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機中に18時間、耐えられる? 増える超長距離フライト、航空会社「快適」に知恵絞る

ニューヨークタイムズ 世界の話題
シンガポールと米ニューアーク間の新路線を飛んでいるシンガポール航空機=Singapore Airlines via The New York Times/©2018 The New York Times
シンガポールと米ニューアーク間の新路線を飛んでいるシンガポール航空機=Singapore Airlines via The New York Times/©2018 The New York Times

これまでで最長のノンストップ旅客フライトが、2018年10月に達成された。シンガポールから米ニューヨーク近郊ニューアークまでの9534マイル(1万5254キロ)〈訳注:この記事では1マイル=1.6キロ〉を、シンガポール航空のエアバスA350-900ULR型機が18時間半で飛んだ。専門家の間では、8千マイルを超える飛行は通常「超長距離」とされており、その記録が塗り替えられたことになる。

機体の軽量化と燃費効率の向上で、エアバスやボーイング(ドリームライナー)は航続距離の長い機種を開発している。1日近くも飛び続けることが経済的に見合うようになり、超長距離フライトの便数が増えている。

お尻の感覚がなくなりそうな超長距離便は、シンガポール航空の今回のフライト(逆方向は18時間45分かかる)にとどまらない。18年3月には豪カンタス航空が、ロンドンと豪西部パースを結ぶ路線の運航を始めた。大手航空情報会社OAGによると、飛行距離は約9千マイル。世界で3番目の長さになる。その上を行く第2位は、中東のドーハとニュージーランド・オークランド間を飛ぶカタール航空だ。18年9月には、キャセイパシフィック航空が香港と米首都ワシントンとの8153マイルを結ぶ便を就航させ、18年11月末にはニュージーランド航空がオークランドと米シカゴ間(約8200マイル)を飛ぶようになる。

20時間にもなろうかという空の旅を、少しでも過ごしやすくするにはどうしたらよいか。航空各社は、健康な機内食から体調維持まで、あらゆる知恵を絞っている。とくに、恩恵を受けるのは、ビジネスクラスだろう。シンガポール航空の今回の新路線は、ビジネス(最近の価格は往復で5千ドル)とプレミアムエコノミー(12月の価格で往復1498ドル)の2クラスだけで座席を構成している。中には、普通のエコノミークラスでも特典を設けている航空会社もある。

機内食はより健康に、よりよいタイミングで

シンガポール航空でニューアークからこの路線に乗るビジネスクラスの客は、機内食の選択肢が広がった。これまでも出ていたニューヨーク・マンハッタンの名店「ゴッサム・バー・アンド・グリル」のシェフ、アルフレッド・ポルターレによる料理がある。これに、米国の著名なヘルスリゾートグループ「キャニオンランチ」の低カロリー食が加わった。こちらは、プレミアムエコノミークラスでも楽しめる。例えば、エビのセビチェ(170キロカロリー)、オーガニックチキンのたたきとズッキーニヌードル(370キロカロリー)、レモン風味のエンゼルケーキ(140キロカロリー)といった具合だ。

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オーガニックチキンのたたきとズッキーニ・ヌードルを主体とした低カロリー食。シンガポール航空のニューアーク-シンガポール間で出されるようになった=Singapore Airlines/The New York Times/©2018 The New York Times

カンタス航空は、シドニー大学のチャールズ・パーキンズ・センターとタイアップ。新メニューとしてレモンとジンジャーの昆布茶、目覚めの一杯用の善玉菌入りジュース、催眠効果のあるティーを上の二つのクラス向けに用意した。さらに、離陸後に食事を出すのをあえて遅らせ、目的地の時間に近くなるようにして、少しでも時差ボケの解消を促すようにしている。

食べたいものを好きなときに持ってきてもらうのも、長旅のストレス解消の一つの方法だろう。夜半にコーラを飲みにいくのに、寝ている隣の人をまたがなくてもよいように(体を動かすという点では悪いことではないが)、ニュージーランド航空ではタッチスクリーンでスナックを頼めるようになる。

リラックス、水分補給、ヨガに睡眠

これだけの飛行時間になると、これまでのインフライト体操では不十分になる。そこで、搭乗前から始める解決策が編み出された。

カンタス航空のパース―ロンドン便。パース空港のビジネスクラス用の新しいトランジットラウンジでは、15分ごとにストレッチと呼吸法を取り入れた体操教室が開かれている。さらに、時差の解消に役立つ照明セラピー。果汁やハーブティーを活用した水分補給。それに、すべてのクラスの乗客向けに、戸外の空気を存分に吸い込めるテラスも用意されている。

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豪パース空港のカンタス航空の新しいラウンジに設けられた体操教室=Qantas via The New York Times/©2018 The New York Times。ストレッチと呼吸法を取り入れ、離陸前から体調を整える

ヨガを取り入れたのは、キャセイパシフィック航空。国際的なヨガスタジオ「ピュア・ヨガ」と提携し、新たに「Travel Well with Yoga(ヨガで空の旅を快適に)」という番組を流し始めた。ビデオが6本。ヨガと瞑想(めいそう)で血行をよくし、心身ともに解きほぐすことを狙う。

シンガポール航空とキャニオンランチのパートナーシップは、機内食にとどまらない。座席の画面では、運動生理学者がビデオでストレッチを指導し、睡眠のとり方の教本も流れる。アプリをダウンロードすれば、プッシュ方式でアドバイスが手元に届く。

ジムとバーと託児所

英紙ガーディアンによると、英実業家で航空業界の風雲児となったリチャード・ブランソンは、2005年ごろから機内にカジノやトレーニングジム、美容院を設けることを目指していた。完全に実現するには至っていないが、別な形で新たな発想が実っている。中東の航空各社の豪華なサービスだ。エティハド航空の最上級クラスは、一世帯用の分譲区画のような特別室になっている。エミレーツ航空の同等のクラスでも、シャワーなどでぜいたくな気分をたっぷりと味わえる。

カンタス航空も、機内にバーや託児所、ジムを設けようとしている。「サンライズ・プロジェクト」と呼ばれ、2022年までに豪南東部シドニーからロンドンやニューヨークに向けて20時間を超えて飛ぶルートの運航を始められるよう、航空機メーカーに設計を頼んでいる。

背景には、豪州の地理的な制約がある。あまりに南にあるため、大きなハブ空港にはなりえない。「世界のはじにある宿命を背負うからこそ、サービスを真剣に検討する必要に迫られる」と幹部の一人は言う。

よりよい寝心地と座り心地を求めて

機内ジムのようなサービスは、採算を考えれば、ビジネスやファーストクラス向けに限られるように思える。しかし、カンタス航空では、超長距離便については、貨物室の一部をエコノミークラス向けの寝台として活用したり、散歩スペースに転用したりすることを検討している。

ニュージーランド航空も、プレミアムエコノミーとエコノミークラス用の対策をとっている。オークランド―シカゴの新路線(片道15~16時間)を飛ぶボーイングのドリームライナー787―9V2型機。33席の前者のクラスでは、座席の間隔が41~42インチ(104~107センチほど)に広がり、フットレストもある。215席の後者のクラスでは、3列シートの座席を指定して購入することができる。こちらの席ではレッグレストを90度上げれば、5フィート1インチ(155センチ)の寝るスペースを確保することができる。

超長距離フライトの増加は、超音速機の夢をも復活させている。コンコルドが飛ばなくなって15年。米デンバーのブーム社は、座席数55の超音速機を開発している。2019年には、飛行に向けての試験段階に入る予定だ。完成すれば、今は7時間かかるニューヨークーロンドン間を3時間15分で飛ぶようになる。(抄訳)

(Elaine Glusac)©2018 The New York Times

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