国立感染症研究所によると、XBBは2022年9月にシンガポールで確認された。その後同国では10月中旬には6割以上がこのウィルスになっており、感染者数も増加している。ほかにバングラデシュ、インドなどでもXBBが増加傾向にあるという。
10月28日には、日本でも東京都と鹿児島県で相次いで「XBB」の感染例が報告された。
XBBはワクチンの効果が低く、感染力が高いのではないかと警戒されている。
オミクロンの亜種のウイルスの命名は、「PANGOリニエージ(系統)」という国際的な新型コロナウイルスの命名法で付けられている。冒頭のXは、二つの変異株の遺伝子が混ざったウイルスに付けられる。
通称名のグリフォンは、ギリシャ神話などに登場する上半身と翼が鷲や鷹、下半身はライオンの伝説上の生き物。正式な名前ではなく、科学者たちがつけたあだ名だ。
一方、欧米で増加傾向にあるのが現在世界的に9割以上を占める BA.5から派生したBQ.1やさらに変異のあるBQ.1.1(通称ケルベロス)と呼ばれる亜系統のウィルスだ。
BQ.1は9月にナイジェリアで報告があり、その後イギリスやフランスなどヨーロッパで増加。米国疾病予防管理センター(CDC)が10月21日に発表した報告では、アメリカでも BQ.1やBQ.1.1が比較的早いスピードで感染が拡大していると指摘されている。
ケルベロスもやはりギリシャ神話に登場し、冥界の番人とされる犬の怪物の名だ。
XBBも、BQ.1系統も、オミクロン株に含まれるが、オミクロン株の特徴は一般的に、潜伏期間やウィルスが増える時間が短いこと、感染後の歳感染リスクが高いなど、感染拡大のスピードが速いことだ。一方、オミクロン以前に流行していたデルタ株に比べると、入院のリスクや重症度は低いとされている。
XBB、BQ.1.1系統の変異株のいずれも、ウイルスの表面のスパイクタンパク質に変異があるが、スパイクタンパク質の主要箇所の変異が多いほど感染者数が増えやすいと言われており、BQ.1.1系統とXBB系統は、特に感染者が増えやすい系統だとする専門家もいる。
これらの新規変異株が、現在世界的にみると99%を占めているBA.5株に比べて重症度が高いのかどうかについてはまだ分かっていないが、国立感染症研究所は警戒が必要としている。
厚生労働省はオミクロン対応のワクチンの接種を進めており、年末までに対象者の接種完了を目指している。
国立感染研が指定するVOC(懸念される変異株)
BA.5:2022年2月 南アフリカで初確認。現在世界的にウイルスの主流を占める
BA.4.6:2022年5月 米国で初確認。米国を中心に増加傾向
BA.2.75:2022年6月 インドで初確認。インドで急増
BQ.1、BQ1.1:2022年9月 ナイジェリアで初確認。欧州など48カ国で報告
XBB:2022年9月 シンガポールで初確認