7月21日、これまでに4回の予防接種を受けていたアメリカのバイデン大統領が感染したのも、オミクロン株の亜種「BA.5」だと報じられている。
米疾病対策センター(CDC)によると、「BA.5」は、7月23日までの1週間でアメリカの感染者全体の約82%を占め、前週の約76%から、さらに上昇した。今年5月まで感染者の半数を占めていたオミクロン株の変異株「BA.2」といまや完全に置き換わっている。
日本国内でも急速に置き換わりが進む。
7月21日、厚生労働省に新型コロナ対策を助言する専門家会合で、国立感染症研究所は、「BA.5」の検出割合が今週時点で96%に達したとの推計を示した。国内で最初に「BA.5」が確認されたのは5月12日のことだ。
「BA.5」が南アフリカで最初に検出されたのは2022年2月のこと。今や世界各地で流行株の主流にまでになっている。なぜか。
WHO(世界保健機関)によると、「BA.5」の感染力は、これまでで最強だ。
テドロス・アダノム事務局長は7月20日の記者会見で「これまで検出された中で最も感染力が強い」と述べた。欧州疾病予防管理センター(ECDC)の5月の報告では、ポルトガルや南アフリカの感染状況から、「BA.5」は、「BA.2」よりも12~13%増えやすいと推計している。
国立感染症研究所によると、感染者1人が何人に感染させているかを示す実効再生産数は、東京都のデータに基づくと、「BA.5」は「BA.2」系統よりも1・27倍、高かった。
同研究所のリポートによると、「BA.5」の遺伝子変異はその多くが、これまでの主流だった「BA.2」と共通している。一方で、ウイルスの一部が変異したことで、「BA.2」よりも過去のコロナ感染やワクチン接種で獲得した免疫を回避する、つまり抗体が働きにくくなる可能性が指摘されている。
一方で、イギリス健康安全保障庁(UKHSA)は、初期データ解析の結果、「BA.5」に対するワクチン接種の効果は「BA.2」と比べて「大きな違いはない」と報告している。ワクチン接種の効果が時間とともに自然に減退することもまた、感染が広がる一因とみられる。
潜伏期間はどうか。オミクロン株の潜伏期間は2~3日で、それまでに流行したデルタ株など他の変異株よりも短いとされているが、「BA.5」については研究途上だ。
では、どのくらい重症化しやすいのだろうか。
国立感染症研究所は、オミクロン株は「デルタ株に比べて相対的に入院のリスク、重症化のリスクが低い」としている。
WHOの新型コロナ技術責任者、マリア・バンケルコフ氏は、7月19日に公開された解説動画でこう述べている。
「BA.1やBA.2といったほかの変異株と比べて、BA.5に感染した人の重症度の上昇は見られない」
ただ、専門家らを通じた世界的な監視報告体制は、感染の爆発的な拡大に追いついていないとした上で、「ウイルスが今後どのように変異するかも明確ではなく、世界中の死者も依然として極めて多いので、リスクは高い状態だ」と警告。
その上で、感染拡大を食い止めるために、「マスクをする、人と距離を置く、換気する、ワクチン接種をする、屋内より屋外で過ごす、体調が悪い時は在宅勤務するなど、できることすべてをしてほしい」と訴えている。