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サッカーW杯の実況ブログ 筆者は大阪在住のイギリス人

World Now 更新日: 公開日:
後半、勝ち越しのゴールを決めた大迫(中央)は、長谷部(右)、長友と喜ぶ=2018年6月19日、ロシア・サランスク、内田光撮影

サッカーワールドカップ(W杯)ロシア大会の日本対コロンビア戦を、イギリスの新聞「ガーディアン」のブログで実況していたイギリス人がいる。しかも日本語で。  

書いていたのは、ベン・メイブリーさん(35)。日本在住13年、現在は大阪市に住むスポーツライター兼翻訳家だ。

ベン・メイブリーさん=本人提供

 対コロンビア戦でのメイブリーさんのブログ

――自分で日本語で書いているのですか。

ええ、そうです。試合中は修正する時間もないので完璧じゃないところもありますが。他の人のチェックは入らず、僕が大阪の自宅で書いたものがそのまま出ています。写真はロンドンのスタッフに入れてもらっています。

3年前の2015年にガーディアンのサイトで、日本がアメリカと対戦した女子ワールドカップ決勝戦のライブブログを書いたのが初めてで、それ以来です。ガーディアンとはその後もお互い「もっと頻繁にやりたい」と話していたのですが、タイミングもあって今回になりました。

ガーディアンのサイトで展開されたメイブリーさんのライブブログ

――日本人の名前や漢字は難しくないですか

大丈夫です。僕のパソコンに入っている変換ソフトに日本人の選手の名前を入れてあるので問題ありません。それよりも海外の選手だと、例えばコロンビアのハメスやファルカオなどは有名だからいいんですが、それほど有名でない選手はあらかじめ準備したりしないといけない分、大変です。

――ライブブログで「英国流の報道スタイルをお楽しみ頂けたら」とも記していました。日本とどう違いますか

イギリスではサッカーは150年以上の歴史がある国民的スポーツです。僕のおじいちゃんが生まれる前から、あって当たり前のもの。サッカーは大切な文化で。人々にとって欠かせない娯楽でもあります。

イギリスのサッカー記事は記者の私情を挟んだり個性を出したりすることが多く、文字量も多いです。きつい言い方もしたりしますし、良かろうが悪かろうが新聞記者が評論家のように自分の意見を前面に出して書いたりもします。高級紙には、文学的や比喩したりする表現も多く出てきます。

日本では、国民みんなが関心を持ってサッカーを観戦する文化は、1993年にJリーグが始まってから広まってきたのではないでしょうか。これまでの日本のサッカー記事は、技術的な部分や戦術に焦点を当てることが多く、あくまで事実に忠実に書くことに重きを置いてきました。ただし、日本でもイギリス式の報道が増えてきているようにも思います。

ガーディアンのサイトで展開されたメイブリーさんのライブブログ

――日本が強敵コロンビアを下した一戦は、どう見ましたか。

この試合は評価が難しいです。開始直後に決定機を手で止めたコロンビアの選手が退場し、日本がPKで先制。日本が数的優位にも立ち、後半途中出場したエースのハメス・ロドリゲスの動きもよくないなど、日本が助かった点はありました。

前半、コロンビアは1人少なくてもそれを感じさせませんでした。日本はあれだけ押し込まれても決定機は作らせず、そこには手応えを感じました。セネガル戦でも、守備のまとまりがあればなんとかなりそうだと思っています。

――次は25日(日本時間)、セネガルとの大切な一戦です。

セネガルは前評判では確かに強いとされていますが、その印象のまま試合に臨んでもいいことはありません。実際、先日のポーランドとの試合は、どちらも思ったよりも質が高くなかったですよ。

セネガルは、コンパクトに守ってスピードを活かした攻撃でチャンスを作りました。でも、エースとされるマネはそこまで活躍しませんでした。セネガルは、相手のパスのミスから2点目を奪いましたが、日本はコロンビア戦では目についたパスミスを、今度は絶対にしないでほしいです。

――日本が決勝トーナメントに進む可能性をどう見ていますか。

コロンビア戦の前は2割程度にしか思っていませんでした。しかしコロンビア戦の後、「行けるかとも」いう意見に変わりました。いまは半々くらいと見ています。

(聞き手・中野渉)

 

ベン・メイブリーBen Mabley) イギリス出身のスポーツライター、翻訳家。オックスフォード大学で日本文化を学び、在学中に2度、日本留学。卒業してからは13年にわたって日本に住み、プレミアリーグやJリーグなどサッカーを中心に伝えている。大阪市在住で、ガンバ大阪のサポーター。ツイッターは「@BenMabley」。