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電線にとまる鳥、ときには感電する 山火事の原因になることも

ニューヨークタイムズ 世界の話題
A photo provided by James Dwyer shows a golden eagle perched on a power pole in central Wyoming.ハThe pole had a cover on the center wire to prevent the bird from being electrocuted. (James Dwyer via The New York Times) ム NO SALES; FOR EDITORIAL USE ONLY WITH NYT STORY SLUGGED BIRDS WILDFIRES BY CAROLYN WILKE FOR JUNE 29, 2022. ALL OTHER USE PROHIBITED. ム
米ワイオミング州中部の電柱の上で羽を休めるイヌワシ。鳥が感電しないよう、まん中の電線には絶縁カバーがかけられている=James Dwyer via The New York Times/©2022 The New York Times

乾燥している陸地では、さまざまな原因で山火事が起きる。

強風で送電線がぶつかり合って散る火花。たばこの吸い殻の投げ捨て。列車の車輪から飛んだ火花すら原因になる。これに、鳥の感電死もときどき加わる。

米モンタナ州で2017年、一羽のタカがカリカリに焼けた状態で地上に落ちていた。爪は、これまた十分に火が通ったごちそうのヘビをつかんでいた。

タカは現場の上に張られた送電線にとまろうとしたようだ。ところが、ヘビが別の送電線に触れたため電気回路が発生し、感電死したらしい。焼けながら落下し、乾ききった草に燃え移ったようだ。焼失面積は40エーカー(16ヘクタール超)に及んだ。

本格的に調べてみると、米国では2014年から18年までに鳥の感電死がからんだ山火事が少なくとも計44件あった――そんな結果が22年6月、国際非営利団体の科学誌「The Wildlife Society Bulletin」に論文として発表された。

A photo provided by the San Diego Fire-Rescue Department shows the carcasses of a hawk and a snake in 2015. The hawk, carrying the snake in its talons, struck a power line, electrocuting both animals and starting a fire. (San Diego Fire-Rescue Department via The New York Times) ム EDITORIAL USE ONLY  ム
米カリフォルニア州サンディエゴで2015年に感電死して焼けたタカの死骸。爪は焦げたヘビをつかんだままだ。捕まえたヘビとともに送電線に触れ、いずれも燃えながら落下、山火事を起こしたらしい=サンディエゴの消防当局提供/©2022 The New York Times(訳注=写真の火災は本文冒頭とは別の事例)

同じような事案のエピソードは、思い出しでもしたかのように間を置いて繰り返されている。だから、今回の研究陣は、このような「鳥のいたずら」による山火事の実例を今後も拾い集め、より正確な実像に迫ることにしている。

鳥の感電死が起きるのは、木が少ないところが多い。大型種の鳥が送電塔や電柱で羽を休めたり、巣作りをしたりするからだとテイラー・バーンズは説明する。コロラド州に本社がある電気事業コンサルティング会社EDMインターナショナルの地理空間情報システムの専門家で、この論文の執筆者の一人でもある。

鳥は1本の電線にとまっている限り、感電はしない。しかし、2本に同時に触れたり、1本の電線にとまったりしながら変圧器のような接地設備の一部に接触すると問題が生じうる。

「感電すると、動物の細胞にある水分が瞬時にして蒸気になることは珍しくない」とジェームズ・ドワイヤーは指摘する(やはりEDMインターナショナルに勤める野生生物学者で、この論文の共著者の一人)。「その結果、細胞内で爆発が起きたようになり、翼か足を吹き飛ばされてもおかしくない」

ときには、羽や羽毛が燃えながら地上に落下し、鳥が苦しむということにもなる。

「即死状態でない場合は、かわいそうなほどだ」とドワイヤーは眉をひそめる。

鳥が引き起こした山火事のデータベースは存在しない。そこで研究陣は報道資料を精査した。「火災」と「ワシ」をかけ合わせて検索するなどし、黒焦げになった鳥の死骸の映像が付いているものや、消防士や電気事業関係者のコメントがあるものだけを残した。

こうして拾い出した山火事のほとんどは、規模が5ヘクタール以下と小さかった(都市の街区でいえば数個分)。ただ、15年にアイダホ州で猛禽(もうきん)類が引き起こした山火事では、15.6平方マイル(4000ヘクタール超)が焼けた。

「火付け役」になったのは、ワシやタカ、ヒメコンドル。しかし、多くの場合は鳥の種別は報じられていなかった。

発生場所を生態系と環境資源を組み合わせた「生態地域」ごとに振り分けてみた。すると、「地中海的カリフォルニア地域」(州西部の多くが含まれる)で最も多く起きていた。この分類法では、全米で最小の生態地域であるにもかかわらず、集中ぶりが目立った。

なぜか。考えられるのは、まずこの地域の地中海性気候に特徴的な天候サイクルだろう。

春には大量の雨が降る。植物の急速な成長を促すが、夏の暑さですべて枯れてしまう。これがそれなりの着火材となる。しかも、(訳注=ある程度の人口密度があり)鳥がとまって感電するかもしれない送電塔などの電力インフラの設置度も高い――先のドワイヤーは、こう推測する。

A photo provided by James Dwyer shows the carcass of a red-tailed hawk that was electrocuted on a power pole in northern Colorado. Covers placed on the pole to prevent avian contact with energized wires had degraded over time.  (James Dwyer via The New York Times) ム NO SALES; FOR EDITORIAL USE ONLY WITH NYT STORY SLUGGED BIRDS WILDFIRES BY CAROLYN WILKE FOR JUNE 29, 2022. ALL OTHER USE PROHIBITED. ム
米コロラド州北部の送電塔で感電したアカオノスリの死骸。取り付けてあった絶縁カバーは経年劣化していた=James Dwyer via The New York Times/©2022 The New York Times

しかし、鳥の感電死がもたらした山火事の頻度は、すべての生態地域で起きた山火事全体の発生率と比べれば、極めて小さかった。

「発生件数は多くない」とジョン・キーリーは肩をすくめる。カリフォルニア州にあるセコイア国立公園に駐在する米地質調査所の火災生態学者だ(この論文の執筆には関わっていない)。

山火事の圧倒的多数は人間が引き起こしているとした上で、鳥の感電死によるものについても見方を広げてみせる。「原因は、送電という人間社会のインフラにある。だから、人間による山火事が、思いがけない形で起きることを示すよい例といえる」

送電線は世界中の猛禽類に脅威となっている、とスペイン・アンダルシア州の環境・水道局の野生生物学者ホセ・ラファエル・ガリード・ロペス(やはり今回の論文には関わっていない)は訴える。

北アフリカで越冬する種や中国を渡る種などが、事故にあっている。米国だけで毎年約1千万羽が感電死しているとの推計もある。送電設備に衝突して死ぬ数は、さらに多いともいう。

鳥の感電死による山火事は、まれに死者を出すことがある。チリ中部のバルパライソで2014年に発生した火災では、数千軒の家屋が焼失し、15人が亡くなった。原因調査は10カ月に及び、感電死した鳥の死骸を見つけ出した。

鳥が感電して火災を起こす危険を減らすには、プラスチックの絶縁体で電線を覆えばよい。簡単な対策で、全米各地で電気事業者の一部がすでに取り組んでいる、とドワイヤーは話す。

いくつかの自然保護団体も動き始めた。送電塔の最上部に巣箱を取り付け、金属線など感電につながるほかの機材の近くに巣を作らせないようにしている。

「ひとたび火災が起きて生じる被害を考えると、こうした対策費は安いものだ」。ドワイヤーの同僚でもある先のバーンズは、こう強調する。

人命や野生生物の生息環境が失われ、電気事業のインフラそのものも被害を受けるかもしれないのだ。(抄訳)

(Carolyn Wilke)©2022 The New York Times

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