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英語圏に行けば、英語ができるようになる?

バイリンガルの作り方~移民社会・豪州より~
ホストマザーのクリスティン・フェラロさん(右)と椎野怜奈さん=豪東部カランドラ、写真はすべて小暮哲夫撮影
ホストマザーのクリスティン・フェラロさん(右)と椎野怜奈さん=豪東部カランドラ、写真はすべて小暮哲夫撮影

豪州で新学年が始まる2016年1月、椎野さんは10年生に進級できた。だが、「全く英語が上達した実感がなかった」。このままではだめだと思い、環境を変えて英語を学ぶことを考え始め、ブリスベンにある日本人の留学仲介業者の「ハックルベリーオーストラリア」に相談。16年7月、この学校を離れ、ブリスベンの私立中高の英語集中コース(HSP)に転校した。

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豪州第三の都市、ブリスベン市中心部

HSPは、英語が母語でない生徒たちがネイティブの一般の生徒たちといっしょに教室で学べる英語力を鍛えるために設けられている豪州独自のコースだ。友人も別の学校に転校した。

英語がわからないから、英語で話もしない。そんなこれまでの態度を変えようと思った。このコースには日本、中国、韓国の留学生たちが多かったが、日本人同士でも日本語でなく、英語で話そうと努めた。ホームステイをするようになり、家では英語しか使えない環境になった。

学校も厳しい。読み書きだけでなく、スピーキングでは、ホストファミリーから話したことを確認するサインをもらわなければならない。CDを使ったリスニングなど、たくさんの宿題が出た。毎日、4、5時間、宿題に追われた。5カ月ほどたったとき、先生の話すことが聞き取れるようになってきていると実感した。そうなると、自信を持って英語で受け答えができるようになっていった。

この学校には1年、通った。最後の学期では、数学や理科などのハイスクール編入に備えた各科目の専門用語も学んだ。ハイスクールに再び入ることになったとき、ハックルベリー社に「日本人のいないところ」と頼み、ブリスベンから北におよそ90キロのカランドラにある今の学校「カランドラ・シティ・プライベート」を紹介された。10年生の後半から編入した。授業もおおむね理解できる。ただ、課題の内容で何を求められているのか十分理解できないようなときは、個別に質問して確認する。

この学校には、英語集中コースはないため、留学生たちには入学時に一定の英語力を求めている。ダーク・ウェラム校長が、紹介業者からの情報と面接をもとにチェック。英語力が足りないと判断した場合は、椎野さんが通ったようなブリスベンの英語学校の集中コースで学ぶことを勧める。中国・天津から来た王梅西さん(17)も1年間、集中コースで学び、今年のはじめから、10年生に編入した。学校のバスケットボールチームにも入り、充実した毎日だ。「将来はブリスベンの大学に行きたい」。一方、椎野さんは面接で英語力を確認され、そのまま入学を認められた。

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中国人留学生の王梅西さん

留学生向けに特化した英語の授業はないが、小規模で、「留学生はみな私を知っていて、私も留学生全員を知っている」(ウェラム校長)という環境で、きめ細かく個別の生徒の状況を見守る。

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「カランドラ・シティ・プライベート」のダーク・ウェラム校長

カランドラでも、椎野さんはホームステイをしている。スマホは持っているけれど、家では極力、日本語のサイトは見ない。配信サイトのネットフリックスで見るのは、英語の映画が多い。そして、ホストマザーのクリスティン・フェラロさん(64)となるべく話す。

一人息子が昨年、独立したため、家では椎野さんとフェラロさんの二人だ。フェラロさんは、30年前から何人もホームステイを受け入れてきた。「10代の子どもたちはあまり話したがらないから、自分のスペースを与えてリラックスしてもらうのが大切。でも、レイナは夕食の後もしばらくここに残ってよく話をするわね」

フェラロさんが好む国際ニュースの番組をよくいっしょに見る。「レイナには難しいから、私が補足して説明する」。会話の中では、語彙が豊かになってほしいと、人々の感情を表現する様々な形容詞を教えるなど、いろいろな言い回しを使うようにしているという。

学校の地元の友人も少しずつできてきた椎野さんは、放課後や休日に、同じクラスの友人宅に出かけていっしょに勉強することもある。学校にいて楽しいことは、ネイティブの友達と話すこと。「英語の練習になっていると実感できるから」。どっぷりと「英語漬け」の環境につかり、昨年末から年初に日本に一時帰国したとき、「なかなか日本語が出てこなかった」というまでになった。

高校を卒業したら日本の大学に入りたいと思っている。来年末の高校卒業までで、通算で4年半、豪州に滞在する計算になる。日本でもともと同学年の人たちと比べたら2年遅れている。「もう必死にやるしかない、と勉強しています」

小暮哲夫カサンドラ
幼稚園から高校生まで各学年とも20数人の「カレンドラ・シティ・プライベート」。ゆったりとした環境で子どもたちが学ぶ

遠回りしつつも、ようやくここまでたどり着いた椎野さん。彼女も助けられたのが、ネイティブでない中高生たちの英語力をレベルアップさせる学習システムだ。次回から、そんな移民社会・豪州ならではの学校教育の現場を紹介していきたい。

(次回は7月4日に配信します)