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エチオピアの「茶道」 コーヒーセレモニーへようこそ

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オモバコ村のコーヒー林

今回ぼくが17年ぶりに訪ねたエチオピア西部のオモバコ村は、コーヒーづくりが盛んな地域だ。5月下旬、村の周りに点在するコーヒー林には、青々としたコーヒーの実がなっていた。収穫期は9月~11月。この頃になると実は赤く色づき、村人たちが総出で収穫作業に励む。

オモバコ村のコーヒー林

エチオピアは世界の上位10カ国に入るコーヒー輸出国であると同時に、消費国でもある。生産量の約半分を国内で消費する。一般家庭では朝、昼、晩と1日に最低3回はコーヒーを楽しみ、客人が訪れると、そのたびに、コーヒーを振る舞う。

オモバコ村の外れにあるコーヒー豆の脱穀工場を訪ねると、事務所の軒先にじゅうたんを敷いて、従業員や近所のコーヒー農家の人たちがくつろいでいた。女性従業員のカルチャさんが、伝統的な「コーヒーセレモニー」を披露してくれた。

コーヒー豆を洗う

まず、イネの葉のような青々とした細長い葉っぱをじゅうたんに散らして飾りつけし、香をたく。そんな「場づくり」から「セレモニー」は始まる。

カルチャさんが準備したのはコーヒーの生豆だ。直径30センチほどの丸い鉄板の上で、米を研ぐようにして、両手で力を込めてコーヒーの豆を洗う。何度も水を換えて、丹念に。「おいしいコーヒーを淹れるためには、豆を最初にできるだけきれいに洗うことが大事です」とカルチャさんは言う。

コーヒー豆を煎る

次に、洗い終えた豆を小さなフライパンに移して、炭火の上で煎る。コーヒーの良い香りが辺りに漂い始める。豆は次第に茶色くなり、やがて黒くなる。全体が真っ黒になるまで深煎りするのがエチオピア流だ。

煎り終えると、黒光りする豆が入ったフライパンを持ってカルチャさんは客人のもとへ。客人たちは、フライパンからたちのぼる香ばしい香りを手のひらで鼻に運んで楽しむ。

コーヒー豆の香りを客人にかがせる

煎りたての豆を少し冷ましたあと、直径10センチ、高さ30センチほどの小さなうすに入れる。豆を挽く代わりに、木の棒でたたきつぶすのだ。

コーヒー豆をつぶす

粉状になったコーヒーを「ジャバナ」と呼ばれる黒いポットに入れて、ぐつぐつと煮出す。少し置いてコーヒーの粉を沈殿させた後、日本酒のおちょこのような小さなカップに入れて、客人たちに振る舞う。準備を始めてから2時間近くが過ぎていた。

ジャバナと呼ばれるポットで煮出したコーヒーをつぎわける

「砂糖を入れるか、そのままで飲むか」と聞かれた。何も入れずに飲む人もいるが、溶けきれないくらいの砂糖を入れるのが多数派だ。ぼくも多数派にならって砂糖を入れることにした。一般の家庭では、砂糖の代わりに塩を入れて飲むことも多い。

豆が真っ黒になるまで深煎りし、時間をかけて煮出しただけあって、できあがったコーヒーはどろどろしていて、味が濃い。日本で飲むすっきりと澄んだコーヒーのように繊細な酸味や香りは楽しめないが、それとは違う力強さがある。

準備を始めてから飲み終わるまで2時間以上。親しい人たちと雑談をしながら楽しむコーヒーは格別だ。これに比べると、日本のカフェで1人で飲むコーヒーは何とも味気ない気がする。

脱穀工場の工場長カドゥル

「どうだ。おいしいだろう。エチオピアのコーヒーは最高だ。ほかの国のコーヒーは飲んだことないがね」。工場長のカドゥル(22)の言葉に、ぼくは深くうなずいた。