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ファッションでも地産地消を 服を長く大切に使える人がこれからのおしゃれ

ノルウェー通信

北欧ノルウェーでは2014年から毎年「テキスタイル・アクション」(Tekstilaksjonen)が開催されています。

環境団体、ファッション業界、リサイクル業者が協力して、服や布がもたらす環境負荷と責任を自覚し、服との付き合い方を問い直すイベントです。

格安ファッション、Bergansなどの大手スポーツウェアブランド、古着回収・販売チェーンFretexなど、現地で大きな影響力を持つブランド、デパート、環境団体。数々の団体・企業が、垣根を超えて、業界をサステイナブルな方向にもっていこうと模索します。

10月21~27日はアクション週間として、今ある服を自分で修理する教室、古着販売、トークショーなど、様々なイベントが行われました。

日本発祥のプレゼンテーション形式の行事「ペチャクチャ」では、業界関係者が集まり、ファッションがもたらす環境破壊とその責任を、改めて市民に伝えました。

「気候変動をもたらす排出量の10%は衣服業界から」。空と海の交通から出る排出量よりも、衣料品業界からの排出量は多いとされています Photo: Asaki Abumi

「買って、ワンシーズンで捨てる」時代は終わり

現地のファッション業界をまとめる団体「ノルウェジアン・ファッション・ハブ」のギスレ・マルダルさんは、「次々と生産し、どんどん着て、すぐに捨てる」サイクルを生み出した業界のビジネスモデルは、信じられないほど最悪だったと指摘。

一度は自分たちでコントロールがきかないほどまででしたが、今、ノルウェーのファッション業界はサステイナブルな道へと、良い変化を遂げつつあると語ります。

SDGsに沿った事業転換には、企業同士が連携することが不可欠

持続可能な開発目標SDGs達成のための17の目標のロゴは、これからのファッション業界にとってのコンパスに Photo: Asaki Abumi

「サーキュラー・エコノミーが、その対策案のひとつです。でも、どうすれば企業はサステイナブルな事業転換をしていけるか?各社が孤立してその問題に立ち向かわなくていいように、業界をまとめる団体がより必要となってきます」

「そのためには、互いを信頼しあい、情報をシェアし、協力しあっていくカルチャーが必要です」。

「ごみはない、あるのは資源だけ」

ファッション記者であるトーネ・トビアンソンさんは、「そもそもゴミというものはない」と、「捨てるに値する衣服はない」と話します。

欧米には、誰もが気にはしているけど、口にはしない社会のタブーを、「部屋の中に象がいるよ」と言います。その象は、服を無駄に作りすぎている企業だと、同氏はばっさりと切り捨てます。

ファッション業界の「部屋の中の象」は大量生産

フィンランドやノルウェーのファッション・デザイン業界の展示や会議を取材していると、大量生産・大量消費で成り立つビジネスモデルを、「部屋の中の象」だと例える人は多くなったと感じるPhoto: Asaki Abumi

「持続可能なファッションとの付き合い方とは、あなたが服に投資する金額を減らすことではありません。減らすべきは、購入する服の量です。長く使える、環境に配慮した、良質な服を選びましょう」。

「地産地消という言葉の意味を、私たちはわかっていますね。食の世界では地産地食の考え方が浸透しています。ファッションにも、まさにそれが必要です」

今後は、企業と顧客が、自分に合ったオリジナルの服を、時間をかけて一緒に作るビジネスモデルに、より価値が増すだろうとも話します。

気候変動対応に取り組むブランドに投資家が集まる

化石燃料に見切りをつけて、環境に優しいグリーンなエネルギーへと、転職をした有名な女性がノルウェーにはいます。ティーナ・サルトヴェットさんは、石油を発掘するノルウェーで、石油価格の専門家として有名でした。しかし、数年前に「これからはグリーン経済の時代」と、石油に別れを告げ、世間を驚かせました。

「1キロのコットン素材のテキスタイルを生産するために、3キロの化学薬品を必要とする」 Photo: Asaki Abumi

「今後は気候変動を気にしたビジネスモデルが当たり前となります。コットン製造にどれほどの水が使われて、使用後の水はどうなっているのか?児童労働がされていないか?」

「服の製造過程と環境負荷を真剣に受け止めている、責任ある企業に、個人も投資家も集まるでしょう」とサルトヴェットさん。

今ある服を大切に使う、ゴミに価値を見出す風潮へ

ノルウェー赤十字社は市民が捨てたい衣料品、靴、アクセサリー、ベルト、カバン、ベットカバー、タオルなどを回収。古着として販売し、人道的支援の活動に売り上げは使われます。会場では大きな専用の回収袋が配布されていました

ノルウェー赤十字社は市民が捨てたい衣料品、靴、アクセサリー、ベルト、カバン、ベットカバー、タオルなどを回収。古着として販売し、売り上げは人道的支援の活動に使われます。会場では大きな専用の回収袋が配布されていました。

ノルウェー発のスニーカーブランド「NEW MOVEMENTS」は、廃棄予定だったゴムやプラスチック素材を利用した靴をリリース。ゴミを減らし、使用するエネルギー量や新しいプラスチック消費を抑え、プラスチック回収基金への寄付などに徹底的にこだわっています。

「1キロの衣料品を生産するために、10キロの二酸化炭素、500ミリリットルの化学薬品、およそ2500リットルの水が使われる」 Photo: Asaki Abumi

同じ服を何百回も着よう

ノルウェーファッションブランド「Envelope1976」では、長期間、大事に使えるデザインの服がこれからより価値を増すとして、状況に応じて袖の形などを変えられる服を作っています。

「何百回も着たくなる服を作る」業界の責任を、創業者のセリーネ・オーゴールさんは訴えました

ジーンズに穴が開いたら、修理しよう

トロンハイムにあるLivid Jeans店。購入後に傷んだジーンズは店で修理してくれるPhoto: Asaki Abumi

一方で、オスロやトロンハイムにある服の修理も行う店「Livid」のオーレ・エイヴィンさんは、サーキュラーエコノミーや服の素材に着目しようという流れは、業界の問題の核に触れていないとも指摘します。

「循環型の経済は、それでも服を消費していいのだというメッセージを送ってしまう。今ある服をこれからも使うために、服が傷んだり、壊れても、修理しようという人が増えること。修理できる場所が増えることが重要」と話しました。

業界の責任、あなたの責任

ノルウェー消費機関研究の調査によると、ノルウェー人はひとりあたり年に23キロの服を捨て、そのうち8%は購入後に一度も着られないままゴミ箱行きとなる。石油でお金持ちの国の「買って、すぐ捨てる」道徳観は問題となっている Photo: Asaki Abumi

どの講演者も、ファッション業界は服を大量生産しすぎていることを問題視し、「シーズンごとに新しい服を着こなす人」を「おしゃれ」とする風潮、「流行」や「セール」というこれまでの当たり前に、警報を鳴らしました。

SDGsの目標12は「つくる責任、つかう責任」です。今後は、大量生産する企業だけではなく、次々と消費へと誘導してきたファッション雑誌などのメディアやインフルエンサーも方向転換が必要になるのかもしれません。「おしゃれ」の定義が変わる予感がします。