Review01 一青窈 評価★★★★(満点!)
違ったままでいられる希望
友人に「おなべ」がいる。「性同一性障害」という言葉だと少し違和感を感じるので、ここではこう書くことにする。本来、人は誰を好きになっても構わないのだ。彼には大事なパートナーがいて、その親御さんが大反対をしている。そのような悩める大人たちに観(み)て頂きたい。偏見は時に取り返しのつかない悲劇を生むけれどこの映画は希望を持って養子、ゲイ、いじめ、にまつわる出来事を描いている。思いやりある一言や少しの勇気で世界は輝かしく広がってゆく、と。
テーマのように流れていたレディー・ガガの“Born This Way”を聞き返す好い機会になった。孤立する前に愛を持って立ち上がれ、と世界中の失望しそうなLGBTの背中を押した事が映像と共にとてもよくわかった。SNSによるコミュニケーションが主流になった時代、我が子が将来必ずや抱える思春期の葛藤を親としてどのように受け止め言葉をかけるべきか参考になった。
私だって反抗期には勝手に傷つき過ちを犯しながら大人になったのだから、どんなに心配しても響かない頃はあるのだ。不可解な行動の理由を突き止めるのでは逆に追いつめてしまう事もある。この映画やガガのように子供がいつも心を開けるような親でありたい。
Review02 クロード・ルブラン 評価★★☆☆(2)
「寛容」の大切さ届いたか
イタリアはしばしば、他人と違ったままでいることを認めてもらうことが難しいマッチョな国として描かれる。
それだけに、自らの小説を原作にしたイヴァン・コトロネーオ監督のこの作品が、マッチョなイタリアを風刺するだけに終わるのではと不安を感じていた。
主人公のロレンツォがあふれる想像力を駆使して孤立から抜け出す様子を映像にしたシーンは、すばらしいビデオクリップのようで、さわやかな印象を作品に与えている。そのおかげで、部分的には風刺を超える物語に仕上がっている。作品の軽快さは、排除に結びつくような重い主題と一線を画していて、それがおそらく広く受け入れられる理由でもある。
しかし、ダンテの「神曲」やLGBTの人たちにとって賛歌のような存在になっているレディー・ガガの曲をよりどころにしているせいで、物語が劇的な展開を見せる後半は単調なアプローチに閉じこもってしまっている。
監督が登場人物を閉じ込めた世界観が話を減速させてしまい、映画に普遍性を与えられていない。
寛容さをメッセージとして広めるために、この作品の主題にはもっと単純化しないアプローチがふさわしかったはずだ。