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「人への投資」がアフリカの未来を変えていく~現地のICT教育を支える取り組み

PR by 三菱商事 公開日:

世界の中で基礎的な教育を受けられない子どもたちが特に集中している地域が、サハラ砂漠以南のアフリカ。貧困に苦しむ人々も多いこの地域で基礎教育・ICTなどの専門教育への注力により貧困の連鎖を断ち切ろうという動きに注目が集まっている。高まるアフリカのICT教育需要に応える、日本の教育機関の取り組みを取材した。

 高度ICT人材を育成する専門職大学院として2005年に開学した神戸情報大学院大学(神戸市、以下KIC)は、2013年に修士課程の「ICTイノベータコース」を開設。社会課題を解決できる人材の育成を掲げ、これまでのべ約120人の留学生をアフリカから受け入れてきた。その中でも、ルワンダからの留学生は最多の32人だ。

 年約8%近い経済成長を実現し、「アフリカの奇跡」と呼ばれるルワンダは、国を挙げて基礎教育やICTInformation and Communications Technology )教育に力を入れることで、貧困の連鎖を断ち切ろうとしている。

 「ICTイノベータコース」の1期生のうちアフリカからの留学生は2人のみだったが、2013年には日本政府がTICAD(アフリカ開発会議)の席上、今後5年間で1000人の留学生をアフリカから国費で受け入れるという政策を発表。こうした流れも追い風となり、以後、多くのルワンダ人留学生がKIC門を叩くことになった。福岡賢二副学長はこう語る。

 「ただ技術を学んだり、論文を書いたりするのではなく、現実の社会課題の解決に役立てるエンジニアを育成しています。普段のコミュニケーションは英語が基本ですが、GENBA(現場)という言葉はあえて日本語を使っている。自分がつくったソフトウェアやアプリが実際に人々の役に立つのか。必ず現場であるユーザーのところに行って評価を聞いてくるよう指導しています」

神戸情報大学院大学(KIC)での「ICTイノベータコース」の講義の様子

 卒業生の一人であるルワンダ人女性のクラリス・イリバギザ氏は、学生時代に起業した携帯電話向けのソフトウェア会社を急成長させ、米Forbes誌が選ぶ「アフリカで最も将来性のある30歳以下の起業家30人」にも選ばれた。他にもOBから複数の起業家が生まれており、こうしたICT人材が集まる首都キガリはルワンダ発展の推進力になりつつある。

 なぜ、ルワンダはICTの分野で突出した存在になったのか。そこには、あの内戦も深く関係している。

 ルワンダは人口も天然資源も少ない小国である上、内戦で働き盛り世代の多くが犠牲になった。内戦後のルワンダ政府は、「無知が内戦を引き起こした」という反省から『知識基盤経済』の育成を掲げ、国を挙げてICT産業に力を入れることを決めた。経験も資産も持たない若者が経済の主役になるしかない。そんな厳しい条件も、ICT化の流れを加速させた。

 カガメ大統領は全土に光ファイバー網を張り巡らせ、高速通信規格「LTE」のネットワークも構築するなどいち早くインフラを整備。同時に、ICT関連の民間投資に優遇を与えるなど、ビジネス環境も整えてきた。

 「アフリカ各国ともICT技術の発展を政策に掲げていましたが、最も本気で取り組んでいると感じたのがルワンダでした。2012年、研修のため日本を訪れた行政官らは、教育によって国を良くしようという気概にあふれていた。彼らは自分たちと同じように資源が少ない中、戦争の焼け跡から立ち直った日本を尊敬してくれている。私たちの教育をルワンダに持ち込めば、必ず化学反応が起きると信じています」(福岡副学長)

授業では実際にアプリやICT機器の制作も行う

 現在はICT産業を担う若い人材の育成が急務となっており、こうした需要に応えるべくKICでは国際協力機構(JICA)の草の根技術協力事業として、首都キガリでビデオ教材を使った遠隔ICT教育にも取り組んでいる。日本で録画した講義のビデオをもとにしたワークショップ形式で、進行役は帰国したKICの卒業生ら。日本で育てた人材が、現地に教育を広めるハブ役となっている。

 「留学生を受け入れるだけでは国の基盤になる規模の人数は育てられないし、コストが高くて学べない人も多い。ビデオ教材を使うことで、裾野を広げてより多くの人たちに教育を届けることができています」

 多くの人材が育ってきたことにより、日本のソフトウェア会社が現地法人をつくって若者を雇用するなど、新たな経済サイクルも生み出されているという。

 教育によって国を変えるというルワンダの取り組みは、まだ道半ば。だが、ルワンダで起きている「奇跡」は、アフリカ各国も、そして支援する側の考え方も変える可能性があると福岡副学長は語る。

 「ルワンダがICT教育やその前提にある基礎教育の強化により成長していることで、他のアフリカ諸国も教育を通じた人材育成に目が向いてきている。この流れが広がっていくことで、今後、多くのアフリカ諸国が大きな成長を遂げると考えています。支援する側も、インフラだけでなく、教育支援にももっと力を入れていくことが大切だと考えています。支援を受けた側の心に一生残りますし、人と人とのネットワークは長い目で見れば、私たちにとっても有益な未来につながるはずです」

KICの福岡賢二副学長

“人への投資”で国が発展し、人々が豊かになる成功体験は、教育と貧困解消の好循環を生み出すヒントになるだろう。世界のあちこちでこうした変化を起こしていくことが、持続可能な地球をつくっていく鍵なのかもしれない。



提供:三菱商事