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日本は東京だけじゃない 海外企業進出の新拠点、京都という選択肢

Sponsored by 京都市 公開日:
京都市のイベントで語り合った松井孝治・京都市長、インテグラルパートナーの佐山展生氏、小西美術工藝社代表取締役社長のデービッド・アトキンソン氏
左から佐山展生さん、松井孝治・京都市長、デービッド・アトキンソンさん=2024年8月5日、東京

歴史と伝統文化で知られ、国内外から観光客をひきつける人気都市、京都。古くからの価値を保ちながら、イノベーションを起こし、将来への発展につなげるため、国内外からの企業誘致を進めている。ビジネス拠点としての京都の魅力とは何か。インテグラル株式会社パートナー・佐山展生さんと小西美術工藝社代表取締役社長のデービッド・アトキンソンさんを迎え、松井孝治・京都市長とともに語り合いました。(本文中は敬称略)

魅力が凝縮されたまちで「突き抜ける世界都市 京都」を目指す
松井市長挨拶

私は京都生まれ京都育ちですが、人生の半分を東京で暮らした経験から、京都のまちの素晴らしい点と、もったいないと思う点を「外の目」から見つめ直しています。

京都は有形無形の文化財があり、たくさんの観光客が訪れますが、文化遺産都市になってはいけないと考えます。息づいた生活文化都市でなければならないし、文化を育てるためにも、経済や産業基盤をより充実させなければいけない。

京都の強みを考えると、神社仏閣や伝統文化のほか、日本庭園や町家、伝統行事などがあります。でも、それだけではなく、私がいつも強調しているのは、まちの喫茶店、銭湯、ギャラリーなどあらゆるところに「サロン」が存在しており、まちのコミュニティーができていることです。京都ならではの文化に出会い、地域の人々との会話が生まれる。こうした人との関わりが深い特性を「時間密度の濃いまち」と呼ぶこともあります。

もう一つの強みは、よいものを求める「チャレンジ精神」です。伝統技術を現代的に発展させている京都を拠点にした著名企業は、京セラ、島津製作所、任天堂、村田製作所、ローム、宝酒造、村田機械、ニデックなど言い出すときりがない。世界のマーケットを相手にするのには東京よりもむしろ京都の方が良いという経営者も多いです。

また、京都は「大学のまち」であることも強みです。人口の10パーセント強に当たる15万人の大学生がおり、市民に対する学生の割合は全国トップです。市内には、仏教系や芸術系など36の多彩な大学があります。

京都市のセミナー冒頭であいさつする松井孝治・京都市長
セミナーの冒頭、あいさつする松井孝治・京都市長=2024年8月5日、東京

そして、なんといっても京都の素晴らしさは、山に囲まれていて自然が近いことです。鴨川や桂川があり、伏流水も豊かです。友禅など染め物をはじめ、豆腐や京料理、日本酒、庭園、茶道も、京都の豊かな水が育んできました。

京都は、狭いエリアにまちの中心地も自然も凝縮している、コンパクトなまちです。そうすると、京都はすでに開発の余地がないのではと思われるかもしれませんが、京都駅近くで開発が進められているエリアがいくつかあったり、京都駅の南側ではオフィスやラボを誘導する「京都サウスベクトル」というプロジェクトを進めていたりと、京都のまちが大きく変わろうとしています。

先端技術と伝統文化の両方において、京都で今さまざまな相互作用が起こっています。京都で仕事をするワークスタイルを「Kyo-working(京ワーキング)」と呼んでいますが、多様なワークスタイルを実現してほしいと考えています。

京都にある素晴らしい大学や神社仏閣、伝統産業などを混ぜ合わせて、「日本に京都あり」「世界に京都あり」と言われるようなキラキラしたまちを作っていきたい。ぜひ、セミナーにお越しの皆様にもその一端を担っていただき、「突き抜ける世界都市 京都」を実現させていただきたいと思います。

「京都に来れば、飽きることがない」 トークセッション

京都市のイベントで意見を交わす松井孝治・京都市長、インテグラルパートナーの佐山展生氏、小西美術工藝社代表取締役社長のデービッド・アトキンソン氏
意見を交わす松井孝治・京都市長(左)とインテグラルパートナーの佐山展生氏(中央)、小西美術工藝社代表取締役社長のデービッド・アトキンソン氏=2024年8月5日、東京

関根 「東京ではなく京都へ」というイベントを東京で開催する挑発的な内容ですが、熱のこもった話が聞ければと思います。まず、ビジネスの視点から、京都市の魅力についてどう考えますか。

佐山 実際に住んでみて、交通の便が非常に便利な印象があります。接続もよく、公共交通機関でかなりの部分に移動ができます。タクシーもネットで呼ぶと1、2分で来ます。京都市外、京都府外に行くのも便利で新幹線も走っていますし、飛行機に乗るなら新神戸駅まで28分、新神戸駅から神戸空港までタクシーで17分、三宮からポートライナーで18分です。

宿泊施設もかつては民泊が多かったのですが、ホテルが増え、会議などビジネスにも便利になりました。京都は大学生を大事にし、優遇しますので、企業との共同研究もやりやすい環境です。

京都は海外の人からみると、特別な場所です。ヨーロッパの経営幹部など、東京に来ても「まず京都に行きたい」と言う人も多い。近々、ある外資系のコンサルティング企業が京都に重要拠点を構えますが、企業の京都支店は、今後増えていくと考えています。

発言するインテグラルパートナーの佐山展生氏=2024年8月5日、東京

アトキンソン ビジネス視点での京都の魅力について語られる際、抽象的な話が多く、実際に進出する企業の視点に立っていないと感じます。伝統と文化の素晴らしさは事実としてあるとしても、企業からすると「だから何?」という話になり、それが移転の理由になるわけではないのです。

私は日本の観光戦略に携わってきました。インバウンドが増えたのは、サムライ、アニメ、茶道、いろいろ言われてきていますが、日本の人口1億2500万人のうち、茶道人口は75万人しかいません。茶道は魅力の一つではありますが、茶道がすごいと言われても外国人には刺さりません。都市の特徴を言っても、ただの特徴に過ぎず、相手にとってはただの自慢話にしか聞こえないのです。

ビジネスの視点からみた京都の魅力は「あり得ない都市」であることです。京都ぐらいの大きさの都市で、これほど充実したインフラを持っている都市はなかなかありません。これは、かつて都であったため、たくさんの人が訪れ、全国・全世界を相手にしているからこそ成立する京都の魅力です。

国内外からたくさんの人が訪れるから、国際会議の会場となるホテルは価格も規模も種類が豊富で、日本でトップレベルの美味しいものがたくさんあり、週末になれば神社仏閣、大自然など行きたいところが悩んでしまうぐらい数多くある。まちとしてはコンパクトなので歩いて行けるところがたくさんある。

文化財修理会社の社長の立場から言えば、奈良のほうが歴史的な価値が高い文化財があります。しかし、奈良にはナイトライフがなく、退屈です。一方、京都は生活の場として退屈することがないのです。

移転する側として、「京都に来れば、飽きることがない」というのは最大の魅力です。私は長年、金融機関に勤めていましたが、金融街があるニューヨークやロンドンのように、社長が住みたい街なのかというのが企業進出の大きなポイントだと思います。

松井 アトキンソンさんのご指摘に共感します。京都は伝統文化などの魅力があるゆえに、あぐらをかいていた部分もあると思います。京都は、現実的な視点、たとえば災害があった場合でも企業活動を継続できるBCP(企業継続計画)の観点でも優位性があります。地震や津波が少ない地域ということもあり、リスクが低い。

アップル創業者のスティーブ・ジョブズは京都の苔寺で庭を眺めてリフレッシュしていたといわれますが、京都には、ビジネスパーソンからみた「非日常」が日常の中にある。茶道、華道、香道だけではなく、生活の至るところに歴史や文化があり、私自身、日本でもっとも豊かなまちに暮らしているという実感があります。

いわば長年にわたり醸成された「ぬか床」のような文化です。ぬか床に手を加える必要があるように、文化もしっかりと手を加えないといけない。もう一度見直してイノベーションを起こすことで、蘇る産業もあるのではないか。むしろ、そこにビジネスチャンスがあるかもしれないと考えています。

京都人の「いけず」という魅力

関根 海外の方から見た京都市の魅力について教えてください。

アトキンソン インバウンドが7年間で800万人 から3188万人まで増えた理由は、マーケティングの違いです。「ここに行ってください」と押し付けるのではなく、「このように楽しい時間を過ごせる」と現実的に何ができるのかを想像してもらうことが大切なのです。海外企業にとっての京都の魅力は、現実的に活動をしたり、暮らしたりするうえでの魅力を伝えていくことで理解されると考えます。

京都市のイベントで発言する小西美術工藝社代表取締役社長のデービッド・アトキンソン氏
意見を述べる小西美術工藝社代表取締役社長のデービッド・アトキンソン氏=2024年8月5日、東京

佐山 「京都は観光客でいっぱいでしょう」とよく聞かれますが、生活圏の人口密度が低いのは知られていません。人が多いのは観光地と京都駅だけです。京都は有形無形のさまざまなものが点在していて、「場の密度」、すなわちそこに居ることの心地よさが違うと思います。

東京23区は広いし、渋滞もありますが、京都は自転車で移動できるほどコンパクトで人口密度が低いのに「場の密度」が高い。生活の場としてはダントツに楽しめるところだと思います。 

関根 生活の魅力も語っていただきましたが、改めて京都で生活するうえで魅力だと思うところは何でしょうか。

アトキンソン 仕事で全国各地をまわりますが、ある程度滞在すると「やり尽くした感」が出てくるものです。しかし、京都は選択肢だらけです。食べ物もそうですし、自転車で行きたいところがいくらでもあります。

また、京都では「一見さんお断り」という言葉がありますが、ビジネスでは通用しない話ですし、長年東京と京都を行き来していますが、聞いたことがありません。

佐山 京都の人は「いけず」と言われることがあります。例えば、出来の悪いプレゼンテーションをした時に、大阪の社長は「なんやこれ、どこが面白いねん」と言います。一方、京都の社長は、その場では「ええ話聞かせてもらったわ」と言い、帰ってから「しょうもなかったな」と言うことがあります。これが意地悪だと言われるのです。しかし、これは京都人のやさしさなんです。だめだったのは本人が分かっているから、わざわざ言わなくてもいいということです。

魅力に加えて、向上策もいくらでもあります。行楽シーズンの東山などの観光地周辺は渋滞が発生するので、エリアを定めてLRT(Light Rail Transit)などの循環線を走らせ、行楽シーズンはマイカー規制をして、この循環線の外側に駐車できるところをしっかり作るという方法があります。企業誘致も、例えば、アメリカは本社が全米各地に広がっていますが、税制優遇を積極的にしています。税制優遇などで本社を京都にする会社が増えれば、人が増えてまちが活性化すると思います。

グローバル人材を集めるには

関根 松井市長、「宿題」もいただきましたが、いかがでしょうか。

松井 しっかり受け止めて、それぞれ議論を進めていきます。実際に進んでいるところもあり、市政全体の見直しについては期待していただきたい。実際に京都に魅力を感じて、「東京より給料が少なくてもいいから京都に住みたい」というエンジニアがいたり、「対面でのミーティングを京都でしたい」といった声を聞いたりします。

とくにクリエイティブ層にとって、京都で働くことは魅力であり、海外人材を募るうえで競争力があると考えています。才能のある人材が京都に住むために、芸術家が集まるアーティストインレジデンス、エンジニア向けのエンジニアインレジデンス、起業家向けのアントレプレナーインレジデンスといった住宅支援があれば、グローバルな人材を集めやすいという企業もあります。

京都国際マンガミュージアムの開館のため、ご尽力いただいた河合隼雄文化庁長官(当時)は、京都について「胃酸(遺産)過多でゲップが出る」と話していましたが、遺産の上にあぐらをかかず、外からの人材をひきつけて、京都をさらに発展していけるようにしていきたいと考えています。

京都市のイベントで発言する松井孝治・京都市長
発言する松井孝治・京都市長=2024年8月5日、東京

アトキンソン 京都は、「海外の人に来てもらいたい」という情報発信を積極的にしていくことが必要だと思います。また、京町家友の会元会長として言わせていただくと、美しいまちの保全に力を入れてほしい。美しい町並みが残っているからこそ、まち全体が世界遺産になり得る。日本全国で世界遺産になり得る都市はほとんどないので、今の美しい町並みが残っているうちに何とかしていただきたい。

松井 私も危機感を持っています。私が住んでいるまちも、町家の建て替えが進んでいます。市内中心部も今、急速に変わっているので、何とか町並みを維持できるようにできるだけ急いで考えていきたいし、経済性と町並みの維持との両立を図る余地があるかどうか検討していきたい。

佐山 伝統的な町並みの中に電柱がたくさんあり、「どうしてこんなところにあるのか」と疑問を感じます。無くすとしても資金が必要なので、神社仏閣の拝観料が増えるようにその周辺から手を付けて、代わりに拝観料の一部で電柱除去の費用を負担してもらうことができれば課題も解決するのではないでしょうか。

松井 どのような方法で進めるかをしっかりと考えないと、過去の繰り返しになる恐れがあります。様々な課題にどう立ち向かうのか。その答えの1つが、海外から京都に来ていただき、京都で混ざり合ってもらうことだと考えています。観光客も大歓迎ですが、海外企業の皆様のように、外から京都に来ていただき、京都に深く関わっていただける皆様のお声も聞いていきたいと考えています。

関根 ビジネス拠点から電柱の話も出ましたが、まちづくりもビジネスの魅力としての要素があるのではと思いました。本日はありがとうございました。

(この記事は、海外の企業などに京都市への進出を呼びかけるセミナー〈京都市主催、8月5日開催〉の内容を採録したものです)

京都市企業立地セミナーの様子

京都市は、「Kyo-working京ワーキング」を提唱し、積極的に企業の誘致に取り組んでいます。詳しくは公式サイトをご覧ください。