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勝手なママとわかりつつ今度はニュージーランドに親子留学 主治医はまたあきれ顔

育休ママの挑戦~赤ちゃん連れ留学体験記~ 更新日: 公開日:
ニュージーランドの北島、コロマンデル半島の海岸沿いにある街フィティアンガ=2019年1月、今村優莉撮影

2019年1月、私は4カ月半に及んだフィリピン・セブ島での親子留学を終え、帰国した。トラブルや苦労もそれなりにはあったが、最後は「日本に帰りたくない」と本気で思った。家事と育児を二人三脚で担い、シンシンもルール-もなつきまくっている家政婦兼シッターのジョセさん。子どもに対してだけでなく、子連れの私に対してもいつも笑顔を向けてくれた多くのフィリピン人。すべてが名残惜しかった。

余韻にひたる間もなく、私は次の渡航先への準備を進めていた。ニュージーランドだ。

少しだけいきさつを振り返る。

シンシンの育休中にルールーを産んだ私は、復職することなく2度目の育休に入った。同時に「こんなに長く休んでいては、まともに職場復帰できない」という不安に襲われていた。

「早く職場に戻らないと、職場のお荷物になる」と思う反面、あっという間に大きくなってしまうだろう我が子たちの乳幼児期を、できるだけ一緒に過ごしたいという思いも強かった。

兄弟で交互に泣く声を「赤ちゃんがずっと泣きっぱなし」と思われたのか、近隣から通報されたこともあり、精神的に参ってしまい、どこか子どもを連れて遠くへ行きたいと思っていた。

赤ちゃん連れで英語留学する、というのは、そんな私にぴったりな選択肢だった。英語をブラッシュアップすれば、職場復帰の時の不安も少しは減るだろうし、子どもとも一緒にいられる。それに、海外のどんな場所だって、日本ほど子連れの母親が肩身狭い思いをする国はないだろう、とも勝手に思っていた。

ところが、子どもの年齢は意外と大きな壁だった。親子留学プログラムを提供するさまざまな会社に問い合わせた。フィリピン、アメリカ、ハワイ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド。結果、0歳児と1歳児を同時に受け入れられる、という回答をくれたのは、これまでにも登場した「留学情報館」が提供しているフィリピン・セブ市での「親子留学専門学校」と、ニュージーランドのフィティアンガという小さな街での親子ホームステイの2件のみだった。

ほかは、いずれも「その月齢の子を預かる保育園がありません」「乳幼児2人を見られるベビーシッターが手配できない」などといった理由で、費用うんぬんの前に、そもそも受け入れてもらえなかった。

数日間迷った結果、私は結局「どちらも行ってしまえ」という調子に乗った結論に至る。

「ウインテック留学センター」のカウンセラー、位田麻美さん=2019年9月、今村優莉撮影

東京・新宿にある「ウインテック留学センター」、位田(いんでん)麻美さん(36)が、私のニュージーランドへの親子留学を実現させてくれたカウンセラーだ。

1997年に設立したウインテック留学センターは英語圏を中心に、ヨーロッパ、北欧、韓国、台湾、マレーシア、シンガポール、南米など世界20か国以上に留学生を送ってきた。特に「あなただけのオリジナルの留学プランを。」をウリに、オーダーメイド留学に力を入れてきた。大学生、社会人の正規留学はもちろん、小中高生の留学や、サマーキャンプといった短期プログラムも人気コンテンツだ。

本格的に親子留学を開始したのは2008年。3歳以上を対象にした親子ホームステイを中心に、親と子が一緒に学べる学校と提携している。

「少し昔は、子どもの英才教育のためだけにサマーキャンプなどに参加させる、といったスタイルが主流で、お母さんはついていくだけで勉強しない、という方も多かったのですが、ここ数年は、働くお母さんが、1週間だけでも『自分の英語をブラッシュアップしたい』からと、親子留学を申し込まれる方が増えています。自分が学んでいる姿を通して、子どもにも学んでもらえるという点がメリットです」と位田さんは話す。

ニュージーランドでの親子留学の様子=Evakona Education提供

当初は、育児休業中に親子で行く、という人は少なく、夏休みの1~2週間を使って母子、あるいは祖父母と孫、といった形で親子ホームステイに臨むひとが多かったという。最近は父子での親子留学もじわりと増えているとか。

そんな同社のラインアップのなかでも、5歳以下の子どもを連れて行く親子留学先として人気が高いのがニュージーランドとオーストラリアだ。

ファミリー旅行では人気のハワイも、親子留学となると25歳をプリスクールに入れるために、現地でまずツベルクリン反応テストというものを受ける必要がある。そのため、1週間前倒しで出発しなくてはならず、負担が増える。さらに、長期留学者を優先的に入学させる傾向があるらしく、プリスクールの空きがなかなかないということも。正確に空きが分かるのが出発約1ヶ月前とギリギリにならないとわからないため、親子での短期留学は敬遠されがちという。

一方で、ニュージーランドとオーストラリアでは、語学学校自体が幼稚園や託児所を持っていることもあり、小さい子連れでの親子留学が実現しやすいそうだ。ニュージーランドの場合は保育園の空きがない場合、ベビーシッターもお願いできる。

位田さんの力添えもあり、0歳と1歳付きの私を受け入れてくれるホストファミリーが見つかった。ニュージーランドのフィティアンガという街のベテランホストファミリーだった。

ホームステイの経験そのものが初めてだった私は、赤ちゃん2人連れで他人の家にお世話になるのがどれほど大変か、その後たっぷり知ることになるのだが、まずはメールのやりとりだけでも大変だった。洗濯や食事の時間は決まっているのか。キッチンを勝手に使っても良いのか。買い物はどうすれば良いのか。ベビーカーは2人乗りを日本から持って行く必要があるのか。ホストファミリーにはペットがいるのか。などなど……

こうした私の一つ一つの疑問に、位田さんはすべて丁寧に先方に聞いて、解消していってくれた。連載を書くにあたり、位田さんとのメールのやりとりを数えたら、70通近くになっていた。

ニュージーランドの親子留学をプランしてくれたカウンセラー、位田麻美さんとのメールでのやりとりは約70通に及んだ=筆者のメール画面

2008年にウインテックに入社して以来、成人、未成年ふくめこれまで1400人を超える留学生を送り出してきた実績がある位田さんも、「赤ちゃん2人連れてのお母さんの留学のお世話は初めてです」とのこと。

大変な負担をお願いしたが、位田さん曰く「子どものことも含めて、現地にいって『聞いていない』となると大変だから、マイナス面も含めて日本にいるうちに疑問はすべて解消したほうが、いいホームステイになるんですよ」と言ってくれた。

実は、あれだけ綿密なやりとりを経て、気持ちはどんどんニュージーランドに向かっていても、一度だけ躊躇したことがある。見積書をみた時だ。

親子ホームステイは、原則、食費と生活費などを人数分、お世話になるホストファミリーに支払うのだが、子どもの年齢が何歳であっても、大人1人分としてカウントされるのだ。

つまり、授乳&私が作る離乳食しか食べない当時8カ月のルールーも、幼児食しか食べない当時1歳11カ月のシンシンも、大人3人分が請求されてしまうのだ。

「ひょえーー」
見積書をみて、食費の部分はもう少し安くなりませんか、と食い下がってみたが、位田さんの説明によると「小さなお子さんをホスティングするのは、ファミリーにとっても気を遣い、かなりの負担になることですので、双方にとって良いホームステイ経験となるよう、年齢や食事の量にかかわらず、1人分のホームステイ代を頂く」決まりになっているという。

夫とも話し合い、期間を調整することで折り合いをつけた。
こうして、私はセブでの親子留学から帰国後、わずか2週間でニュージーランドに旅立つことになったのだった。

この間に私は、セブ滞在中にできなかったシンシン、ルール-の予防接種、定期検診、歯科検診などをすませた。

無事に戻ってきた報告と、もう一度海外に行くために必要な2人の常備薬を処方してもらうために、かかりつけの小児科に行ったときのことだ。

第5回でも登場した主治医は「えー、また行くの-!」とあきれ顔。「ママ、好き勝手やってるねえ」となかば諦めたような顔で言ったが、シンシンもルール-も元気いっぱいな様子をみて「楽しかったみたいね、そっちは」とにやり。

「ま、元気でいってらっしゃい」と言われ、看護師さんたちも「気をつけてね~」と送り出してくれた。

息子たちよ、もう少し勝手なママにおつきあいください。