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がれきの向こうに青空が見えた

世界報道写真展から――その瞬間、私は

ヴァレリー・メルニコフ

ロシアの通信社に勤めるヴァレリー・メルニコフ(44)が、ウクライナ東部ドンバス地方を訪れたのは、それが初めてだった。2014年6月。東部地域では、ロシアとの統一を望む親ロ派と政府軍の間で激しい武力衝突が始まっていた。

地元の人やSNSの情報を頼りに、真夜中に攻撃があった場所に行くと、9階建て集合住宅の最上階が崩れ落ちていた。恐怖におののいた住民の多くは避難していたが、すぐ下に住む男性が様子を見に来ていた。男性の背中越しに、青空が見えた。「戦争を知らない人たちに、この光景を伝えなければ」と思った。

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撮影者のヴァレリー・メルニコフ(本人提供)

以来、ドンバスのことが頭から離れず、3年間で計6回赴いた。初めて赴いた2週間こそホテルに泊まったが、2回目からは、民家に泊めてもらっている。

これまで撮った被写体のほとんどが一般の人々。燃えさかる自宅から下着姿のまま逃げる女性、砲撃を受けた家の外で涙をぬぐう老女……。プーチン大統領によって設立された通信社に勤めるロシア人カメラマンとしてジレンマはあるが、「どちらか側ではなく、ふつうの人という『第3の側』にいること」を常に心にとめてきた。

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Valery Melnikov/Rossia Segodnya
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Valery Melnikov/Rossia Segodnya
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Valery Melnikov/Rossia Segodnya

今月、再びドンバスに赴く。約4年がたった今、紛争はニュースに上ることは減り、「忘れられた戦争」とも呼ばれる。だが、前線近くに住む知り合いから悲痛な連絡がくる限り、この戦争が頭から消えることはない。

「あなたにとって写真とは?」。取材の最後に尋ねると、沈黙の後、こんな答えが返ってきた。「私の魂の一部。私と人々、そして私と平和をつなぐ方法」

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Valery Melnikov/Rossia Segodnya

欧州の「忘れられた戦争」

ウクライナでは2014年、市民による親ロ派大統領への抗議デモをきっかけに、政権が崩壊。ロシアがクリミア半島を掌握し、東部ドネツク、ルガンスク両州でも親ロ派武装集団が地方政府庁舎や警察署を占拠した。2州では親ロ派が住民投票を行った上で、ウクライナからの独立を宣言。認めない政府軍と交戦に発展した。その後結ばれた停戦合意は守られずに、武力衝突が続いている。

日常的な恐怖は市民や兵士の心をむしばみ、戦闘地域から戻ったウクライナ兵や逃れてきた市民の自殺が相次いでいるとの現地報道もある。英紙ガーディアン電子版は昨年11月、「欧州の忘れられた戦争」として東部2州の様子を報じた。