ブタの心臓を人に移植、患者「暗闇で銃を撃つようなものだが、最後の選択肢」
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ブタの心臓を人に移植する手術が世界で初めて行われた。アメリカのメリーランド大医学部の研究チームの試みで、1月10日、同学部が発表した。提供された心臓は拒絶反応が起きにくいよう、遺伝子改変がされているという。
発表によると、手術を受けたのはメリーランド州に住むデビッド・ベネットさん(57)。1カ月以上前に不整脈で入院し、体外式膜型人工肺(ECMO)を使っていたが、臓器提供を受けられない上に、不整脈のために人工心臓も適用できなかった。
手術はこの日の3日前にあり、今のところベネットさんの経過は順調だという。
動物の臓器を人に移植する「異種移植」は1980年代に初めて試みられたが、患者の体がヒト以外の臓器に対して拒絶反応を起こす問題があった。1984年にヒヒの心臓移植を受けたカリフォルニア州の赤ちゃんが約20日後に亡くなったのを最後にほとんど行われてこなかった。
ただ、ブタの心臓弁は長年、人間の弁に代用されており、今回の移植につながったいきさつがある。
同大学は発表の中で、ベネットさんの次のようなコメントを紹介した。
「死ぬか、移植をするかのどちらかだった。私は生きたかった。暗闇で銃を撃つようなものだったが、私にとって最後の選択肢だった」「快復してベッドから起き上がるのが楽しみです」
一方、手術を担当した医師の一人、バートリー・グリフィス氏は「今回の手術は画期的であり、臓器不足の危機の解決に一歩近づいた」と述べた。