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アメリカ、愛国主義者の「怒り」を追って

世界報道写真展から――その瞬間、私は
Espen Rasmussen/Panos Pictures
Espen Rasmussen/Panos Pictures

ライフルを手にこちらを見つめる中年男性。「多くの人が同様にポーズを取ってくれた」。ノルウェーで雑誌のフォトエディターもつとめるカメラマン、エスペン・ラスムッセン(42)は振り返った。写真は米ウェストバージニア州の田舎町で撮ったものだ。

欧州で進む右傾化を2015年から追いかけてきた。そんな折、米バージニア州シャーロッツビルで17年夏、白人至上主義者らが集会を開き、反対派と衝突。ラスムッセンは、米国で愛国主義者や白人至上主義者の「怒り」が露わになってきたことに関心を持ち、その秋、バージニアを含む東部3州を取材した。

被写体となったトミー・キンダーには、彼が墓地で芝刈りをしていた時に声をかけ、翌日、自宅に招かれた。ラスムッセンは、米国では自分を守る権利の象徴である銃を手にしてほしいと頼んだ。「不審者が来たらいつでも撃つ準備ができている」とキンダーは静かに話した。ラスムッセンは「彼は紳士的で祖国を愛していた。ある意味で今の米国を体現していると感じた」と印象を話す。

キンダーに定職はなく、妻と貧乏生活。コミュニティーもみな貧しく、麻薬やアルコールの中毒者も多い。キンダーを含め、接した人たちの多くが「トランプ大統領ならこの悲惨な状況を改善してくれる」と信じていた。トランプ支持には共感しないが、人々の厳しい現実は理解できた。

ラスムッセンは「米国には表現の自由がある。だが、差別的な表現や暴力は許されない」と強調する。一方で、「写真とは人々の暮らしに近づき、彼らのストーリーを公正に誠実に伝える手段だ」と考えている。

■分断する米国社会

バージニア州シャーロッツビルで2017年8月、米南北戦争で奴隷制維持のために戦った南部連合の英雄ロバート・E・リー将軍の像の撤去に抗議する白人至上主義団体と、反対派市民が衝突し、死傷者が出た。米国の分断を象徴する出来事として大問題となり、当初、白人至上主義者を非難しなかったトランプ大統領に批判が集中した。

その後もトランプは移民や黒人、性的少数者を排除するなど、社会の分断をあおる姿勢を変えていない。昨年11月の中間選挙は、下院で民主党、上院で共和党が多数派の「ねじれ議会」となったが、トランプは「勝利宣言」をした。