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多様な宗教と文化を味わって シリコンバレーのちょっと特別なホリデーシーズン

働くママのシリコンバレー通信 更新日: 公開日:
イラスト:tanomakiko

結婚するならユダヤ系の人だな、と確信した瞬間がありました。歴代のボーイフレンドリスト(そんなに長いリストじゃないです。笑)の中にアメリカ系ユダヤ人、イギリス系ユダヤ人が数名いて、家庭でも外でも賑やか、なんでもざっくばらんに質問やディスカッションを繰り広げるカルチャーに好感を持ったこと、一般的にアタマがよく、知的階級が高い人が多いような気がしたこと(もちろん全員そうでないことはすぐに認識しましたけど)、京都で仏教系の幼稚園に通学していた年少のときから、ちょっとこれは違うかな、とすでに感じていたこと、キリスト教概論が必修だった大学で、これもちょっと違うかな、と思ったことなどが挙げられます。

そして、涙ぐましい婚活の末、今の夫に10年以上前に出会い、めでたく結婚しました。

Sex and the Cityというアメリカのテレビドラマの視聴者なら、4人のキャラクターの1人、シャーロットがユダヤ教に改宗する流れを覚えておられるかもしれませんね。ユダヤ教の改宗は結構大変で、私も東京で始まりボストンで終わった2年に及ぶ改宗期間を経て、改宗儀式を無事終了しました。私は改宗しましたが、お互い違う宗教のまま結婚生活を始めるカップルも多くいます。シリコンバレーでは、多くの起業家やベンチャーキャピタリストがユダヤ系ですが、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ夫人は中国系アメリカ人で改宗していません。

シリコンバレーのインターマリッジカップル(異なる民族、宗教のカップル)代表(?!)のマーク・ザッカーバーグ氏は、フェイスブックでユダヤ教の祝日ハヌカを子供と自宅でお祝いしている様子をポスティング。お嬢さんのマックスが口にしているのは、キドゥシュ・カップと呼ばれていて、安息日やユダヤ教の祝日に、ワインやブドウのジュースを飲むカップ。彼の家族に100年代々受け継がれているそう

「子供はユダヤ式で育てる」と、最初は威勢良く二人とも張り切っていたものの、もともとそれほど敬虔なユダヤ人家庭で育っていない夫と日本人家庭で育った私。新婚当初住んでいたボストンは、ユダヤ人比率が高く一年で最も大事な祝日、ヨム・キプルの日には半数くらいの大学生や教授が学校を欠席したり、街が閑散としたりしていましたが、宗教に対する意識が一段と薄いサンフランシスコに引っ越したとたん、だんだん私たちの「生活の中のユダヤ教」という彩度は低下。かろうじて大きな祝日のときだけユダヤ教の会堂のシナゴークに行く、というスタイルになってしまいました。

しかしです。さすがに子供も9歳になり、アンネ・フランクも分かってない、ということに危機感を覚え、また、ユダヤ教の女の子の成人式的存在であるバト・ミツバ(12歳)も近づいてきたので、週に1回、ユダヤ文化やヘブライ語を習いに行かせることにしました。

サンフランシスコでもフツーのユダヤ系の家庭では、こうした教室に幼稚園ごろから通わせるケースがほとんどなので、うちは出遅れ気味です。ユダヤ文化継承とヘブライ語だけでなく、娘は日本文化の継承と日本語、そしてその他のアクティビティもあるので、忙しいこと極まりないですが、アイデンティティを形成する上でどちらも大切な要素なので削れません。

ハヌカで伝統的に食べるのは、コロッケのようにオイルで揚げるラトケス。大量にオイルを使用します。カロリーが気になりますが美味しい....

ユダヤ教に限らず「習い事としての宗教」というのはアメリカ人の子供にとっては一般的です。教会の日曜学校で宗教教育を受けている子供は多いですし、多種多様なアイデンティティが集まるシリコンバレーでは、我が家のように二つのルーツをもつハイブリット家庭も多いので、土曜日は中国語やドイツ語のクラス、日曜日はヒンドゥー教やスペイン語のスクールといったパターンも見受けられます。週末まで学校でちょっとかわいそうですけどね。

長い夏休みの時期などは宗教の学校もお休みになります。子供たち同士でお互い通っている学校の話をするので、自然と他の宗教にも馴染みがでてきて、私は娘経由で聞いて学ぶことも多いです。学校でも、クリスマスソングのあとには、ユダヤ教のお祭りのハヌカの曲を歌うなど工夫しています。いろいろな民族、人種、宗教の環境の中、学校や友達を通じて自然とお互いの文化を吸収していきます。

移民が多いシリコンバレーの特徴でもありますが、両親揃って生粋のアメリカ生まれのアメリカ人という子供がクラスに二人しかいなかった学年のときもありました。シリコンバレーの学校はインドのホーリー祭、中国の旧正月、アイルランドのセント・パトリック、メキシコのシンコデマヨ(これは5月5日なので子供の日とかぶります)などなど、さまざまな文化のお祝いをカバーするのでなかなか忙しいです。

LA にある大手タレントエージェンシー、Creative Artists Agency ではクリスマスツリーだけでなく、ハヌカに用いられる巨大メノラー(燭台)もこの時期飾られます

学校やコンサート会場で銃乱射事件があった、と聞いても、最近はちょっと驚かなくなってきた自分が怖いですが、先日のペンシルベニア州ピッツバーグにあるシナゴーグで銃乱射、11名が死亡した事件はさすがに胸にこたえました。両親から、「ユダヤ教の学校、辞めさせたら」とFaceTimeがかかってきました。私たちが所属するシナゴーグでは大きな祝日だけでなく、金曜日や土曜日の通常の礼拝のときでも警官が常にパトロールしています。この事件があった次の金曜日の安息日(シャバット)の礼拝は満員でした。私たちもやはり、「今日は行くべき。この悲しみを誰かと共有したい」と思いで参加しました。

ハロウィーンが終わり、これからホリデーシーズンが始まります。宗教を超えたアメリカ人の祝日のサンクスギビングデー(感謝祭)、そして、ハヌカ、クリスマスと続きます。今年はハヌカが先ですが、ハヌカはユダヤ暦に基づくので年によってはクリスマスより後になることもあります。アフリカ各地で古くから行われている収穫祭をルーツにもつクワンザという祝日も同じころにあります。

クリスマスを祝うアメリカ人が大多数ですが、それぞれの宗教や文化的な背景に応じて、さまざまなテーマで家族や友人たちとホリデーシーズンを過ごします。そして、私の場合は、そこで終わりというわけではなくお正月、節分、ひな祭り、とノンストップでつづくので、必然的にお祝いの料理を作り続けることになります。両方の文化を継承して欲しいので、母は頑張る!