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科学調査に参加する、新しいツアーが熱い

ニューヨークタイムズ 世界の話題
アースウォッチが企画したカリブ海・ケイマン諸島沖のサンゴ健康度調査の参加者=Katie Correia for Earthwatch via The New York Times/©2019 The New York Times

市民科学旅行(シチズン・サイエンス・トラベル)、あるいは自然観察やデータ収集を通じて科学的な研究に積極的に参加する旅。そんな旅行形態が人気だ。観光や旅行を通じて世界各地の自然保護や環境保全への理解を深めるエコツーリストが増えていることも、市民科学旅行の人気を後押ししている。市民科学の旅行者は訪問地域の観光保護にも積極的に貢献したがっている。

科学的な調査活動旅行を扱っているのは以下のような団体だ。

<アースウォッチ(Earthwatch)>

国際的な環境NGOアースウォッチは、気象変動や海洋の健全性、野生生物や生態系に焦点を当てた調査旅行にボランティアを派遣して50年近くになる。こうしたエコツーリストたちは、地球規模での環境保全に少しでも役立てようと環境データを集め、分析している。

「この5年間で、ボランティアの参加は20%も増えた」とアースウォッチの米国CEOスコット・カニア。「市民科学は生態系の諸問題を自らの問題としてとらえ、参加者に解決の一助になる機会を提供する」と言った。

2017年のアースウォッチ報告書によると、科学者とボランティア参加者は、新種を発見したり自然保護に影響するデータを集めたり、コスタリカで見つけたオサガメ(訳注=世界最大のカメで熱帯、亜熱帯の海に分布する)のように絶滅の危機に瀕(ひん)している野生生物を保護したりしてきた。同NGOが企画する最新の探検調査は、市民科学者を連れてペルーに1週間滞在し、世界最大といわれるジャイアントマンタ(訳注=オニイトマキエイ)を撮影し、測定して遺伝子サンプルを集めるといった企画だ。目的はジャイアントマンタの乱獲防止。

(この「アースウォッチ・ペルー調査旅行」の費用は1人2750ドルで、部屋代・食事代、研究許可費用、科学装置費用、空港・地上移動費、調査中の保険料を含む)

<リンドブラッド・エクスペディションズ-ナショナルジオグラフィック(Lindblad Expeditions-National Geographic)>

クルーズ旅行会社のリンドブラッド・エクスペディションズ-ナショナルジオグラフィックは、18年の試験的プログラム「市民科学バイオブリッツ」の成功に乗じて、新たに19日間の探検旅行「サウスジョージア(訳注=南大西洋の島)&フォークランド諸島と南極」と「サウスジョージア&フォークランド諸島」を予定している。

「人は休暇以上のことを欲している」と言ったのはナチュラリストのジミー・ホワイト。彼は19日間の探検旅行の参加者を引率して生物多様性の記録とオウサマペンギン、アホウドリ、オットセイをID写真で追跡調査する。「自然界を記録している専門家と現地で学ぶほど良い授業はない」と彼は言った。

20年に始まる同社の探検旅行では、アラスカのザトウクジラを監視し、南太平洋でサメを追う。さらに南極半島でマイクロプラスチック汚染の実態を調べる。

(リンドブラッド・エクスペディションズ-ナショナルジオグラフィックの探検旅行は2人部屋、食事、飲み物、周遊旅行代、乗船医師雇用費、指定のホテル代、空港への送迎代込みで1人1万7940ドルから)

<バイオスフィア・エクスペディションズ(Biosphere Expeditions)>

「初心者から専門家まで誰もが(野生生物の)保護に役立つ何かを持ち合わせている」。国際野生生物保護NPOバイオスフィア・エクスペディションズ事務局長のマティアス・ハマーは言った。同NPOの人気探検旅行の一つが、キルギスのユキヒョウ(訳注=体長100~150センチ。長い体毛で覆われ、ヒマラヤ山脈やパミール高原などの高山・山岳地帯に生息。国際自然保護連合は1972年に絶滅危惧種に指定した)の調査だが、ケニアの「ビッグ5(訳注=ライオン、アフリカゾウ、アフリカ水牛、サイ、ヒョウ)」の観察、ルーマニア・トランシルバニアアルプスの野生生物の追跡調査やスウェーデンのヒグマ(ブラウンベア)の調査など新たな旅シリーズを手掛けている。

ハマーは「科学的な論議の核は確実なデータにある。この惑星を保護するのに役立つデータをみんなで集める。私たちはそれを後押しする」と語った。

(バイオスフィア・エクスペディションズの探検旅行費は、部屋代と食事代、活動費、集合地からの交通費込みで1人1670ドルから。目的地や期間によって費用は異なる) 一方、エコツーリストに対応したホテル、リゾートもある。

<シンタマニ・ワイルド(カンボジア、Shinta Mani Wild in Cambodia)>

訪れる地域に深くかかわりたい観光客の要望に応えて、さまざまな環境ガイドを提供するホテルもある。シンタマニ・ワイルドは、カンボジア南西部カルダモン山脈にできた新しい形のテント式野営場で、約324ヘクタールに及ぶ川の流域を密漁や伐採、採鉱から保護するためにNPOワイルドライフ・アライアンス(Wildlife Alliance)とカンボジア政府が提携した。

「我々の客はここに生息する野生生物を保護するため、密猟者を監視し迷路のように仕掛けられたわなを撤去する警備隊員のオートバイに同乗して、満点のスリルを味わえる」と総支配人のSangjay Choegyalは話した。客は熱帯雨林地帯の珍しいランの研究で植物学者を手助けすることもできる。

(費用は2人用テントで、食事、飲み物、観察ガイド付きのプライベート活動及び周遊旅行代、温泉治療、執事付き、空港送迎、税金込みで1テント1泊2345ドルから。ただし13歳以上で、最低でも3泊が条件だ)

<デイドリーム・アイランド・リゾート(オーストラリア、Daydream Island Resort in Australia)>

オーストラリア北東部クイーンズランド州と世界最大のサンゴ礁地帯グレートバリアリーフの間に位置するウィットサンデー諸島にあるデイドリーム・アイランド・リゾートは改装された。同リゾートの海には700フィート(約210メートル)近くに及ぶ多様なサンゴ礁が広がっている。同リゾートは新たな教育センターであり海中観測所でもある。旅行者はアカエイの餌付けやサンゴの観察、海の健康度調査をしている地元の海洋生物学者に協力する「リーフレンジャー(礁観察員)」になる機会が与えられる。

(部屋代は1泊392豪ドル<1豪ドル=80円換算で約3万1千円>。大人2人に朝食、12歳以下の子どもは3食付)

<レフヒオ・アマソナス(ペルー、Refugio Amazonas in Peru)>

30年前にTambopata Macaw Project(タンボパタ・コンゴウインコ・プロジェクト、訳注=ペルー南東部タンボパタ川上流域の熱帯雨林に生息する色鮮やかな大型のインコ「コンゴウインコ」を守る活動から始まった生態系保護プロジェクト)を立ち上げた旅行業者レインフォレスト・エクスペディションズは16年、「ワイアード・アマゾン」と呼ぶ市民科学者向けの熱帯雨林保護活動に着手した。

タンボパタにあるレフヒオ・アマソナスのジャングルロッジで、ゲストは「AmazonCam Tambopata」(訳注=アマゾンジャングルの奥深い地に監視センサー付き高感度カメラを設置して野生生物の生態を撮影したり、地域内の特定動物の生息数を計算したりするのを手助けする活動)や昆虫を収集したり参加者が見つけた新しい種に公式名称をつける「新種発見」など相互的な市民科学プログラムに参加する。

「すでに1500人以上のゲストがこうした活動に参加した」とレインフォレスト・エクスペディションズのマーケティング部長、ロシオ・グスマン。「体験はゲスト個々人と環境を結びつけ、環境を保護したいという思いにつながってゆく」と説明した。

(1泊602ドルからで、河川を含む交通費、食費、活動費、周遊旅行代を含む)(抄訳)

(Nora Walsh)©2019 The New York Times

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