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シナゴーグでの銃乱射 ユダヤ系米国人が危惧した最悪の事態が現実に

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襲撃のあったピッツバーグの礼拝所の外に設けられた仮設記念碑前で、涙を流す男性=ロイター

For American Jews,Pittsburgh synagogue massacre is culmination of worst fears

ワシントン・ポスト紙 10月27日付

私はユダヤ人なので、子どもの頃は教会でナチスによるユダヤ人の大虐殺について多くのことを学んだ。祖父母からも当時の話を聞いた。だが、それは大昔の話で、自分とは関係ないと思っていた。宗教の自由と平等を重んじるアメリカに住み、私自身Anti-Semitism(反ユダヤ主義)による身の危険を感じたことは、これまで全くなかった。イスラエルならテロに巻き込まれる危険性は大いにある。しかしアメリカにいる限り、絶対に安全だと信じていた。

 

ところが、トランプ政権の誕生以降、ヘイトスピーチと少数民族への暴力の増加に伴い、ユダヤ人への脅迫も増してきた。記事は、オンライン上でのユダヤ人へのバッシングは、最近ますますvicious(悪意的)になってきていると指摘。いまやユダヤ教の教会やコミュニティーセンター、墓地が鍵十字でdefaced(汚損される)ことは、commonplace(驚くことではなく)なってしまっていると記事は嘆く。こうした緊張が高まる中、暴力的攻撃の可能性がアメリカのユダヤ人たちにloomed over(暗い影を落としていた)という。

 

そして1027日、恐ろしくもworst fears(懸念されていた最悪の事態)がculmination(現実となった)。拳銃を持った男がピッツバーグのユダヤ教のsynagogue(教会堂)をstorm(急襲)し、礼拝中だった11人を殺害、その他多数にけがを負わせたのだ。rampage(暴れ回り)の間、男は「ユダヤ人は皆、死ぬべきだ」と怒鳴っていたそうだ。

 

容疑者の男は、右派のニュースメディアで誇大報道されている移民問題を懸念。移民の米国入国をユダヤ人が手助けしていると思い込み、そのようなユダヤ人を攻撃しなければならないといった身勝手な動機からmassacre(虐殺)を起こしたという。記事は、右派の政治家やテレビに出演する評論家の間で最近、反ユダヤ主義的なdog whistles(普通の人には気付かれないよう、賛同を得たい特定集団にしか理解できない表現)がたくさん使われるようになったという話を紹介している。

 

例えば、ユダヤ人である金融投資家ジョージ・ソロスを「21世紀のロスチャイルド」と呼び、10月に始まった南米からの移民キャラバンに彼が資金提供しているなどといった陰謀説が溢れている。専門家によると、こうしたrhetoric(発言)は暴力的なネオナチや白人優越主義者らをembolden(つけあがらせている)そうだ。

 

ユダヤ人に今後、どんな攻撃が加えられるのかと考えると、正直とても怖い。「ユダヤ人だから教会へ行くのは危ない」という、これまでしなかったような心配もするようになった。こうした話は日本と関係がないとは言えない。日本の書店に並ぶ本や雑誌の広告に、「ユダヤ商法」や「ユダヤ的知性」という言葉を頻繁に見かける。褒め言葉のつもりかも知れない。だが、「ユダヤ人は頭がいい」や「ユダヤ人はビジネスが上手でお金持ちだ」というステレオタイプ的なレッテルを貼ったことが、後にホロコーストにつながっていったのである。現在の反ユダヤ主義者の考え方とも共通し、非常に不適切だ。こうしたユダヤ人への固定観念を持ち続けて広めるのは、特にこのご時世、無神経極まりない。ぜひ、やめてほしいと思う。