経済成長を続けるアフリカ各国の若者を、日本の大学院や企業で受け入れるプログラム「ABEイニシアティブ」が6年目を迎えた。8月に実施されたアフリカ開発会議(TICAD7)でも人材支援策の一つとして取り上げられるなど、注目を集めている。日本行きを決めたアフリカの若者たちや受け入れ先の日本企業の狙いとは?
プログラムは、安倍晋三首相が2013年6月のTICAD5で、「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ」として表明。翌年度から18年度までに各国から1219人を受け入れてきた。
参加者は1年半から3年の間、日本各地の大学院で学ぶほか、インターン生として日本企業で就労経験を積む。費用の大半は国際協力機構(JICA)が負担し、受け入れ企業は15年の217社から今年は584社まで増加している。
彼らがはるばる日本に行ったのはなぜなのか。11月27日、日本から帰国した17カ国約70人の若者が集まるイベントに参加し、その理由を探ってみた。
日本の大学院で経営学を学んだチュニジア人のアズマ・バフリさん(25)は「日本の高い技術力や規律、倫理観を学びたいと思った。すしや映画の『千と千尋の神隠し』も好きだったので」と教えてくれた。実際に行ってみた感想を聞くと、「日本人は優しくてたこ焼きも好きになった」と笑みをみせた。
同じく経営学を学んだ南アフリカ人のファクデ・ズザさんは「ポケモンやドラゴンボールなどのアニメを見て育った。中国に比べて日本製品の質が高いのも、日本行きの決め手だった」と語った。帰国後は現地に進出する日本企業などを中心に就職活動をしているという。
一方、受け入れる日本企業は、アフリカ各国への進出の足がかりや人脈づくりに期待を寄せる。
ドローン事業やコンサルタント業務を行うみかわ元気ものがたり=愛知県新城市=は2018年度から、南アフリカやセネガル、エジプトなどの若者を受け入れてきた。帰国後も交流を続け、ドローンを使った農業ビジネスなどを検討しているという。
同社の鈴木達也・代表取締役(61)は「我々のような中小企業にとって、海外に進出する際に何より大事なのは人脈。三河地方の企業がアフリカに進出する際の仲介もできるようにしていきたい」と意気込む。
愛知県一宮市の秀農業も、今年から農業を学ぶナミビアやマダガスカルの若者を受け入れ、日本式の農業を体験してもらっているという。加藤秀明・代表取締役(39)は「アフリカ西部のブルキナファソでイチゴ栽培を目指している」と話すなど、アフリカ各国への進出をうかがう。
帰国後に現地の日本企業に就職する若者も出てきており、JICAの担当者は「日本製の車やカメラなど、高い技術力のある日本に行きたいという若者のニーズは高い」と分析する。