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危機に直面する「森の人」 オランウータン保護に寄り添い続けたフォトグラファー

世界報道写真展から――その瞬間、私は
Photo: Alain Schroeder アラン・シュローダー(ベルギー)

生後1カ月のオランウータンの赤ちゃんは、助からなかった。インドネシア・スマトラ島北部の保護施設。アブラヤシ農園の中、負傷した母親のそばで見つかったときにはすでに息をしていなかった。

「死を写したかったわけではない。傷ついたオランウータンを保護し、リハビリ後に自然界にかえす取り組みをしている現地の人たちの努力を伝えたかった」

ベルギー人のフリーランス写真家、アラン・シュローダー(64)はそう説明した。その中で偶然いあわせた悲劇を写した1枚だったが、今年の世界報道写真(WPP)コンテスト自然部門で1位となった。

WPPは各部門で単写真とは別に複数の写真から成る組写真でも上位3作を選んでいる。現地の人たちの保護活動を刻んだシュローダーの写真は、組写真でも1位となった。同じ年に同部門で同じ人が1位をダブル受賞するのは珍しいことだ。

「数年前のインドネシア旅行で初めて見たオランウータンに魅了された。人間とDNAを97%共有している。原生林が農園に変わり、行き場を失ったオランウータンが激減していると知った」。保護団体の密着取材をするきっかけとなった。

数カ月かけて救助からリハビリ、手術などの治療、そして自然にかえすまでの保護活動全般を写真に収めた。死んでしまうオランウータンもいたが、元気になって自然に戻るまでのプロセスに尽力する多くの人々の姿を通じて前向きなメッセージを出すことに集中したという。

「写真を見てもわかるが、とても愛着がわく生き物です。それが危機にひんしている。原因は人間です。それを考えてほしい」とシュローダーは強調した。

■オランウータンの危機

「森の人」を意味するオランウータンは現在、東南アジアのスマトラ島北部とボルネオ島のみに生息している。世界自然保護基金(WWF)やインドネシア政府の推計によると、個体数は約100年前より8割減少。スマトラに約1万4000頭、ボルネオでも6万頭を切った。

アブラヤシのプランテーションなどによる深刻な森林破壊に加え、温暖化による干ばつと高温で、毎年のように森林火災が発生。生息地は、これまでに80%以上の面積が失われたという。生息地の回復や個体の保護などの努力が続くが、絶滅の危険性からは脱せられていない。(山本大輔)