たった一日で成就した歴史的出来事だった。トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長、そして文在寅大統領は朝鮮戦争休戦協定締結後66年間にわたって分断と対決の象徴であった非武装地帯(DMZ)内の板門店で会い、握手を交わした。トランプ大統領の予測不可能で大胆な外交でなければ、このようなサプライズ会合ができただろうか。遅いが絶えることなく続いてきた朝鮮半島の平和への流れが作り出した結果という点も無視できない。
トランプ大統領と金委員長は6月30日午後、板門店の軍事境界線(MDL)上で会った。トランプ大統領は、北朝鮮の地に足を踏み入れた最初の現職の米国大統領となった。MDLを越えて北側に20歩歩き、記念撮影をし、再び金委員長と並んで南側へ渡り、「自由の家」で1時間近く対話した。ベトナム・ハノイでの米朝首脳会談が決裂に終わって4ヶ月。米朝首脳間の対話の前後に文大統領が合流し、米朝韓の三者の会合も成し遂げた。
トランプ大統領は「文大統領が歴史的瞬間と言ったが、その通りだ。これまで私たちが発展させてきた関係は大きな意味があったと考えている」と話した。金委員長は「私たちが素晴らしい関係でなかったら、一日でこのような再会が電撃的に成立することはなかった。このような素晴らしい関係が難関と障害を克服する神秘的な力となるだろう」と話した。
今回の突然の会談は、トランプ大統領の訪韓を前にその可能性は言及されていたものの、誰もが「まさか…」と思っていたことだ。トランプ大統領のDMZ訪問は、2017年11月の訪韓時、天候不順のため不発に終わっていた。米朝首脳が最近「興味深い内容」が書かれた親書をやりとりし、水面下である種のイベントも語られていただろうが、その試みはトランプ大統領の即興的な提案だった。トランプ大統領が突然ツイッターで発信し、金委員長がすぐに駆け付けて電撃的に成就したという。
会談の成就は、米朝双方の利害が一致したことによる。来年大統領選挙を控え、外交的な成果がほしいトランプ大統領は、北朝鮮の核問題の進展を見せる象徴的なものが必要だった。金委員長も中国の習近平国家主席の訪朝後、新たな局面の転換のきっかけを求めていた状況で「トップダウン」式の首脳交渉の復活を見せる仕掛けが必要だった。この会談は準備されたものでない即席の会談だったが、問題山積の非核化への道のりの転機になりうる。
しかしながら、派手なやり方が問題の実質的な進展を意味するわけではない。ショーが終わった後には、頭の痛い実務者協議が待っている。今回の会談で米朝はハノイの決裂以来4ヶ月以上止まっていた対話を再開した。しかしながら、消えかかっていた対話を生き返らせた以外に大きな変化はないようだ。金委員長は依然として米国に「方法の修正」を求めているだろうが、トランプ大統領は「対北朝鮮制裁は続く」として、「先に非核化」の方針を再確認した。
トランプ大統領は今後2~3週間以内に北朝鮮との実務者協議が始まるだろうと予告した。北朝鮮は強硬派のポンペオ国務長官を協議から外すよう主張し、新たな米国側の協議チーム構築を期待しているが、トランプ大統領はポンペオ長官とビーガン北朝鮮担当特別代表の既存の協議チームを維持する方針だ。首脳同士がいい関係であっても実質者協議は違うという点をはっきりさせた。
トランプ大統領は金委員長のワシントン訪問を要請した。しかしながら、これは実務者協議を通して北朝鮮の完全に検証された非核化をはっきり明示し、迅速な履行のロードマップが完成した後、両首脳が会って署名する場面を提示したものだ。トランプ大統領は「急ぐ必要はない。速度よりも正しい協議を追求する」と話した。来年の大統領選の日程を考慮すると、米朝間の包括的合意と北朝鮮の非核化履行を急ぐ必要があるが、悪い交渉はしないと繰り返し強調した。
板門店の会談は南北の対話にもとりあえず青信号を送った。文大統領はトランプ大統領を「偉大な変化をもたらす主人公」とたたえ、今回の会合で米朝の首脳に主役を渡し、進んで助演に徹した。一方でトランプ大統領を間に挟んで金委員長と対話を続け、親密な間柄を強調した。これまでの韓国に対する「口出しするな」という北朝鮮の態度がどのように変わるのか注目だが、米朝関係と南北関係の並行した進展は期待できそうだ。
今回の板門店での米朝韓の会合が朝鮮半島の膠着状態の突破口となる実質的なきっかけになるのか、あるいは時間を稼いで状況を調整するための絢爛なショーだったことが判明するのか、時間をおいて確認する必要がある。それは遠からず再開する非核化の実務者協議にあたる北朝鮮の姿勢の変化にかかっている。金委員長が米韓の首脳、さらに国際社会に新たな期待をもたらしたが、今回も完全な非核化を行動として見せなければ、今回の会合は幕あいの仰々しいイベントとして終わってしまうだろう。
(2019年7月1日付東亜日報)
(翻訳・成川彩)