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『悲しみに、こんにちは』 孤独な少女が生と死に触れた夏

Cinema Critiques 映画クロスレビュー
「悲しみに、こんにちは」より©2015,SUMMER 1993

「悲しみに、こんにちは」より©2015,SUMMER 1993
「悲しみに、こんにちは」より©2015,SUMMER 1993

Review1 樋口尚文 評価:★★★(3=満点は★4つ)

「不安定な季節」鮮やかに

スペインはあまたのすぐれた映画監督を輩出してきたが、そのなかのひとりビクトル・エリセは幼い子どもを主人公にして珠玉の作を生んだ。本作を手がけた1986年生まれのカルラ・シモン監督は、エリセのDNAの正統なる継承者といったおもむきだ。

年齢設定に照らせばシモン監督自身の幼き日の記憶をモチーフにしているはずの本作だが、スペインがエイズ禍で騒然となった1993年という時代背景が効いている。当時謎の疫病のように畏怖されたエイズで両親を失い、自分自身に流れる「血」さえ危ういものと疑われる主人公の少女フリダ。この少女のただでさえ幼く多感で不安定な季節が、エイズをめぐる大人たちの動静をフィルターにして、いっそう鮮やかに輪郭づけられる。

出色なのは、両親を失ったフリダが叔母に引き取られ、彼女の娘アナと戯れながら、愛情をめぐる不安からアナにある冷たい行動をとるのだが、これがほぼ本能的に、罪の意識もなく行われてしまうところだ。ここを筆頭に、成長しゆく子どもの未分化な手探りの感情が全編を占め、その繊細な踏み込みが本作を卓抜なものにした。本作は子どもをめぐる映画ではなく、子どもの視座そのものになろうと試みている。

Review2 クロード・ルブラン 評価:★★★(3=満点は★4つ)

監督自身の体験 力強さに

仮にこの作品をひと言に要約する必要があるとすれば、おそらく「正確さ」が、もっともしっくり来る言葉になるだろう。

テーマと登場人物を考えれば、涙を誘う長編ができあがってもおかしくなかった。しかし、カルラ・シモン監督はむしろ力強い映画を作ることに成功している。彼女には子どもを撮影するのに、特別な才能があるからだ。カメラは、子どもたちの目線と同じ高さにある。そのおかげで、観客は子どもの細かな表情や感情まで捉えることができる。

繊細な暗示や説明的な沈黙がいくつもあるなかで、脚本がメロドラマに陥らずにいられたのは、2人の少女の自然な演技が存分に生きた滑稽で愉快な場面のおかげだ。

大人の俳優たちの包容力がこの痛ましい物語にあたたかい人間味を与えているとすれば、子どもたちの完璧なまでの演技は力強さを生んでいる。

主人公の少女フリダの人物像をつくり上げるのに、自分自身の孤児としての体験をよりどころにしながら、シモン監督が試みているのは、観客の心に哀れみを起こすことではない。子どもには、何者をも無関心のままではいさせない信じられない力がある。監督はきっとそれを証明したいのだろう。