もホテルなどの事業者も「とりあえずワーケーションプランを準備しました」ではなく、なぜやるのか、その「ストーリー」を打ち出すことが大事です。

――ストーリーとは何でしょうか?

どこで、どのように過ごし、何を食べるか、といったことです。よく例に出すのが、福岡の「うどん」です。やわらかい食感で、有名です。

1泊なら中洲の屋台でラーメンやもつ鍋を食べる人が多いと思いますが、3泊できるならうどんも食べてみようか、と思えるのでは。北海道で例えると、1泊ならジンギスカンや海鮮を食べるけど、3泊できるなら「ザンギ」(鶏の唐揚げ)にも挑戦してみたい。

これまで観光資源がないと言われていた地域でも、長期間過ごすには魅力となる場合もあります。例えば夕日がきれいな街。1泊では見られないリスクがあるけれど、3泊なら見られるかもしれない。オーロラもそうです。オーロラが出るまでどう過ごすか、そのストーリーが大事になります。夕日やオーロラを待つ時間があるならば、仕事をしたって良い。そんなストーリーをどう伝えるかが、地域に問われると思います。

また、訪れた人たちを、地域の人たちが信頼して受け入れられるか、そこをどう担保するかも大事です。信頼関係の構築も含めて中長期的なトレンドになると思います。

――そういった多様なスタイルを担保するために、企業にとって必要な視点はありますか。

ひとつは業績評価です。「放っておくと生産性が上がらない」と言って監視しても、結局生産性は上がらない。生産性を上げるために「ワーケーションに行ってこい」と言われても難しい。ある意味、性善説に立って労務管理しないと回らないと思います。

別の視点で言えば、よい人材をどう確保するか、の意味が強いと思います。評価のあり方は、いまいる人材に勤め続けてもらえるかどうか、また転職や新卒採用を含め魅力のポイントになってきます。育休や産休の充実度と似ている部分があるかもしれません。たとえ自分は取得しないとしても、制度として充実しているかは気になる。ワーケーションは絶対に設けなければならない制度ではないですが、多様な働き方に理解がある企業かどうかを示すことは大事でしょう。

また私は、「子ども連れのワーケーション」に可能性を感じています。子どもにウミガメの産卵を見せたいからどこかに行く。親はそこでワーケーションをする。子ども起点になると家族にも広がりやすいと思います。

■オフィスの役割「井戸からたき火へ」

――オフィスの縮小や移転のニュースを見かけるようになりました。オフィスの役割をどう見直すべきだと思いますか。

かつてのオフィスは「井戸」のような存在だったと思っています。そこに行かないと生活ができなかった。それが人と囲んで話す「たき火」のような存在に変わってきました。机といすがある場所、ではなく、カフェスペースや喫煙所のように、これまで付随的だった「たまり場」の機能がメーンになってきます。もしくは、そこでしかできないような作業をする場、工房のような場所になると思います。

――働く場所やモードが多様化することで社会全体にどのような影響が出ますか。

最も大きな影響は、「境界線」があいまいになることだと思っています。例えば、都市と地域の境界線です。働くために都心に出なければいけないわけではない。例えば、郊外に住み、週2、3日都心に行ってもよくなりました。

私自身は、東京に拠点を置きつつ、講義のため週1回関西へ行っています。ワーケーションの研究もしているので、どちらにも足を置きつつどちらにも置かない生活をしてみたいと思っていました。東京にいながら関西の大学のオンライン授業をしていることもある。自分なりのスタイルをやろうとしているところです。

■「それ、オンラインでよくない?」と言える社会

――出社が大前提の元の働き方に戻ってしまうのでは、と少し不安です。

逆戻りはたぶんできないと思います。現業型、ハイブリッド型、完全テレワーク型が基本的には続いていくと思います。コロナ後は「なぜ対面じゃないといけないのか」という説明が必要になってくると思うんですね。会社に来ることが当たり前とは言えない。

――先ほどおっしゃった、自分自身が働き方の「スタイリスト」になるために必要なこととは何でしょうか。

「働きたいように働く」ということです。例えば、学生から「就活したくない」「働きたくない」という声を聞くことがあります。その本質は、「働きたいように働けないから、働くのが嫌」ということなんですよね。

なぜ私たちは、働くことが嫌だったのか、働きたいように働けなかったのか。制度によるものなのか、テクノロジーで乗り越えられる話なのか。ちょうどいま、脱ハンコの話も出ていますよね。そういうことを、フラットに議論できる良い時期だと思っています。

身近にできることで言えば、「それ、オンラインでよくないですか?」と提案していくこと。そういう提案を通して変わっていくと思います。

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