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情報BOX:広がり始めたオミクロン株、どこまで憂慮すべきか

World Now 更新日: 公開日:
ボストンの空港で11月11日撮影(2021年 ロイター/Brian Snyder)

オミクロン株の検出を受け、26日には複数の国が新たな渡航・入国制限を発表した。製薬業界は、自社のワクチンがなお有効かどうか急いで調査に乗り出している。

■科学者が懸念する理由

世界保健機関(WHO)は26日、オミクロン株を「懸念すべき変異株」に指定。他の株よりも急速に拡大するかもしれないと警鐘を鳴らした。

世界ではなお、流行の主流はデルタ株で、米国では感染者の99.9%を占めている。ピッツバーグ大学医療センターのグラハム・シュナイダー博士によると、オミクロン株がデルタ株に置き換わるかどうかはまだはっきりしていない。

ただオミクロン株は、現在のワクチンが標的としている部分において30カ所を超える変異がある。南アでの新規感染者急増を主導している疑いも出ている。

コロンビア大学のデービッド・ホー教授(微生物学・免疫学)は、これまでに作製された抗体を含めて幾つかの新型コロナウイルスの治療手段がオミクロン株によって無効化される公算が大きいとの見方を示した。

一方、ファイザーの「パクスロビド」やメルクの「モルヌピラビル」といった開発中の抗ウイルス薬は、オミクロン株の中で従来と変異していない部分を標的にしており、ワクチンや感染による免疫が脅かされるとすれば、一段と重要性が増す可能性がある。

■最大の疑問

科学者によると、オミクロン株が引き起こす症状を特定し、感染力の強さや既にどの程度拡大したかを把握するにはあと数週間が必要だ。

同じく南アで最初に発見されたベータ株など、他の変異株は最終的にデルタ株に置き換わったとの指摘も出ている。

それでも、1)これまでに世界全体で約80億回接種されたワクチンの防護機能が引き続き維持されるか、2)過去に感染した人はオミクロン株の感染を免れるか──という最大の疑問は残されたままだ。

さらにオミクロン株が他の株よりも重症化につながりやすいかどうかも、専門家は解明していない。

■今できる対策

オミクロン株は米国でまだ確認されていないものの、おそらく既に存在する、というのが科学者の見立てだ。

もっとも、米国ではオミクロン株が確認されていない今でさえ、新規感染者数が増加傾向にある。特に寒さを避けて屋内で活動する機会が多い北部の州が主な感染地域となっている。

幾つかの国は、南アからの入国者の制限を開始。ピッツバーグ大学医療センターのシュナイダー氏は、こうした政府の措置だけでなく、個人でも年末の旅行を考える際に引き続き自分が新型コロナに対してどれだけ脆弱(ぜいじゃく)か、どこまでリスクを許容できるか判断しなければならないと提言した。

シュナイダー氏らはワクチンについて、オミクロン株に対する効果に疑問が生じているとはいえ、ある程度は効く可能性が大きいので、依然として優先的な対策になるはずだと主張している。マスクを着用し、密集を避け、部屋は換気を心掛けて手を洗う、という行動は誰もが必要になる。

カリフォルニア州ラホヤにあるスクリプス・リサーチ・トランスレーショナル研究所のエリック・トポル所長は「われわれはいかなる変異株にも有効な全ての手段を持っている」と述べた。

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