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ビーチ大国オーストラリアでシーズン本番 ライフセーバーの鉄人レース

Insight 世界のスポーツ
鉄人レースでボードから砂浜に上陸。サーフスキーに切り替わるまでの距離を男性選手たちが駆け抜ける=小暮哲夫撮影
鉄人レースでボードから砂浜に上陸。サーフスキーに切り替わるまでの距離を男性選手たちが駆け抜ける=小暮哲夫撮影

救命用のボードを脇に抱えた選手たちが一斉に海に向かって走り出す。ボードに腹ばいになって両手で水をかいて進む。押し寄せる波をものともせず、その姿はあっという間に小さくなり、陸に向かって再び大きくなった。陸に戻って砂浜を駆け抜けた後、次はサーフスキーで再び海に乗り出した。

豪東部サンシャインコースト。11月10日にあったライフセービング競技会「オーシャン6」の「アイアンマン」「アイアンウーマン」レースだ。来年2月まで全6回、場所を変えて競い、年間王者を決める。

シリーズ2回目のこの日、決勝に進んだのは、豪州とニュージーランドのトップ選手の男女各20人。ボード(約600メートル)、サーフスキー(約800メートル)、スイム(約400メートル)で陸と海を往復し、それぞれの間におよそ100メートルずつランが入る。カヤックに似たサーフスキーは、細長い船体の上に脚をむき出しに置く格好で乗り、パドルを使って進む。

ゴール後に3分間のインターバルを終えて、もう1レース。2レースの合計タイムで順位を決めた。
女子で2位に入ったジョージア・ミラー(22)は「見た目以上に長くてタフだった」と悔しそうな笑顔を浮かべた。毎日5時間のトレーニングをこなすプロ選手だ。

■トップ選手の収入、1000万円超も

トップ選手となると、スポンサー収入と賞金で年間15万豪ドル(約1200万円)ほどを稼ぐ。身体能力は高い。男子なら、足を取られる砂浜の上でも1キロ3分半ほどで走り、プールで100メートルを1分10秒で泳ぐトレーニングを一度に40回もこなすという。

主催団体「サーフライフセービング・オーストラリア」によると、豪州の各地のビーチには、年間のべ計3億人が訪れる。人口は2500万だから、1人あたり年10回以上、ビーチに行く計算だ。必ずいるのが、赤と黄色のユニホーム姿のライフセーバーたち。計4万8000人の熟練したライフセーバーの大半がボランティア。救助活動は年1万件以上に上る。

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ランのコースでは間近で観戦できるポイントも。なかなかの迫力だ=小暮哲夫撮影

競技会は、国内で年間に大小500ほども開かれている。この日も前座で、中高生から一般まで約600人が競った。15歳以下男子のスイムで1位になったリバイ・ペン(15)は昨年からライフセーバーのボランティアを始めた。「一度だけど、救助したこともあるよ」

大会に出場するには、ライフセーバーとして一定時間、ビーチで活動することが条件。サンシャインコーストのあるクイーンズランド州では年に25時間以上。プロ選手でもその基準をクリアしなければならない。

鉄人レースを構成するボードやスイムは、実際の救助でも必須の要素だ。ランも同様。監視台で救助が必要な人を見つけたら、海に乗り出すためにボードを持って素早く砂浜を走らなければならないからだ。サーフスキーはレース用に開発されたものだが、変化する波や天候の状況にも対応するスキルがいるのは、ボードやスイムに共通する。トップ選手のコーチ、ザイン・ハミル(38)は「あらゆる気象条件に対処することが大切。(海の)すべてのコンディションが完璧なコンディションと我々は言う」と表現し、こう語る。「スキルと身体能力に優れ、海の状況を知るトップ選手は、まさに優秀なライフセーバーなんだ」(文中敬称略)