高校球児たちが熱戦を繰り広げる「甲子園大会」が、アフリカ東部のタンザニアで開かれている。昨年末にあった第6回大会は、日本の支援で整備された「ダルエスサラーム甲子園球場」で開催。ベースは春の甲子園で使われたものを寄贈してもらった。仕掛け人の元球児に話を聞くと、野球への深い情熱を語ってくれた。
タンザニアで甲子園大会の開催を企画したのは、友成晋也さん(54)。小学5年の時から野球を始め、高校時代は甲子園出場を目指して汗を流した。大学を卒業後、不動産会社を経て国際協力機構(JICA)の職員に。アフリカ各国で働きながらNPO法人「アフリカ野球友の会」を設立し、野球の普及に力を入れてきた。
最初に赴任したガーナでは、代表チームの監督にも就任。1999年のシドニー五輪アフリカ予選では準決勝まで進出し、各国を驚かせた。野球がオリンピック種目から外れた後は、ガーナの球児たちと協力してガーナ版甲子園大会開催を目指し、普及活動を支援した。
転勤先のタンザニアでも、その情熱は衰えなかった。野球を始めたガーナの子どもたちが態度や協調性に加え、成績が良くなることを知った友成さんは、タンザニアの学校の校長先生にこうアピールした。「成績が上がるスポーツがあるんです」
進学率を上げたい校長先生は、「ぜひ、我が校に野球チームを作って」と乗り気になった。
2014年に、4チームが参加したタンザニア版甲子園大会を初めて開催。各地に派遣されていた青年海外協力隊の力も借りて、徐々に参加チームは増加。昨年12月の第6回大会では、全国から野球が13チーム、女子ソフトボールチームも5チームが参加。14歳~17歳前後の若者計約270人が集まった。
「甲子園」と名付けられた球場は、現地の日本大使館や大阪北ロータリークラブの支援で学校の敷地内に整備され、数百人分の観客席も設置。勝利したチームは抱き合って喜び、応援団も手拍子をしたり雄たけびをあげたり踊ったりと、盛り上がった。
友成さんは「1人の野球人として、野球が持っている大きな価値をアフリカで気づくことができた」と話す。「日本の高校野球は、勝ち負けだけでなく、礼儀や規律も教えてくれる。アフリカの若者の自立心や責任感、チームプレーを育み、地域のリーダーを育てる。これこそ、アフリカが今後発展するうえで必要なことだと思う」