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小山薫堂が考える「これからの匠」に必要なもの/特別企画【新時代の匠たち】vol.01

PR by LEXUS 公開日:

匠とは、冒険者である

「匠」というと、連綿と受け継がれてきた技を継承している職人、というイメージが一般的だと思います。でも、ぼくの考える匠とは、“いままでにない価値をつくり出そうとしている冒険者”のことなんです。

もう少し詳しく言うなら、“ただの継承だけではいつか終わってしまうという危機感と未来へのビジョンをもって、あたらしいことに挑戦をしている人”。「LEXUS NEW TAKUMI PROJECT」が4年目を迎えた今、職人の皆さんの「匠」としての姿勢は、確実に磨かれてきたと思います。

いわゆる職人さんたちのなかには、自分の中でのみ生きてきた人が多い気がします。ですが、このプロジェクトを通じて、いろんな職能をもつ人たちが壁を越えて出会う機会をつくることができました。

彼らがお互いに刺激し合うことで、より高みを目指そうという意欲が起きるような化学反応が起きた。参加していただいている匠の皆さんの輝きが、より増した気がします。これこそが、今までプロジェクトを続けてきたいちばんの成果ですね。

誇りと素直さのバランス

自分をどう見つめるかって、すごく大切です。

一人で試行錯誤していると、自分を見つめるのは自分でしかないわけです。鏡を見ても自分しか見えなかったものが、自分以外の人たちを鏡にすることで、「俺ってまだこんなに未熟だったのか」とか「その視点はまったくなかったな」と思い至ることができる。自分の目指す場所がより明確に見えるんですね。

そして、そのとき必要なのは、好奇心なんです。

自分のなかの好奇心を絶やさない人こそが新しいプロダクトを生み出していると思うし、いままでの自分の殻を打ち破る活動をしているんじゃないかな。そして、それは匠に限らず、いま仕事をしているあらゆる人に共通していると思います。

いま、社会全体が検索型の思考になっているじゃないですか。検索すれば、確かになんでも見つけることができます。けれど、検索しえないものには絶対にたどり着けないんですよね。自分の仕事はこれだと決め込んでしまって関係ないものには興味を抱かず、自分の欲しいもの、理解できるものしか手に入れようとしない。でも、好奇心っていうのは、予期しないものに出会ったときの心のときめきのようなものなんですよね。

小山さんのオフィス受付には、徳島県の永原レキさん(2016年度「匠」に選出)のプロダクト<br>「空海藍Surfboard」が飾られている

「なんでこれを好きな人がいるんだろう」とか「なんでこんなものがウケてるんだろう」って、好奇心は、嫌いなモノにも興味を抱かせる。“好きの反対は嫌いじゃなくて無関心”だってよく言いますけれど、それによく似ているのかな。嫌いなものでもいいから興味をもつと、そこから何か新しいものを生み出せる可能性が高まるんです。

このプロジェクトも、匠にとって新しい出会いをつくり、好奇心を抱かせるものとして機能してきたといえるかもしれません。ぼくやメンター(※1)の方々が「こういうものを作ったらどうだろう」と言っても、「なんでこれがいいんですか?」と拒絶する匠もいれば、一方で、ちょっとした思いつきを素直に聞いてくれる匠もいます。

必要なのは、誇りと素直さのバランスだと思うんです。徹頭徹尾、素直すぎたら職人ではなくなる気もします。でも、シャッターを閉じてしまうのもよくない。そのバランスが重要なのは、何も職人だけではない。誰にでもあてはまることなのかもしれません。

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(※1)メンター…匠の工房に訪れるなどし、プロダクトやそのあり方について匠にアドバイスをおくり、プロジェクトを通して匠のサポートをする。メンターをつとめるのは、生駒芳子さん(ファッション・ジャーナリスト/アート・プロデューサー)、下川一哉さん(デザインプロデューサー、エディター、株式会社 意と匠研究所代表)、川又俊明さん(クリエイティブプロデューサー)の3名。

いま求められるのは、本物であること

匠の皆さんとレクサスとの共通点をあえて言葉にするなら、ラグジュアリーだと思います。

ラグジュアリーとは、ただ豪華ということでもなければ、ましてや値段が高いことではありません。おそらく今の時代、ラグジュアリーが意味するのは“本物である”ということ。そして、本物であるとは、“愛され力がある”ということだとぼくは思っています。

匠たちが作るものには、彼らの努力や技術といったものが積み重ねられています。それを手に取った人が、かたちだけを見て欲しいと思うこともあるかもしれないし、かたちには関心がなくても作り方を見て欲しいと思うこともあるかもしれない。いろんな「欲しい」が生まれてくると思うんですが、匠のプロダクトを手に入れることは、その人の人生の一部を手に入れるような感覚を起こさせます。

いま身につけているピンバッジは、プロジェクトで知り合った竹藝家がつくったものですが、ほんとうに気に入っているんです。それもこれも、完成するまでの苦労や匠のテクニックを知っているからこそ。ほかのものよりもちょっとだけよくするために、手を抜かず、突き詰めていく。そういった匠の姿勢を知り、本物に出会うことで、ただのピンバッジに“愛され力”が生まれるんですね。

お気に入りのピンバッチは大分県の麻生あかりさん(2017年度「匠」に選出)の作品

ディテールまでこだわるレクサスの徹底したつくり込み、言い換えると「クラフト性」のようなものに、匠との共通点があるのかなと思います。そして、それこそがラグジュアリーだと思うんです。

ぼく、モノが大好きなんです。以前、こんまりさん(近藤麻理恵)にぼくの出ているラジオのゲストとして出演してもらって片付けの相談をしたことがあるんですけれど、「小山さんに片付けは無理です」って言われたくらい(笑)。自分がときめくもので人生を埋めているし、その多くがクラフト性のあるものです。

江戸小紋のネクタイだとか、かき氷専用皿だとか、このプロジェクトから生まれたものをいくつも持っていますけれど、共通項は使っていて心地よいこと。ずっと使いたくなるもの。愛され力のあるものばかりなんです。

LEXUS NEW TAKUMI PROJECTは、匠と社会を繋げる

プロジェクトが始まって以来、常に言い続けてきたことがあります。それは、どんなプロダクトを生み出すのかと同じくらい、生み出したプロダクトが誰に出会うかによって価値が変わるということ。巣立っていく匠たちがどれだけいい出会いをするか、いつも考えています。

匠が出会う相手は、メンターもコラボするクリエイターもそうだし、プロダクトを置いてくださるショップもそう。そして、何よりもプロダクトを買ってくれるお客様が重要です。パトロンと言ってもいいかもしれませんね。

そして、いいパトロンはなにも1万人も必要なくて、10人くらいに出会えればいい。たくさんの人に出会うというよりは、センスに長けて自分のプロダクトを愛してくれる理解者に認められることが、その人にとっていい人生が拓けていくものだと思います。そういう意味でも、レクサスオーナーは匠にとって理想的なパトロンであり、もっと心を寄せてくれたらいい。このプロジェクトはレクサスオーナーのためでもあり、さらにオーナーによって成長するプロジェクトでもあると思っています。

今回、京都で展覧会を開催することによって、京都の職人と出会ったり、海外の方に知られたりと、より出会いの機会が増えることを期待しています。


(撮影/有村蓮 文/年吉聡太)


●小山 薫堂(こやま・くんどう)
放送作家。脚本家。1964年生まれ。大学在学中よりラジオ番組の放送作家としての活動をスタートし、『カノッサの屈辱』『料理の鉄人』といった数多くの名番組を手がける。現在は、株式会社オレンジ・アンド・パートナーズの代表取締役社長をはじめ、株式会社下鴨茶寮代表取締役社長や京都造形芸術大学副学長・芸術学部教授を歴任。初の映画脚本となる『おくりびと』では第81回米アカデミー賞外国語映画賞を受賞するなど多岐にわたる活躍でも知られる。生まれ育った熊本の名物キャラクター・くまモンの生みの親でもある。


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特別企画【新時代の匠たち】は全5回でお送りします。

  1. 小山薫堂が考える「これからの匠」に必要なもの
  2. ふたりの「匠」が、隈研吾と出会い気づいたもの
  3. 伝統工芸の、新たなるはじまり
  4. 隈研吾が、これからの伝統工芸に思うこと
  5. 新時代の匠を京都で知る3日間