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子供たちが跳びはねる希望の風景、アフリカ最大の水力ダムが一変させた

世界報道写真展から――その瞬間、私は
ファウスト・ポダヴィーニ Fausto Podavini
ファウスト・ポダヴィーニ Fausto Podavini

「天国の一部のような雰囲気でした」。イタリア人のフリーカメラマン、ファウスト・ポダヴィーニ(45)は2011年に見たアフリカ東部・エチオピアのオモ渓谷の風景をそう振り返る。先住民カロ族の子どもたちが笑い声と歓声をあげながら、オモ川を見下ろす自然の崖の上から飛び降りて遊んでいた。この景色が続くことを疑わないかのような子どもたちの無邪気な跳躍に、「希望する未来」を感じていた。

カロ族は、オモ川でとれた魚と洪水による肥沃な土地に育つ農作物に支えられて暮らしていた。オモ川が流れ込む渓谷は驚異的な生物多様性に恵まれていた。 だが、その状況は大きく変わっていく。

11年にこの渓谷の撮影を始めたのは、アフリカ最大の水力発電ダム「ギベⅢ」の計画を知ったからだった。好景気にわくエチオピアを支え、輸出できるエネルギーを供給し、水利施設を実現させる。そううたわれたダムには、一方で人間と環境のバランスを崩す恐れがあった。

17年までこの地を訪れ、変化の様子を写真におさめた。子どもたちが跳びはねていた風景は、全てが変わっていた。川の水位は下がり、奥に見えていた森林は大規模な綿花農園として開墾された。子どもの姿はなく、人口が激減したカロ族は苦しい生活を強いられていた。

露出した木の根。観光客からもらったブラジャーを身につけた先住民の女性。6年間に撮りためた写真は、流域の環境の変化を浮き彫りにした。18歳からカメラで身を立ててきたポダヴィーニは言う。「写真は私の人生の喜びであるけれど、最大の心配をもたらすものでもあるんです」

■エチオピアの成長

エチオピアでは1980年代半ばに大干ばつが起き、約100万人が飢餓で亡くなった。しかし、政府が経済を開放した2000年代以降、年10%前後の高い経済成長を遂げるようになった。大規模なインフラ開発事業も相次ぎ、ギベⅢダムは06年に着工し、15年に完成。約17億ドルの建設費が投じられた。

だが事業の影響で、先住民が生活の糧としてきた農地や牧草地がやせてしまい、移住を余儀なくされたとの批判も出ている。