Kenneth Li and Ju-min Park
ロイターは3日、同国が世界初の商業用5Gを米中に先駆けて開始したとする韓国当局の話を伝えた。
韓国の主張は、5G対応のスマートフォン(スマホ)に同通信サービスが実際につながったことに基づいている。米国の各電話会社は韓国の「一番乗り」という主張に異議を唱えている。
記事が3日に配信されると、米通信大手AT&Tとベライゾン・コミュニケーションズは同日ロイターに対し、韓国の主張に猛反発する文書を送付した。
AT&Tは、昨年12月中に米12都市で5Gネットワークを開始する計画だと同月18日に発表しているため、自社が世界初だと主張する。ただし5Gが使えるのは、それを可能とする場所で使用するためのモバイル機器を使用する消費者に限られており、5G向けスマホには対応していない。
ベライゾンはベライゾンで、自社が世界初だと反論している。ロイター報道から数時間後、同社はすでに5Gネットワークを開始しており、モトローラ製の新型スマホで利用できると主張した。ただし、利用できるのはシカゴとミネアポリスのみだ。
「われわれは自社の記事を支持する」とロイターの広報担当者は語った。
各社が互いに反論し合うという過熱した状況は、業界の覇権を巡る争いがいかにヒートアップしているかを物語っている。アクセンチュアの試算によれば、向こう7年の投資額は米国だけで2750億ドル(約30.6兆円)に及ぶ。
勝者は2035年までに幅広い業界から年間12.3兆ドルの収益を生み出す上で中核を担うとみられると、金融データ会社IHSマークイットは予想する。
5Gのデータ通信速度は、4Gと比べると少なくとも20倍速い。自動運転車や拡張現実(AR)からスマートシティーや人工知能(AI)に至るまで、次の時代の目覚ましい進歩を支えることになる。
「われわれの業界では一番になることは重要であり、そのように認識されたいと考えている」とAT&Tの広報担当者は言う。自社のネットワークをアップデートするために過去5年で1300億ドル費やしたことを明らかにした。
覇権争いは消費者にとってあまり重要ではないと指摘する専門家もいる。「そのような反応が起きている理由は、これが本物のネットワーク革命ではなく、発表されながらなかなか実用化されないマーケティング上の『ベイパーウエア』を巡る争いだからだ」と、モフェットナサンソンの通信専門家クレイグ・モフェット氏は指摘する。
「5Gネットワークを提供していると各社主張するが、ユーザー体験に影響を与えるようになるのはまだ何年も先の話だ」
自慢する権利は別にして、一番になることは国家威信の問題でもある。トランプ米大統領は通信業界の未来を支配することに興奮するあまり、まだ存在していない「6G」技術について2月21日にツイッターに投稿した。
「なるべく早急に米国で5G、あるいは6Gの技術が欲しい。現在の基準よりもはるかに強力で速く、賢い。米国企業は一段と努力する必要がある。でなければ後塵を拝することになる」とトランプ氏はツイートした。ホワイトハウスはコメントの求めにすぐには応じなかった。
<5G競争>
韓国の電話各社は5日までに5Gネットワークを開始する計画を発表していた。
だが、現地時間の3日午後5時までに、ベライゾンが予定を1週間早めて4日にも開始するとのうわさが広がり始めたと、韓国の科学技術情報通信省の当局者はロイターに語った。
ベライゾンからの「逆転勝ち」を狙うため、韓国の電話各社はベライゾンの計画を知ってからわずか6時間後に自国の5Gネットワークを一斉開始することで急きょ合意したと、同当局者は匿名で明らかにした。
韓国のSKテレコムとKTは現地時間の午後11時(1400GMT/東部時間午前10時)にスイッチを入れた。ベライゾンが米国の2市場で東部時間午前10時55分(1455GMT)に開始したことを確認する1時間近く前になる。
「あらゆる携帯電話会社にとって、世界初と呼ばれることは非常に重要だ」と同当局者は語った。
ベライゾンが開始時期を1週間早めた理由について、同社の広報担当者は準備が整ったからだと説明した。「われわれの顧客は待ちわびており、5Gを利用したがっていた」と付け加えた。
(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)