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小さな島の伝統の味 太陽の光をたくさん浴びて

One Meal, One Story 一食一会

のどかな島だ。多くの中国人観光客を引き寄せた豪華カジノホテルが閉鎖し、いまは静まりかえっている。信号もなく、タクシーもない。人っ子ひとり歩いていない。

この日の朝、サイパンのホテルをチェックアウト。テニアンまではわずか10分といえ、6人乗り小型飛行機に乗ってきた。かなりの不安と緊張を感じたせいだろうか、夕方、到着したときには疲労と空腹感がピークに。今夜泊めてもらう地元のチャモロ人家族の家の一室に荷物を置くと、早速、徒歩5分のところにある「JCカフェ」をめざした。

島に数軒あるなかで一番人気というレストラン。おすすめの一品を頼む。出されたのは「ティナラ・カトネ」。島の公用語であるチャモロ語で、「乾燥牛肉」の意味だという。

硬い! でもソースが絶品

口に入れると、かなり硬い。治療中の仮歯が気になり、恐る恐る奥歯でかむ。食感は厚めのビーフジャーキーといったところ。ソースをつけたら、おいしく感じた。

作り方は簡単。地元のテニアン牛の肉をスモークする代わりに3時間ほど店の裏のネットで天日干しするという。そして1分ほど炒めるだけ。新鮮な牛肉が手に入ったときだけのメニューだそうだ。

このソースはチャモロオリジナルのフィナデニソース。酢、レモン、しょうゆ、みじん切りにしたたまねぎに、特産のテニアン唐辛子を少々加えたもの。

おしゃべりを楽しむ長老たち

島内では放牧された牛をたくさん見かけた。かつて貴重な食材として飼われ、グアムやサイパンにも出荷されていた。

女性店長のロット・ブナオ(49)は1990年代前半にフィリピンから移住して以来、店を仕切ってきた。多い日は250人の客が訪れた。ポーカーゲーム機のある部屋は24時間営業だったが、カジノホテル閉鎖後は、あおりを受けて客足が遠のいた。店に通うのは、もっぱらリタイアした男性を中心とする島の住民たちだ。

「島で起きたニュースを知るには、ここが一番早い。ニュース専門ケーブルテレビになぞらえて、『島のCNN』と呼ばれています」とブナオ。毎朝10時ごろから続々と客が集まってくる。

コーヒーを飲みながらおしゃべりを楽しむ長老たちに交ざって、私も結局、24時間の滞在中、3度足を運んだ。